来年2月の日本選手権に向けて10月から11月にかけて各地で行われた、予選リーグ。全国の8チームが出場し、リーグ戦を終えた。
このうち、この予選リーグが公式戦初出場となった若手たちがいる。
注目の1人目は、16歳、青木颯志(AXE/2.0)。小学2年の時に、病気によって車いす生活となった。車いすツインバスケットボール経験者ということもあって、チェアスキルは抜群。終始クールな表情でプレーし、自らトライを決めても落ち着いているのが印象的だった。
同じチームの先輩、乗松隆由(AXE/1.5)も「初心者とは思えないセンスですよ。チェアスキルがしっかりしてるから、相手のディフェンスが寄ってきても周りを見てパスをすることができている。ケビンも気に入るはずです」と舌を巻いた。
「車いすラグビーに限らず、緊張したことがないんですよ(笑)」と話す青木の目標は、同じチームで同じ持ち点2.0のキャプテン・羽賀理之(AXE/2.0)を超えることだ。「ますは羽賀さんを超えないと代表には通用しない。将来的には、世界で通用するような、2.0以上のパフォーマンスができるようになりたい」。
トレードマークはちょんまげヘア。「くせっ毛なのでまとめてるんですよ……」とはにかむ、プレー中とのギャップに、萌えるファンも続出するはずだ。
2人目の注目は、20歳の草場龍治(1.5/Fukuoka DANDELION)。2歳のころに発症したシャルコー・マリー・トゥース病が進行し、5年前から車いす生活となった。
4年前に福岡で行われた車いすラグビーの試合を生で観戦し、「車いす同士がぶつかっていて、迫力がすごい。障害の重い選手が障害の軽い選手を止めるプレーを見て、自分もできるんじゃないかと思った」。車いすツインバスケットボールの選手としてプレーしていたが、1年前に正式に車いすラグビーを開始し、両方の競技で選手として活躍している。
同じチームで「世界一の1.5」といわれる乗松聖矢(1.5/Fukuoka DANDELION)と同じ障害で同じ持ち点。乗松は草場について、「期待しかないですね。教えていないような場面でも状況を打開する力を持っているし、あらゆるシーンで吸収できる選手は成長が早いと思う。これから車いすラグビーを楽しんでいってもらいたいし、チームを引っ張るプレーヤーになってもらいたい」と称賛した。
草葉のお手本はもちろん乗松。「練習を一緒にしていて刺激もらっていたけど、東京パラリンピックに出ているのを見て、自分も同じ舞台に立ちたい思いを持たせてくれた。今後はまず育成合宿に呼んでもらって、周りに負けないように頑張って自分も上の舞台で活躍したい」と静かに闘志を語った。
スピードが持ち味の草場。縦横無尽にコートを駆け回る姿に注目だ。
その他、東京パラリンピック日本代表の中町俊耶(2.0)がキャプテンを務めるTOHOKU STORMERSには、体操選手として活躍していたという若狭天太(2.0)が新加入するなど、新しい顔ぶれは増えている。
東京で金メダルを取ったイギリスや、2024年のホスト国となるフランスをはじめ、近年はヨーロッパ勢が台頭してきている。日本に必要なのは、選手層の底上げだ。ルーキーたちが新しい風を吹かせてくれるだろう。
(写真=秋冨哲生、写真提供=JWRF)