コートに彼が帰ってきた。車いすバスケファンなら誰もが、香西宏昭の存在を待っていたことだろう。東京パラリンピックの男子車いすバスケットボール開幕戦が26日、武蔵野の森総合スポーツプラザで行われ、日本はコロンビアに勝利。初戦を白星で飾った。
香西は日本で唯一、車いすバスケットボールのプロ選手として活躍し、パラリンピックには、北京、ロンドン、リオ、東京と4大会連続で出場。名実ともに国内エースとして車いすバスケ界を牽引する。
公式戦の出場は、2019年11月のアジア・オセアニア・チャンピオンシップス以来、実に1年9ヶ月ぶり。昨年はコロナ禍での大会中止やコンディションの不調もあり、強化指定選手ではあるものの、ファンの前でプレーを見せることはなかった。
「パラリンピックが本当に始まったんだなと。試合って楽しいなと感じながらプレーしていました」と香西。「この環境に身を置くことができていることに感謝しています」と、コートに立つ喜びを噛み締めた。
海外選手に比べて高さの足りない日本代表は、長らく「トランジションバスケ(堅い守備からボールを奪い、速い攻撃を仕掛ける)」を戦略の柱としてきた。コロナ禍で試合ができない中、練習試合を重ねる過程で、ディフェンス、オフェンス両方の質を高めてきた。「ここから右肩上がりにチームを作っていくことが必要。ただ勝つだけではなくて、チーム全体が試合を重ねる中で成長していくようなチームにしたい」と意気込む。
東京パラリンピックの車いすバスケットボールは、男子 12か国、女子 10か国が出場。男子日本代表のパラリンピック最高順位は、1988年ソウルパラリンピックと2008年北京パラリンピックの7位。2019年の国際大会「三菱電機 WORLD CHALLENGE CUP 2019」では3位、タイの「2019アジアオセアニアチャンピオンシップス」では4位と、着実に順位を上げてきた。今大会で悲願のメダル獲得が期待されている。
(編集・校正 望月芳子)