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2022年7月24日(日)、「LIGA.i ブラインドサッカートップリーグ 2022」第2節が品川区総合体育館で開催された。LIGA.iは、競技性(競技力の高さ)と組織性(組織運営力や競技普及活動への注力度合いなど)という参加条件をクリアした4チーム(パペレシアル品川、埼玉T.Wings、free bird mejirodai、buen cambio yokohama)が出場し、全3節の総当たり戦で順位を競う、今年から新設されたリーグである。9月まで第1節浜松市、第2節品川区、第3節墨田区において試合が開催される。
第1試合は第1節でともに勝ち点3を得たパペレシアル品川と埼玉T.Wingsが対戦し、菊島宙の攻守にわたる活躍により、埼玉T.Wingsが2−1で勝利した。
第2試合はfree bird mejirodai、buen cambio yokohamaが対戦し、中盤の攻防戦を制したfree bird mejirodaiが1−0で勝利した。
この結果、埼玉T.Wingsが勝ち点6の1位で第3節を迎えることになった。
第1試合:埼玉T.Wings 2−1 パペレシアル品川
試合は序盤パペレシアル品川が相手陣内に攻め込むが、埼玉T.Wings 山中優汰(13番)らの厚い守備に阻まれシュートまで持ち込めない時間帯が続く。
前半7分、埼玉T.Wings菊島宙が両チーム通じて初めてのシュートを放つ。2分後には、加藤健人からのパスを菊島がダイレクトで強烈なシュート。GKに止められはしたものの、スーパーなプレーに場内がどよめいた。
10分にはパペレシアル品川 川村が倒されコートから離れるアクシデントがあった。
先制したのは埼玉T.Wings、後半11分相手ゴール付近で菊島がパペレシアル品川 佐々木ロベルト泉からボールを奪い、そのまま放ったシュートが決まり貴重な先制点をチームにもたらした。
このゴールについて試合後のインタビューで菊島は「足を出してしまったのでちょっとファールになるかなって思ったんですけど、あぁでもしないとロベルトさんのドリブルを止められなかったので」とFK後ドリブルを始めようとするロベルトの隙をついてのボール奪取がゴールに結びついたと喜びを口にした。
この後、お互い譲らず埼玉T.Wingsの1点リードで前半を終了した。
後半、川村がコートに戻り、壁際で川村と菊島が激しくマッチアップする様子がみられた。
パペレシアル品川は、ロベルトがドリブルで相手陣内に切り込むも後一歩でゴールに届かない。
後半4分、壁際で埼玉T.Wings菊島と加藤健人が川村を挟み込みボールを奪う。加藤からのパスを受けた菊島が3人のディフェンダーに囲まれながらも、ドリブルでゴール前に持ち込み右足アウトサイドでシュートを決めた。
試合終了間際の後半15分、残り32秒。川村が、加藤と菊島のディフェンスを振り切り左サイドからカットイン、右足で強烈なゴールを意地で決めた。しかし反撃もここまで。試合は埼玉T.Wingsが2−1でパペレシアル品川に勝利し、勝ち点を6にのばした。
第2試合:free bird mejirodai 1−0 buen cambio yokohama
正GKが不在のfree bird mejirodai、試合後鳥居健人が「極力フィールドでシュートを打たせないようにしっかり止めていこうっていう認識が全員の中であって」と語ったように、free bird mejirodaiの守りが固い試合となった。
一方のbuen cambio yokohamaのディフェンスも固く、なかなかゴールまで辿り着けない前半となり、両チーム無得点で折り返した。
膠着状態のなか、先制したのはfree bird mejirodai。後半4分鳥居健人がに右CKからのドリブルで12mラインまで戻りターン、ドリブルで相手ディフェンスを左右に揺さぶり、最後は混戦の中、ゴール正面8mから倒れ込みながらもシュート。ポストを叩くが逆のサイドネットをゆらし先制した。
このシュートについて鳥居は「混戦の中で打ったシュート、試合前からシュートは打っていこうと。どんなにパスを繋いでも、シュート打たなければ意味がないし、相手の脅威にもならない。僕が得点したシュートも確実に決まるというかは、まずは打つことが大切だと思って打ったシュート。混戦の中で打ちにいけたという事は自己評価もしていいかなと」と振り返った。
この後は、パスが上手く回るようになったfree bird mejirodaiが攻勢に出たが、buen cambio yokohamaのディフェンスを破れず、チャンスを活かせないまま試合終了となった。その結果、free bird mejirodaiが1−0でbuen cambio yokohamaに勝利した。
Player of the Match
試合結果(第2節終了時点)
第1位 埼玉T.Wings(勝ち点6)
第2位 free bird mejirodai(勝ち点3)
第2位 パペレシアル品川(勝ち点3)
第4位 buen cambio yokohama(勝ち点0)
エキシビジョンマッチ:タイ代表 1−0 パペレシアル品川
東京パラリンピック後に新生チームとなったタイ代表チームと若手のメンバーで挑んだパペレシアル品川。
前半3 分に、ハーフウェイライン付近でタイ代表のギッティタッ・ウィモンワンがボールを奪うとドリブルで持ち込みシュート、GKに弾かれるものの壁際で再びキープ、切り返してディフェンスをかわしシュートを放ち先制した。
後半に出場した日本代表の佐々木ロベルト泉に、タイ代表が挑んでボールを奪う様子がみられた。
試合はその後一進一退の攻防が続き、お互い決め手に欠け、点を取ることができなかった。その結果、タイ代表が1−0でパペレシアル品川に勝利した。
日本代表・クラブチームの強化に資するLIGA.i
トップリーグの開催目的のひとつである、”日本代表チームおよび、クラブチームの強化に資すること”について選手がどう感じているのかを聞いてみた。
菊島「自分も女子代表として活動しているんですけど、海外の女子も体が強いと思うので。(男子の)体が大きい人、強い人と対戦できて、こうしちゃダメ、こうしたら負けるんだ、こうすると良いんだ、ちっちゃい自分でも勝てるんだ。ということが吸収、実感もできるし、相手の体の入れ方とかの勉強もできるので、すごい良い大会だなって思います」
鳥居「LIGA.iは有料ですよね。責任感もあるし、モチベーションが上がります。有料であることで気が引きしまる部分もあります。今まで以上に、自分のためチームのためだけじゃなくなって、見てくれるお客さんのために良いプレーしてやろうって思います。それが結果として試合中きつい時でも一歩前に出る瞬間であったりとか、シュートの本数が一本増えるとか、そういうところがしっかり繋がっていくんじゃないかって思ってます」
選手のコメントから、自身の強化が引いては代表やクラブチームの強化に繋がっていると考えていることが伺えた。
観客の大歓声を受けて試合ができるLIGA.i
有料観客席が売り切れになった第2節は606名が試合を見守った。多くの観客の声援などを受けたことについて選手に聞いてみたところ、
ロベルト「ありがたい気持ち、みんな見に来てくれて集まって頂いて本当に感謝の気持ちで一杯一杯です。みんなのために私たちプレーヤーは走っているので、かなり感謝の気持ちはあります。心からです」
菊島「自分もチームメンバーも緊張しながらやったんですが、良かったですとか,、カッコ良かったですとか言われると、モチベーションも上がるので。久しぶりに静岡戦や地域リーグでも人が入ったんですけど、今日みたいに大きくはなかったので、いろんな人に見ていただいて、感動しましたとか言葉を頂けると嬉しいと思います」
free bird mejirodai 園部優月「拍手の多さとかですね、たくさんの人に向けて届けるんだなぁというのを感じながらやってました。久しぶりにお客さんに見てもらいながらの試合だったので、恥ずかしいプレーはしないというところは意識して、あとは自分の思い切ったプレーをしようと。楽しくやることもできました」
など、好印象の答えが返ってきた。
第3節は、トップリーグ「LIGA.i」の最終節。2勝している埼玉T.Wingsが逃げ切るのか、他のチームが追いつくのかが気になるところ。
協会が掲げる「視覚障がい者と健常者が、当たり前に混ざり合う社会の実現」というビジョンを体現する「LIGA.i」に参加する全ての選手の活躍が、日本代表チームやクラブチームの強化につながり、パリパラリンピック出場へと繋がっていくと信じてやまない。
9月23日にフクシ・エンタープライズ墨田フィールド(東京都墨田区)で開催される試合に、あなたの声を届けに行きませんか?
<参考>
ブラインドサッカー・トップリーグ「LIGA.i」ホームページ
https://liga-i.b-soccer.jp/
LIGA.Iではタイ代表とのエキシビションマッチも行われる。東京パラリンピックでのタイvsスペインの試合の記事(中村和彦)
https://www.paraphoto.org/?p=29645
(編集協力 中村和彦、佐々木延江)