2月1日に開幕した「2022ジャパンパラアルペンスキー競技大会」(菅平高原パインビークスキー場・長野県上田市)は2月3日、大会3日目が行われ、大回転のレースが行われた。
男子立位では、トリノ大会銀メダリストで今回2大会ぶりのパラリンピック出場に挑む東海将彦(LW3/トレンドマイクロ)が1分57秒08で優勝。男子座位では、北京パラリンピックで悲願の金メダルに挑む森井大輝(LW11/トヨタ自動車)が1分50秒36で制した。チェアスキー界のレジェンド森井は、今大会3日目にして今日が初登場となった。
森井が今日初登場だったワケ
森井は3回目の新型コロナウイルスワクチンを接種。その副反応のため、大会前半を休んでいた。今大会初登場の今日は、ベテランならではの熟練の技術を見せ、ゴール下で待っていた選手たちから「うま!」「はや!」という声が飛び交っていた。
しかし、まだ体は重さが残っていたという。日本障害者スキー連盟の大日方邦子強化本部長によると、「3回目の接種の案内は選手全員に行っており、スケジュールや希望の有無などをヒアリングしながら行っている」。他の選手に先駆けて接種を行ったのは、北京への出発間際に調子を崩したくないため。「このあと高速系の合宿に参加したのち北京に発つので、万全の態勢で臨みたい」と自身の判断に踏み切った。
森井は41歳。2002年のソルトレイクシティ大会から数えてこれまで5回パラリンピックに出場し、銀メダルと銅メダルを獲得している。しかし、金メダルはまだ手にしていない。
世界の頂点に立つために、平昌大会の後からさまざまな試行錯誤を行ってきた。1つ目は、体重の増加。体が重い方がスピードが出る。平昌後から5キロ増やしたという。
また、夏季競技であるパラパワーリフティングで東京大会への挑戦もした。全く毛色の違う競技ではあるが、「一瞬にかける集中力は通ずるものがあった」。同時に、いかにスキーがマテリアルスポーツで、道具が重要な競技であるかも再実感させられたという。
本番まで残り1か月となった今、コース状況と用具による滑り方を100パターンくらい設定しているという森井。ベテランが表彰台の頂点に立つ姿を期待したい。
平昌で5つのメダルを獲得した村岡桃佳のケガは
心配なニュースが飛び込んできた。平昌大会のアルペンスキーで金メダルを含む5つのメダルを獲得し、夏の東京大会では車いす陸上100mT54で6位入賞を果たした「二刀流」の村岡桃佳(LW10-2/トヨタ自動車)。1月の練習中に右ひじを痛め、今大会を欠場した。
実戦のないまま北京に臨むのか、次の合宿には参加するのか……まだ明確なことはわかっていない。大日方強化本部長は「今のところリハビリは順調で、どのタイミングで雪上に上がるのかは専門家と判断して決めていく。彼女はかなり能力が高いので、これまでも東京大会の陸上に挑戦した後、スキーの練習時間がない中で短い時間で調整してきた。休んでリハビリに充てるという意味では、逆に吉と出る可能性はあるかもしれない」と話した。
コロナの影響で、海外遠征への参加が思うようにいかない選手たち。世界での現在地をこれまでのように正確に把握してパラリンピックに臨むのは難しいようだ。だが、日本にはベテラン選手がいる。道具への向き合い方や雪質の見極め方が繊細なのが強みだ。技術と経験の詰まった滑りに注目したい。
(校正・佐々木延江)