今年2月24日、ロシア軍によるウクライナ侵攻でロシアとウクライナの紛争状態が始まった。多くのウクライナ人は故郷を破壊され、身の危険にさらされるようになった。
「21世紀にこのような戦争が起きるということ自体がまず本当に考えられないことです。自分の国に帰ると、まあ、帰ってしまえば、ロシアと闘わなければならないというシチュエーションにいます。非常にむごい、恐ろしいことだ」とアナトリー・バルフォロミエフ(PTVI-M)は通訳を介して記者たちに訴えた。
国際社会のウクライナ人への共感により、スポーツ界ではロシア選手の大会参加が禁じられている。一方、ウクライナ選手に対してはトレーニングや大会参加が続くよう支援金なども集まってきている。
ウクライナ南部のオデーサ市と姉妹都市の交流がある横浜市は、トライアスロン「パラエリート」にウクライナからの3人の選手と2人のガイドの渡航費を支援した。PTVI-Wのガイドが入国時の検疫で陽性となり横浜入りできず、オレクシーク・ヴィタ(B2)は出場できなかった。
片腕欠損のアリサ・コルパクチ(PTS5-W)が銀メダル、全盲のアナトリー・バルフォロミエフ(PTVI-M)とガイドのローマン・コロルが4位となった。二人は昨年東京パラリンピックに出場、横浜大会はバルフォロミエフは3回目、コルパクチ2回目の出場だった。
「雨はそれほど問題ではなく、気温が暑くなりすぎなかったことはよかった。良いレースができた」と、支援への感謝を述べた。
「実際に攻撃が始まった日はウクライナにおらずホテルで過ごしていた。一番の心配は家族のことで、帰国し家族を守りたいと思ったが、国外でボランティアチームを立ち上げてお金を集め防弾チョッキを調達して送るという活動をしたいと考え直しました。トレーニングして、できるだけ大会にも出ていこうと思いました 」とバルフォロミエフはガイドのコロルの通訳で語った。
ウクライナ選手団による山中市長表敬訪問の機会に、応援にきていた横浜の避難民を含むウクライナ人たちが選手を訪れ、母国の戦禍に苦しむ当事者どうしで交流することができた。
(写真・内田和稔、秋冨哲生 取材協力・真下やよい、地主光太郎)