関連カテゴリ: Tokyo 2020, オンライン観戦会, トラック・フィールド, 義足アスリート, 陸上 — 公開: 2021年9月2日 at 8:40 AM — 更新: 2021年9月9日 at 2:13 PM

義足エンジニア・遠藤謙による「東京パラ注目の義足アスリートの見どころ!(女性編)」

キンバリー・アルケマデ(オランダ、31歳)
キンバリーは義足スプリンター大国からオランダから突如2019年のドバイ世界パラ陸上選手権に出場し、銅メダルに輝いた新星です。

2019年ドバイ世界パラ陸上選手権100m決勝

競技歴はまだ短く2018年から本格的に競技をはじめました。彼女は7才の時に交通事故で左足の下腿部を失いましたが、オランダのナショナルチームのコーチにスカウトされたのは、彼女が27才になってからでした。その後、彼女はフルタイムのアスリートとなり、1年後には世界レベルの大会に出場するにまで至りました。そして、2021年にはヨーロッパ選手権に出場し4位となり、世界レベルの大会の常連になりました。

2021年ヨーロッパ選手権

彼女の武器は手足の長さです。その大きな身長と長い手足を生かした大きなストライドは、特に100mの後半では大きなスピードを生み出しています。2019年の大会ではOttobockのsprinterというブレードを履いていました。その後、様々なブレードを試したあと、もう少し自分に合うものを模索しようとして、アメリカのジャリッド・ウォレスにコンタクトを取り、Xiborgのブレードを知ったようです。その後Xiborgのブレードを試したところ一番自分にしっくりくると感じたらしく、ジャリッド・ウォリスとおなじXiborg νを2021年の春ごろから履きはじめました。身長も高く、ブレードをしっかりと潰して弾む感覚をすでに獲得しつつあります。おそらく、他の大手メーカーからのオファーもあったであろうくらい、潜在能力をすでに見せている選手ではありますが、スタートアップでもある小さなXiborgを今後の期待も込めて選んでくれました。アスリートとしてこれから大事な数年を迎えるにあたり、ある程度リスクを負って誰もやっていない新しいことに挑戦するチャレンジャー精神を感じました。。またXiborg社初のヨーロッパ、女性アスリートというところも気に入ってくれているようです。

オランダは義足スプリンター大国でもあり、特に女性アスリートが非常に活躍しています。T64のクラスは彼女の他に、2018年のヨーロッパ選手権の覇者マルレーン・ファン ハンセウィンケル、2021年ヨーロッパ選手権の覇者フルール・ヨング、そして、リオパラリンピックの金メダリスト、マールー・ファンライン選手が東京パラリンピックの3枠を争っていました。その争いに勝利し、今回初めてのパラリンピックへの出場権を手に入れたのです。ちなみに、マールー・ファンライン選手は東京パラリンピックの道が閉ざされると引退を表明しました。あのレベルの選手が引退に追い込まれることにオランダ国内の競争の激しさを感じました。
ここからは個人的なやりとりになりますが、義足を新しく作る時にzoomでの打ち合わせをしました。その時に両足大腿のイギリス代表リチャード・ホワイトヘッドのコーチでもあるKeith Antoine、彼女の義肢装具士であるGijs van Gentも一緒に同席し、ブレードの特徴や走り方に対するアプローチ、これからのプランなどを話をしました。義足を作るプロセスもチームとビジョンをシェアしながら進めるところも非常に共感をもてました。実は一度もあったことがなく、今回も同じ日本にいながら会えそうにないのが非常に残念ですが、日本での生活の様子が頻繁にwhatsappで送られてくるので、とても親近感を覚えています。その明るい性格もこれから多くのファンを惹きつけるだろうとと思います。

彼女にとって初めてのパラリンピックですが、今年に入って急速に成長してきました。義足女性短距離界の新星となることができるか、本当に楽しみです。

ソフィー・カムリッシュ|マルレーン・ファン ハンセウィンケル | フルール・ヨング| ベアトリス・ハッツ| キンバリー・アルケマデ

(校正 望月芳子)

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