3月9日に行われた北京パラリンピックのクロスカントリー、スプリント種目。男子立位のクラスで優勝したのは、ベンジャミン・ダビエ(フランス)だった。3大会目のパラリンピックとなったダビエにとって、個人種目では初めてのメダル獲得となった。
32歳のダビエは、17歳の時に原付事故で左ヒザを負傷。その後後遺症が残った。もともとパラシュート舞台としてフランス軍隊に入隊するのが夢だったが、パラアスリートとして軍隊に所属し、腕を磨いてきた。
いとこはアルペンスキーのフランス代表として、2014年ソチオリンピックの大回転で銀メダルを獲得したスポーツ一家。ダビエもクロスカントリー・バイアスロンの2競技に取り組み、北京パラリンピックで金メダルを取ることを公言し、まさに有言実行だった。
「(北京パラリンピックでそれまでに終えたバイアスロンの)2戦は本当に苦しかったので、今日の金メダルは本当にほっとしている。スプリント種目なので、特別な戦術はない。何も考えず、ただ最初から最後まで速く走ったよ」と振り返った。
フランスでは2年後に夏のパラリンピックが開催される。このことについて「フランスでは本当にパラリンピックムーブメントが高まっている」と話すダビエ。「冬の選手だけど、このムーブメントの中でダビエの活躍も注目されるよね?」と聞くと、「I believe!(そうであると信じたいよ!)」と笑ってくれた。
一方、女子座位のクラスでは、7日の長距離種目で2大会連続の金メダルを獲得したケンダル・グレッチ(アメリカ)は5位だった。
29歳のグレッチは、先天性の二分脊椎症。大学2年でトライアスロンをはじめたが、2016年リオパラリンピックで自分の障害のクラスが実施されないことがわかり、パラリンピックへの出場という夢を求めて冬の競技もスタートさせた。2018年平昌では長距離種目で金メダル、そして2020年東京ではトライアスロンで念願の出場を果たし、ここでも金メダルを獲得した。
文字通り、夏冬二刀流の女王となったグレッチ。東京からわずか半年で北京に向けた調整をしてきたことについて、「本当にタイトな転換ですが、毎シーズンやっていることだし、ベストを尽くしている。コーチも栄養士も年間を通じて同じなので、私のことをうまくコントロールしてくれている」とグレッチは話す。
また、得意種目ではないスプリント種目について、「得意とするところではないので、ずっと練習してきたの。でも、スプリントの日はとても興奮するわ。見ていても楽しいし、選手として参加するのも楽しい」と笑顔だった。