北京パラリンピックのスノーボードは3月11日、バンクドスラロームが行われ、女子では平昌パラリンピック金メダリストのブレナ・ハッカビー(アメリカ)が1分17秒28で優勝した。
平昌パラリンピックから正式種目となったスノーボード。男子ではUL(上肢障害)・LL1(重い下肢障害のクラス)・LL2(軽い下肢障害のクラス)の3つがある。女子は平昌大会ではLL1とLL2の2つで行われたが、競技人口の少なさから、北京大会ではLL2のみの開催。ハッカビーと平昌銀メダリストのチェチリ・エルナンデス(フランス)はLL1ながら、LL2のカテゴリで勝負することになった。(※詳しい経緯→ブレナ・ハッカビー(USA)は果たしてSB-LL2に参加できるのか?)
ハッカビーは14歳の時に骨肉腫と診断され、右ヒザから上を切断。その後9ヶ月間、化学治療を受けた。失意の彼女を救ったのがパラスノーボードとの出会いで、競技を追求するために母親と一緒に故郷のルイジアナ州を離れてユタ州に移住。22歳で初出場した平昌パラリンピックで2つの金メダルを獲得した。
大腿義足でのハッカビーは、今回はより障害の軽い選手に混じっての戦い。1回目の滑りで2位につけると、2回目で2位の選手に0秒1差をつけ逆転優勝。会場からは拍手が沸き起こった。
「本当に興奮しているわ。今日は表彰台に乗れないと思っていたの」と話すハッカビー。2位から5位まで中国選手が独占する中で優勝したことについては、「あぁもう、彼女たちは本当に速いから……(笑)。でもスノーボードにうまく乗れれば、上位に食い込めるんじゃないかと思っていたわ」とレース前の心情を振り返った。
現在26歳のハッカビーは2020年に次女を出産し、2児の母でもある。「2人の子どもを持つことは、子どもが産まれる前よりも、子どもが1人のときよりも、私にとっては大変だった。でも、子どもが私の最大のモチベーションなの。フルタイムで働くママになることで、2つのことを学んだわ。まず、1人ではできないこと。第2に、助けを求めてもいいし、できないことがあってもいいということ。トレーニングも家庭のことも、すべてをこなすことができなくても、物事の流れに身を任せることは、ダメなことじゃないんだって思えたわ」。
そして、「子どもたちは価値のある存在だし、これから生きていくうえで必要なことはすべて持っているわ。どう生きていくかを教えていくのが、私のゴールよ」と、子どもたちへのメッセージを語った。
母として、女性パラリンピアンとして、雪の上で思いきりパフォーマンスをしたハッカビー。「女子のパラスノーボーダーがもっと増えてほしい」、そんな私の言葉に対して、最後に彼女はこう答えてくれた。
「もっと私たちが表に出ていく存在になれば、みんなスノーボードを面白いと思うと思うの。私たちはそれをやっているし、本当にわくわくした日々を過ごしているわ」
(英語翻訳・地主光太郎 編集校正・佐々木延江)