関連カテゴリ: Tokyo 2020, イベント, オンライン観戦会, コラム, トラック・フィールド, 取材者の視点, 周辺事情, 夏季競技, 東京, 義足アスリート, 陸上 — 公開: 2021年8月27日 at 8:42 AM — 更新: 2021年9月9日 at 2:13 PM

義足エンジニア・遠藤謙による「東京パラ注目の義足アスリートの見どころ!(男性編)」

 

ミハイル・セイティス(ギリシャ,34歳) 

 

彼を世界レベルの大会で初めて見たのは、2015年ドバイの世界パラ陸上選手権でした。彼はこのレースでは当時のパーソナルベストを更新し11.43で6着でした。次の年のリオパラリンピックでも100mにエントリーしてきましたが、予選では11.30のタイムで0.04秒の差で予選敗退してました。そして次の年、ロンドン世界パラ陸上選手権では11.25で6位に入賞しました。さらにさらに2019年のドバイ世界パラ陸上選手権では11.23で5位に入りました。じわじわと、でも確実に世界との差を縮めてきているのが分かります。

 

2015年ドーハ世界パラ陸上競技選手権100m決勝

2016年リオパラリンピック100m決勝

2017年ロンドン 世界パラ陸上競技選手権100m決勝

 

実は、セイティス選手は400mで49.66の世界記録を持つロングスプリントのイメージがあります。400mとなると両足義足の選手の方が有利と言われており、その中で片足義足の彼が勝負をするのは難しいといわれています。そのため、レースを両足下腿と片足下腿のクラスが別れることになり、2017年のロンドン世界パラ陸上選手権では、見事400mで金メダルに輝きました。同レースでは日本代表の池田樹生選手も出ていたので、私も現地で見ていたのを覚えています。ちなみに、池田選手も見事7位に入賞しています。しかし、今回パラリンピックでは片足義足選手は400mの種目がないので、ショートスプリントに絞って練習をしてきているかと思われるので、100mでもかなり期待できるのではと思っています。

 

彼は昔からずっと、Ossur社のXtremeというブレードを使用し続けています。筋量も多く、大きな身体をしていますが、走り方はクセのない比較的コンパクトな走り方をしています。前捌きもうまく、ブレードの使い方も参考にしている選手の1人です。

 

そんな彼ですが、ジョニー・ピーコック選手もそうでしたが、2017年以降Dance with the Starsというテレビ番組の中で競技ダンスも披露してくれました。

また、2018年には我々が関わった渋谷City Gamesにも参戦してくれました。この時私は彼に初めてあったわけですが、鍛え上げられた筋肉で大きな身体で非常にスマートなレースを見せてくれる印象とは異なり、非常に優雅かつ穏やかでした。来日後数日間、他の選手たちは新豊洲Brilliaランニングスタジアムで調整のための練習をしていましたが、彼はスタジアムにきたものの、レーンの端にある椅子に優雅に座って、他の選手たちの調整を見ていました。彼に、調整はしなくていいかと聞いたところ、「リラーーックス」といって、自分がすでにとてもいい状態であるということを教えてくれました。

渋谷City Gamesでは彼は残念ながら予選で敗退してしまいましたが、その後子供のブレードランナーたちが走るチャレンジランで、大腿義足の男の子、齋藤暖太くんの横で一緒に走ってくれました。暖太くんは走っている途中で転んでしまい、悔しくて泣いてしまったのですが、そんな彼を一生懸命励まし、最後まで一緒に走りきりました。あんなに穏やかなセイティス選手が一所懸命になって、暖太くんを横で応援してくれた様子を見て、一気に彼のファンになりました。走り終えた暖太くんの膝継手を見て、その場に居合わせた元ドイツ代表大腿義足アスリート、ポポフは「転んだのこの義足の調整不足のせいだ。Kenに文句をいえ」と言われて反省した次第でもあります。

今回100mと200mのショートスプリントに絞ってきた彼がどんなパフォーマンスを見せてくれるのか、今から待ちきれません。

 

| ジョニー・ピーコック | フェリックス ・ストレング | ヨハネス・フロアー | アラン・オリベイラ | シャーマン・グイティ | ミハイル・セイティス | ジャリッド・ウォレス |

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