8月31日、東京パラリンピック競泳7日目。男子200m個人メドレーSM14で、東海林大(三菱商事)が持つ世界記録が、イギリスのリース・ダンが出した2分8秒02に塗り替えられた。
予選8位で競技を終えた東海林は、午後5時34分決勝へ。好スタートを切り、バタフライ、背泳ぎを8位で終えたあと、平泳ぎと得意の自由形で追い上げ4位でゴールにタッチ。集中した泳ぎで2分11秒29のシーズンベストをマークした。
ミックスゾーンで、記者たちにこれまでの自分を振り返って次のように話した。
「いままでのレースを振り返って、悔いはない。みんなから、『金メダル取って』、『もう一度世界新を』と言われることはあったけど、パラリンピックに出られただけですごいこと。たとえメダルを捕れなくても、過酷な状況の中でも戦えたのは、この先の人生でも胸を張って生きて行けそうだなと思います。世界新をちょっと塗り替えられたけど、悔しくない。決勝の前に頭の中は「人は人、自分は自分」もし、メダルを取りたかったなという思いがあっても、メンタルがつぶされそうなくらい毎日の練習をしてきたことはあったけど、水泳を辞めたいと思ったことがあったけど。自分が本当に学びたかったのは「アスリートとは何か、それを学びたかった。その答えは、世の中の社会人はもちろん、アスリートも一人の人間。アスリートは人間だ。超人と呼ばれるようなアスリートでも人間です」
ーー泳ぎについて
「バタフライと背泳ぎのターンがちょっと甘かったかなと思いますが、失敗を恐れず、失敗しても動揺せず、多少の動揺があっても最後まで諦めないでレースできた。自分の本心は仮にこれを最後にしようかなと思って、最後のつもりでレースをやってみんなから、応援してくれるコーチやみんなもそうですが、応援してくれる皆様が一生懸命応援してくれたので、パラリンピックに出られることに感謝して全集中で泳ぎました」
東海林の世界記録を塗り替えたリース・ダンは、20年の競技経験があるベテラン選手だ。トレーニングのしすぎで背中を痛めているという。200m個人メドレーでの受賞について、「信じられない。ゴールドをとれるとは思っていなかった」と自国イギリスのメディアの質問に答えていた。
日本のライバルについて聞いてみると、「たぶん、とても辛い思いをしているかもしれないが、この辛さをバネにしてほしい。東京での経験は大切だ。楽しく、とてもいい経験をしている」と口にし、ライバルを思いやる言葉をくれた。
(編集・校正 望月芳子)