関連カテゴリ: Tokyo 2020, イベント, オンライン観戦会, コラム, トラック・フィールド, 取材者の視点, 周辺事情, 夏季競技, 東京, 義足アスリート, 陸上 — 公開: 2021年8月27日 at 8:42 AM — 更新: 2021年9月9日 at 2:13 PM

義足エンジニア・遠藤謙による「東京パラ注目の義足アスリートの見どころ!(男性編)」

ヨハネス・フロアー(ドイツ、26歳)

両足義足のスプリンターヨハネス・フロア(FLOORS・Johannes/ドイツ) 写真/Photo: Daniel Zappe

ドイツの小柄な両足義足のアスリートです。彼を初めて見たのはリオパラリンピックの予選でした。11.34でゴールし、残念ながら予選落ちしたのですが、このとき予選通過タイムが11.26で、ロンドンパラリンピックよりも0.5秒ほど速くなったことにびっくりしたのを覚えています。ちなみにこのとき私は現地にいて、同レースで佐藤圭太選手が当時のアジア記録を出したことと、Xiborgのブレードが世界デビューを果たしたことに歓喜しておりいました。

2016年リオパラリンピック100m予選

そして、びっくりしたのがその次の年のロンドン世界パラ陸上選手権です。決勝100mで前半飛び出したジョニーピーコック選手とジャリッドウォレス選手の競り合いになるかというところに、後半スーッとそれに割り入って10.89の2着に入りました。1年でここまで伸びるのかというくらいの成長を見せました。

2017年ロンドン 世界パラ陸上競技選手権100m決勝

話がそれますが、2015年ドバイの世界パラ陸上選手権で11.42のタイムで5着だったニュージーランドのリアムマローン選手も一年後のリオパラリンピックで予選で10.90、決勝では11.02で3着に入り、その成長で周囲を驚かせ、その次の年には引退してしまうというびっくりもありました。

ヨハネス・フロアー選手はここからさらに周囲を驚かせます。2018年のヨーロッパ選手権では11.42(向かい風-2.3)の2着、そして、2019年のドバイの世界パラ陸上選手権では10.60のタイムで優勝するのですが、予選では10.54という世界記録を樹立しました。

2018年ヨーロッパ選手権

2019年ドバイ世界パラ陸上競技選手権100m
予選

決勝

両方の足が義足なので、地面を能動的に押すことが難しく、通常はスタート20~30mは加速ができないため、片足義足の選手から遅れることが多いのですが、彼の場合は小刻みに足を回し、スタートでもうまく加速をしているのがよくわかります。また、両足義足の選手はかかとのないブレードを両方の足で使っているので、静止して立っていることができず、常に足踏みをしています。そして、スタートでの静止もクラウチングスタートも非常に難易度の高い動きになります。彼はそんな難易度の高いスタートもこなしているのです。さらに彼はスピードにに乗ったときには大きなストライドでダイナミックに走るのです。チームメートのフェリックスは彼の走りを「He is flying(彼は飛んでいる)」と表現していました。

そんな彼の足にはオットーボックのスプリンターというブレードが昔から使われています。スプリンターは軽い反面、大きなたわみを許容しないつくりなので、男性アスリートで使っている選手はほぼいないのですが、彼のようにスタートで小刻みに加速していくのであれば、マッチしているのかもしれません。両足義足の走り方の新しい戦略を作り出した選手といえると思います。

私自身は彼にあったことはないのですが、イスタグラムで発信をよくしてくれるので、彼の活動を見ることができます。
https://www.instagram.com/jofloors/

そして、xiborgのインスタの写真にいつもlikeしてくれています。さらにいうと、今年のはじめにclubhouseが流行り出した頃、私はどんなパラアスリートがいるか探したのですが、そのときに彼がすでにいて、私をフォローしてくれていたのです。もうこれは勝手な妄想ですが、おそらく彼は我々の活動を応援してくれているのではと、もはや応援するしかないのかなとすら思っています。

最後は勝手な憶測でしたが、スピードに乗った彼は誰よりも速いのは間違いないので、あとは加速をどこまでうまくこなせるかが彼の勝負になります。ぜひ彼のトップスピードに注目してください。

| ジョニー・ピーコック | フェリックス ・ストレング | ヨハネス・フロアー | アラン・オリベイラ | シャーマン・グイティ | ミハイル・セイティス | ジャリッド・ウォレス |

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