関連カテゴリ: アンプティサッカー, サッカー, リモート取材, 中東, 切断者, 国際大会, 夏季競技, 新着, 観戦レポート — 公開: 2022年10月4日 at 8:38 PM — 更新: 2022年10月15日 at 5:32 PM

日本がグループステージ1位通過!〜アンプティサッカーワールドカップ WAFF World Cup 2022

知り・知らせるポイントを100文字で

WAFF2022アンプティサッカーワールドカップがイスタンブール(トルコ)で開幕、50か国による予選を勝ち抜いた24か国が出場している。9月30日からのグループステージを日本は1位で通過。グループステージの日本代表による全3試合を観戦レポートした。

2022年9月30日から10月9日に、世界アンプティサッカー連盟(WAFF)が主催するWAFF WORLD CUP 2022(アンプティサッカーワールドカップ2022トルコ大会)がトルコ共和国イスタンブールで開かれ、50か国が出場した各大陸予選を勝ち抜いた24か国が参加し、合計80試合の熱戦を繰り広げている。グループステージは6グループで行われ、日本はBグループでドイツ、コロンビア、メキシコと対戦し、3勝全勝でグループステージ1位となりノックアウトステージに進んだ。

日本選手団集合写真
9月30日、開会式での日本選手団  写真提供・松本力/日本アンプティサッカー協会

ワールドカップには日本からスタッフと選手合わせて26名(1名帯同せず)
が参加した。

アンプティサッカーとは

松崎佑亮
アンプティサッカーは下肢切断者のフィールドプレーヤー6名と上肢切断者のゴールキーパーの7人制競技  松崎佑亮(13番)写真提供・松本力/日本アンプティサッカー協会

アンプティサッカーとは、主に 下肢又は上肢の切断障害を持った人々により行われるサッカー。1980年代にアメリカ人の切断障害者であるドン・ベネット氏がこの競技を考案したのが始まりで、アメリカ軍負傷兵のリハビリの一環として採用されたことから一気に普及が進んだ。日本においては、元アンプティサッカーブラジル代表のエンヒッキ松茂良ジアスが来日したことをきっかけに2010年から普及活動が開始され、日本初のアンプティサッカークラブFCガサルスが立ち上げられた。現在は国内各地で9のクラブチーム約90名の選手たちが活動している。

アンプティサッカーのルールを簡単に説明する(詳しくは日本アンプティサッカー協会HP参照)。アンプティサッカーは下肢切断者のフィールドプレーヤー6名と上肢切断者のゴールキーパーの7人制競技である。フィールドプレーヤーは、移動に医療用の杖(ロフストランドクラッチ)を使うが、ロフストランドクラッチによるボール操作はできない。ピッチサイズは国際基準 60m × 40m でゴールサイズは5m × 2.15m(少年サッカー用ゴール)が使用されている。国際大会での試合時間は前後半25分の計50分間で行われ、その間に10分間のハーフタイムがある。選手交代は何回でも可能。オフサイドはない。タッチラインをボールが割った場合は、スローインではなくキックインでゲームが再開される。

ドイツ戦3−0、グループステージ初戦を勝利で飾る

グループステージ初戦の先発は以下の通り、DF2:MF3:FW1のフォーメーションで臨んだ。
DF右 松崎佑亮 (TSA FC)(13番)
DF左 遠藤好彦 (FC ALVORADA)(2番)
MF右 エンヒッキ松茂良ジアス (FC ALVORADA)(10番)
MF中央 川西健太 (関西 Sete Estrelas)(3番)
MF左 金子慶也 (AC Milan BBee千葉)(8番)
FW 近藤碧 (関西 Sete Estrelas)(7番)
GK 上野浩太郎(関西 Sete Estrelas)(1番)

前半9分、ドイツGKのゴールキックをドイツディフェンダーがバックパスしたところを背後から突進した金子が奪い、強烈なシュートを放って先制点を奪う。

金子ドリブル
金子(8番)のドリブル  写真提供・松本力/日本アンプティサッカー協会

後半から、川西に代わり萱島比呂(FC九州バイラオール)(5番)が投入される。後半17分、左サイド萱島からのパスを金子が駆け込んで受け、ゴール右隅へシュートを決めて2点目が入る。後半22分には、こぼれ球を近藤がドリブルでシュート、3点目を奪った。

近藤ドリブル
近藤(7番)がパスに反応した瞬間  写真提供・松本力/日本アンプティサッカー協会

後半26分にGKが上野から城武尊(A-pfeile広島AFC)(16番)に交代。ドイツに得点を与えることなく試合は終了。大事なグループステージ初戦を日本が3−0で勝利した。

2点を奪った金子は「W杯東アジア予選大会の時もオープニングゲームで得点を取っていたので、絶えずゴールを意識しながらプレーをしていました」と語った。
前鼻啓史監督は「グループステージの初戦で白星を飾れたことを安堵しているとともに、過去のW杯で3点以上のスコアを1試合で奪い完勝したことはなく、改めて日本アンプティサッカーの普及・育成・強化に関わってこられたすべての方々の力や想いが成果として現れた一戦に感慨深く思っています。ドイツ代表はチームとして、とてもタフで球際のデュエルの厳しさが特徴的であり、今日の試合を通して我々の日本代表チームもまた一つプレーの基準をアップデートすることができた貴重な一戦だったと思います」と分析した。

ステージ初戦集合写真
グループステージ初戦を制し喜ぶメンバーの集合写真 写真提供・松本力/日本アンプティサッカー協会

コロンビア戦3−1で勝利、ベスト16進出を決める

日本の先発は、ドイツ戦に出場したメンバーから5人が入れ替わる布陣となった。
DF右 高橋 良和(FC ALVORADA)(4番)
DF左 細谷 通(FC ALVORADA)(6番)
MF右 エンヒッキ松茂良
MF中央 萱嶋
MF左 秋葉 海人 (FC ALVORADA)(9番)
FW 後藤 大輝 (ガネーシャ静岡AFC)(11番)
GK 長野 哲也(FC ALVORADA)(15番)
フォーメーションはドイツ戦と同様のDF2:MF3:FW1。

前半9分、絶好の位置でのFKを得た日本。エンヒッキ松茂良がFKから萱島にパス、ゴール前の秋葉へつなぐという、あらかじめ想定し共有されたであろうセットプレーがうまくはまり、先制点を取った。

秋葉のドリブル
秋葉(9番)のドリブル 写真提供・松本力/日本アンプティサッカー協会

前半17分には、自陣左サイド萱島からのスルーパスをダイレクトで後藤が豪快にシュート、2点目をもぎ取る。前半はコロンビアのパスをカットし素早く前線に送る攻撃が機能していた。

後藤ドリブル
後藤(11番)がドリブルでゴールを目指す 写真提供・松本力/日本アンプティサッカー協会
後藤歓喜
後藤(11番)がゴール後ベンチメンバーの前で喜びを爆発させる 写真提供・松本力/日本アンプティサッカー協会

後半18分、コロンビア右サイドからのFKをゴール前で受けたDaniel Pérez(5番)がペナルティエリア内の日本ディフェンダーの隙をつく形でシュート。日本が失点する。しかし、日本は、試合終了間際の後半25分、後半から入った近藤が秋葉とのワンツーからシュートし、貴重な3点目を奪った。

シュートを決め歓喜する近藤
近藤(7番)シュートを決めた後歓喜する様子 写真提供・松本力/日本アンプティサッカー協会

試合は3−1で日本が勝利しグループステージ2位以上が確定、ベスト16への進出を決めた。ワールドカップ初出場で若手の秋葉、後藤、近藤がそれぞれゴールを決め、2試合で選手全員(帯同のみの1名除く)がピッチに立てたことは、これからの戦いにいい流れを作った。

初出場した秋葉は「いまの日本代表チームのキャプテンは遠藤さんですが、副キャプテンはチームの選手全員で担っています。今日のコロンビア戦ですが、自分はW杯へ初出場となった試合であり、キャプテンマークを巻いて臨んだ特別な試合でした。プレーで結果を出してチームを引っ張ることを意識していたので1ゴール・1アシストは自分の役割を全うできたと思っています」と語った。

キャプテンマークを巻く秋葉
キャプテンマークを巻きコロンビア戦に臨む秋葉(9番) 写真提供・松本力/日本アンプティサッカー協会

前鼻監督は「結果を追求することは勿論ながら日本アンプティサッカーの現状を鑑みると、一部の選手のみならず多くの選手が厳格なプレーの基準を感じ競技力と影響力を高める必要があり、さらに強固な代表チームを仕立てあげるには全体の平均点をも高める必要があります。そのトライをこの2戦でできたことがチームとしても日本アンプティサッカーにとっても大きな成果と収穫でした。コロンビア代表は中盤のボールポゼッションをシンプルにするというプレーモデルを貫いたことで、日本代表のプレーモデルをさらに磨きをかけられるヒントを示してくれた貴重な相手でした」と手応えをにじませた。

メキシコ戦に2−0で勝利、グループステージ1位通過確定

日本の先発として、DF 右・萱島/左・川西、中盤 右・近藤/中央・エンヒッキ松茂良/左・秋葉、FW後藤が出場した。フォーメーションはこれまで同様のDF2:MF3:FW1。

メキシコは前回の2018年ワールドカップ決勝トーナメント1回戦で0-2で敗れた相手。前回の雪辱を晴らしグループステージ1位通過を狙う日本。試合開始直後の前半1分、メキシコの横パスをセンターサークル内で奪った秋葉がスピードに乗ったドリブルで直進しシュートを決めた。さらに秋葉は、前半5分にも右サイド川西からサイドチェンジパスを受け相手ディフェンダーと1対1になり、縦に抜けてディフェンダーを置き去りにし、角度のないところからシュートを決め2点目を奪った。

秋葉ドリブル
秋葉(9番)がドリブルで攻め上がる 写真提供・松本力/日本アンプティサッカー協会

前半21分のメキシコFK、ショートパスからHUGO RAFAEL CARABES LOPEZ(7番)がシュートを放ったがGK上野がスーパーセーブでしのいだ。
後半はメキシコが攻める時間帯もあったが、GK上野のセーブや川西・萱島の固いディフェンスで最後まで得点を許さなかった。

上野セーブ
GK上野(1番)がメキシコのシュートからゴールを守る 写真提供・松本力/日本アンプティサッカー協会
萱島ディフェンス
萱島(5番)の体を張ったディフェンス  写真提供・松本力/日本アンプティサッカー協会

試合は2−0で日本が勝利し、グループステージ1位通過が決まった。

試合後の日本選手団。チームメンバーと応援団が一緒に  写真提供・松本力/日本アンプティサッカー協会

日本のディフェンスを担う川西健太選手は「日本が早い時間に得点することができて安心できたのですが、メキシコに得点を取られて一気に流れが変わる不安があり一切気を抜けなかった試合でした。2018年メキシコワールドカップのメキシコ戦では、メキシコに一方的に攻め込まれて日本は何もできなかったのですが、今回の試合では日本の戦術がはまり日本優勢の試合ができたと思います」と語った。

川西ドリブル
川西(3番)のディフェンス  写真提供・松本力/日本アンプティサッカー協会

前鼻啓史監督は「グループステージを多くの皆様に支えられかつ見守られる中で、無事に戦い終えることができました。勝敗を問わずW杯の価値と意義そしてアンプティサッカーの発展に他国とともにダイレクトに貢献できていることを誇りに思います。メキシコ代表には前回大会で惜敗し、フィジカル側面から個々のレベルで真正面から抗うことが難しいという根源的な課題を我々に提示してくれました。個々のレベルを補い、世界の強豪国と渡り合っていくための方途を探り、三歩進んでは二歩退がるという葛藤と悩みの繰り返しでした。退がった時にはこれまでに見落としていた観点について再確認することが幾度もありました。日本チームは潜在する課題に目を背けずに向き合う作業に真摯に取り組んできました」と前回大会からの歩みと今大会グループステージ3戦を振り返った。

ノックアウトステージ初戦の相手はタンザニアに決定。10月5日22時(日本時間)よりキックオフ。日本の活躍を期待し、皆でトルコに熱い声援を送ろう!!!!!
ライブ配信はこちら

Bグループステージ結果

1位 日本(勝ち点 9、得失点差 7)
2位 メキシコ(勝ち点 4、得失点差 2)
3位 コロンビア(勝ち点 4、得失点差 1)
4位 ドイツ(勝ち点 0、得失点差 −10)

[参考]グループステージ結果(左から1位/2位/3位/4位)
A ハイチ/トルコ/リベリア/フランス
B 日本/メキシコ/コロンビア/ドイツ
C アルゼンチン/アメリカ/イングランド/インドネシア
D イラン/ブラジル/モロッコ/アイルランド
E ポーランド/ウズベキスタン/タンザニア/スペイン
F アンゴラ/イタリア/イラク/ウルグアイ

(写真提供:日本アンプティサッカー協会 編集:中村和彦、佐々木延江)

この記事にコメントする

記事の訂正はこちら(メールソフトが開きます)