北京パラリンピックのクロスカントリーは3月9日、スプリント種目が行われ、視覚障害のクラスではブライアン・マッキーバー(カナダ)が3分19秒5で優勝。これで通算メダル数は19個になった。
メダルの記録について取材陣に聞かれるとマッキーバーは、「数や色のことを考えるのは本当に意味がない。チームとして練習してきたことの方が重要」と、プロセスの大切さを何度も強調した。
このところの中国は暖かい。北京中心部では予想最高気温が20度になったり、山間部の会場でも15度を超える日が続いた。「パラリンピックの時期に雪解けが進むのは、今にはじまったことではない。特にソチくらいからそうだった」とアルペンスキー日本代表の小池岳太は話したが、2月の北京五輪中では夜にマイナス20度ほどまで下がる冷え込みだったため(まつ毛やマスクの中が凍ると聞いた)、わずか1ヶ月間のギャップに驚いた関係者も多いだろう。
雪が柔らかくなると、スキーの足取りは重くなる。また、クロスカントリーは持久競技のため、レース中に帽子を脱いだり、レース後も半袖で過ごしている選手が多く見受けられた。
この暖かさについてマッキーバーは、「北京大会1つを取っても、これだけ温度差がありすぎると、オリンピックとパラリンピックが全く別の大会に思えるよ。でもみんな条件は同じなので、気候の変化も含めて4年間の集大成として楽しんでいる」と話した。
ただ、夏のオリンピック・パラリンピックでの猛暑、冬の雪解け……「地球温暖化」というワードが、会場にいると改めて実感としてわいてくる。マッキーバーの地元・カナダのアルバータ州では、4~5年前から強風が吹き荒れるなど気候が変わり、雪質の変化にトレーニング方法を合わせざるを得なかったそうだ。
さらに、アルバータ州やブリティッシュコロンビア州などカナダ西部では数年前から森林火災が起きており、高地トレーニングをするアスリートにとっては死活問題となる。「空気のきれいな場所を求めて移動をしなくてはいけない。ただ、いろんな場所で練習できることはいいことでもあるし、人との出会いもあるんだ。環境の変化に合わせて、選手も進化することが求められているのかもしれないね」。
自然を相手に戦うアスリート。マッキーバーの話を聞いて、その難しさを考えさせられた。
(編集校正・佐々木延江)