8月24日から開幕し、各地で熱戦が繰り広げられている東京2020パラリンピック(以下、東京大会)。27日には柔道が開幕。29日までの3日間、日本武道館を舞台に開催された。
最終日は、女子70kg級 / 女子70kg超級 / 男子90kg級 / 男子100kg級 / 男子100kg超級の5階級が行われた。
本記事では、女子編をお送りする。
女子70kg級は、前回銀のマウドナドが金に
女子70kg級は、アラナ・マウドナド(B2:ブラジル)が金メダルに輝いた。地元開催だった2016リオパラ大会では銀。イナ・カルダニ(B2:ジョージア)との試合で、隅落でポイントを取りそのまま守り切った。
マウドナドは競技直後のインタビューでは、「神様・家族・友人・チームメイトにすべての支えてくれた人に感謝します。今日の金メダルはブラジルのみなさんに届けたいです」と初めに感謝の気持ちを述べ、
「この5年間は不安でいっぱいで、さまざまなものを犠牲にし、練習に練習を重ねてきました。最高の結果が出て誇りに思います。全てを捧げてきてよかったです」と語った。
カルダニは初のパラリンピック出場で銀。前日男子73kgに出場したギオルギ・カルダニ(B2)とは夫婦で、ともに世界の舞台で戦った。
男子100kg超級のレバス・チコイゼ(B2)とともに、他競技も含め全体でジョージア史上初のパラリンピックのメダルだったと語り、
「国を代表してメダルを獲るという気持ちでやってきましたし、本当に嬉しいです。メダルは私だけのものではなく国のものだと思っています」と誇った。
銅は、日本の小川和紗(B2:オー・エル・エム)とレニアファビオラ・ルバルカバアルバレス(B3:メキシコ)。
日本勢の女子で唯一のメダルとなった小川は、「世界大会でメダルを取ったことがなかったので、すごくうれしい。父にメダルをかけてあげたいです」と喜びを語るとともに、
「ここで1回銅メダルを取れたので、3年後のパリ大会に向けてもっと自分を磨いて、次は銅から金に変えたいです」と早くも次を見据えた。
また、前回大会で金のルバルカバアルバレスは準々決勝からスタートしたものの、初戦でカルダニに敗れ、敗者復活戦から再度勝ち上がった。
3ヶ月ほど前に新型コロナウイルスに感染してしまったという。
フィジカルは問題なかったとしながらも、「後遺症が残ったりしないかという心配がありました。あと、家族やチームメートにうつしてしまったらどうしようなどとも思いましたし、試合に出ていいのかとも考えてしまい、すごく辛かったです」と大会前の葛藤を語った。
そんな不安を乗り越え、2008年北京パラ、前回大会に続き自身3個目のメダル。
「メキシコを代表し、自国にメダルをもたらすことができた。本当に嬉しく思っています」と喜んだ。
女子70kg超級でもアゼルバイジャンが金
女子70kg超級では、36歳でパラリンピック初出場のドゥルサダフ・カリモワ(B3:アゼルバイジャン)が頂点に。
開始から2分ちょうど、こちらも37歳でパラリンピック初出場のザリナ・バイバティナ(カザフスタン)に背負投して一本勝ちで勝負を決めた。
東京大会で躍進を続けているアゼルバイジャン勢がさらに金を増やした。競技後には、コーチとのやりとりを明かしてくれた。
「私のコーチも、パラリンピックの金メダリストなんです。彼がいつも私に対して、『あなたは絶対チャンピオンになるよ。2人で金メダリストとしてアゼルバイジャンを歩こう』と言ってくれたんです」
カリモワもこの大会で活躍している自国の仲間の活躍がとても刺激になったという。
「チームが素晴らしい結果を出してくれることが、さらに自信になりました。昨日、金メダルを私にかけてくれてすごく嬉しい気持ちで、一緒に喜びを噛み締めていました」
と仲間に金メダルを報告できることに安堵の表情を浮かべた。
一方、バイバティナは最後に脚を負傷。肩を借りながら会見場に。「何度も(怪我を)してますから、全然大丈夫です」と痛々しい姿とは真逆の表情で語り、「国のために戦ったという気持ちでいっぱいです。スマートフォンにたくさんお祝いメールが来ていましたよ」と笑顔を見せた。
銅はメグ・エメリク(B3:ブラジル)とカロリナ・コスタ(B2:イタリア)。といずれもパラリンピック初出場でメダルを獲得した。この階級では前回大会からの連続メダルは現れなかった。
コスタは初のメダルを「実感がない」としながらも、「時間をかけて準備をしてきました。家族や友人、国中の人たちが注目をしていた試合でしたので、メダルを獲れて嬉しい気持ちいっぱいです」と喜んだ。
エメリクは初戦、土屋美奈子(B1:ギャラリー・ド・ポップ)と対戦。「最初のうちは負けていた部分もありましたが、持ち直して自分のペースにすることができました」と語り、次の試合でカリモワに敗れるも3位決定戦で勝利し、メダル獲得となった。
東京大会では、アゼルバイジャン勢の女子が4階級(48kg / 57kg / 63kg / 70kg超)で金を獲得した。それぞれの選手からも「仲間の活躍が嬉しい」というコメントが聞かれるなど、互いの活躍が刺激になり、躍進につながった。
次回の2024パリパラリンピックでさらにメダルを増やすのか。日本勢のリベンジとともに注目ポイントとなる。
(ロシア語 フランス語 英語 中国語 韓国語通訳・赤須由佳、校正 佐々木延江、望月芳子)