東京パラリンピックの水泳は9月3日、最終日を迎えた。
男子100mバタフライS11では、木村敬一(東京ガス)が悲願の金メダルを獲得。富田宇宙(日体大大学院)も銀メダルを獲得し、日本人のライバル2人がワンツーフィニッシュを飾った。
木村は100mバタフライがメイン種目。これまで200m個人メドレーで5位、100m平泳ぎでは銀メダルを獲得していた。
今日のレースでは前半50mをトップで折り返すと、そのまま後続を引き離してフィニッシュ。タッパーの寺西真人コーチから「1分2秒57。金メダルおめでとう」と告げられると、笑顔がはじけ、隣のレーンの富田宇宙と抱き合った。
試合の後のインタビューでも、表彰式でも、あふれる涙が止まらなかった。「この日のために頑張ってきた。でも特にこの1年はいろんなことがあって、この日は来ないんじゃないかって思ったこともあった。ちゃんと迎えることができ幸せです」
木村の努力を間近で見てきた富田も、「本当は悔しがらないといけないかもしれないけど、木村くんが金を取ってくれたことがすごく嬉しい。最初に400m自由形で銀メダルを取った時に、”この瞬間のために障害を負ったのかもしれないな”と思っていたけど、そうじゃなくて、今日なのかなって思う」と涙ながらにライバルを祝福した。
タッパーを担当した寺西コーチは、木村の中学・高校時代の恩師。北京パラから4大会連続で、二人三脚で世界の頂点を目指してきた。「頭が真っ白で、言葉にならない気持ち。木村敬一はよく頑張った。応援し続けてきてよかった」と、金メダルのタッピングはアテネ(河合純一/男子50m自由形)ぶりとのことで感慨深げだった。
最終種目・男子4×100m 34ポイント メドレーリレー8位
男子34ポイントメドレーリレーは、山田拓朗(S9)、窪田幸太(S8)、荻原虎太郎(S8)、南井瑛翔(S10)が出場した。パラリンピック5大会連続出場のベテラン山田拓朗は、「リレーでの決勝は日本は経験がないことで、僕自身も経験なかった。後輩3人と組めて貴重で楽しい時間となった」と話す。結果は日本記録4分29秒85で、決勝にすすんだ8チームの最下位で競泳全競技の最終種目を終えた。
全ての競技を終え、上垣匠日本代表監督は、「多くの皆様の支えと応援、選手村に入ってからも声援があった。心から感謝している。選手たちはコロナ禍の激闘の中で持てる力を魅せてくれた。どのようにパラリンピックというスポーツを感じていただけたのか。今大会を終えてのちにわかる総評だと思う」と記者たちに話した。東京パラリンピック競泳は10日間の熱戦の幕を閉じた。
(取材・文=久下真以子、佐々木延江 写真取材=秋冨哲生、山下元気 編集=そうとめよしえ、石野恵子 校正=望月芳子)