関連カテゴリ: Tokyo 2020, イベント, オンライン観戦会, コラム, トラック・フィールド, 取材者の視点, 周辺事情, 夏季競技, 東京, 義足アスリート, 陸上 — 公開: 2021年8月27日 at 8:42 AM — 更新: 2021年9月9日 at 2:13 PM

義足エンジニア・遠藤謙による「東京パラ注目の義足アスリートの見どころ!(男性編)」

Felix Streng(ドイツ、26歳)

彼が世界レベルの大会に初めて出たのはおそらく2015年のドバイで行われた世界パラ陸上選手権だと思います。この時は、11.16で4位に入賞しました。そして、次の年リオパラリンピックでは見事11.03で銅メダルに輝きました。

その後、2018年のヨーロッパ選手権で金メダルを獲得しました。その後も着実に実力を伸ばし、2019年のドバイの世界選手権でも3位と安定して世界レベルの大会で結果を出し続けています。そしてついには今年10.57というT64のクラスの世界記録を叩き出しました。(公式記録かどうかは不明で、この記録はWPAの世界記録には登録されていなかった)。今一番勢いのある選手といえると思います。

2015年ドーハ世界パラ陸上競技選手権100m決勝

2016年リオパラリンピック100m決勝

彼の特徴は体操競技をやっていたこともあり、全身の筋量が多く、体全体を使って力強く走るのが特徴です。彼は生まれつき右足の足首付近がない状態で生まれたそうです。彼の足を見ると、他の選手と比べ断端が非常に長く残っていることがわかると思います。同じクラスでも残っている断端が長かったり、断端に荷重をかけても痛くない選手は有利なので、彼はとても恵まれた断端を持っていますといえます。ですが、残っている部分が長いため、ブレードを取り付ける際にソケットとブレードが当たってしまうこともあり、工夫して取り付ける必要があります。

そのせいか、彼のブレードを他の選手よりも色々と試してきた選手ではと思います。2016年リオパラリンピックの時はOssur社のXtremeを使っていました。これは当時のジョニーピーコック選手と同じものです。その後、オットーボックのランナーカスタムという、C字型のブレードを無理やり下腿義足のソケットに取り付けているのを見て、とても驚いたのを覚えています。彼はそのブレードでも結果を出し続けました。そして今年になってまたOssur社のXcelを履いて世界記録を出したのです。ちなみに現在のジョニーピーコック選手と同じものです。色々工夫しながら走っていることがよくわかります。

彼はまた、昨年くらいから所属が変わったようで、以前はドイツの名門チームリバークーゼンに所属していたのですが、今はイギリスをベースに活動しているようです。発信に積極的なエージェントがついたせいか、スポンサーも増え、インスタグラムでの発信も多くなって、彼の状況がよく伝わってくるようになったのは、ファンとしてとても嬉しい限りです。

https://www.instagram.com/felix.streng/

そんな彼は2017年、2018年と渋谷City Gamesに二年連続で来てくれて、両方とも3位でした。また、2019年までほぼ毎年行われていたセイコーゴールデングランプリという大会にも招待されていたので、おそらくジャリッドウォレスに次ぐ来日回数を持つ海外義足パラアスリートかと思います。

そんな彼ですが、実はXiborgの義足も色々と試してもらい、走りも少し計測させてもらったことがあります。結局残念ながらXiborgのブレードを彼は採用しませんでしたが、色々と学ぶことは多かったです。特に、彼は日本のどの選手とも、またジャリッドウォレス選手とも異なる走り方をしていました。というのも、彼が使っているブレードは体重の割に非常に硬いもので、バネをしならせて走るというよりは、硬いブレードを積極的に筋肉で押して地面を蹴るような使い方をしていました。また、健足側の筋力も非常に大きく、義足側に比べてより大きな力で地面を蹴っていることがわかりました。全身の筋肉を能動的に動かして、ダイナミックに走るのが彼の持ち味だと思っています。

彼と日本で行動を共にすることが多かったのですが、ラーメンや焼肉などの食事も気に入っていました。また、日本にレースに来たのにスパイクを母国に忘れ、日本でアディダスショップに買いに行くといったお茶目な面も持ち合わせていました。彼への取材の窓口をお手伝いしていたこともあり、彼の取材にも帯同することもありましたが、とても礼儀正しい青年でした。
https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/othersports/para_sports/2018/11/11/___split_29/

フェリックスは100mだけでなく、200mでも優勝候補筆頭のマルチなアスリートです。彼の活躍が今から楽しみです。

| ジョニー・ピーコック | フェリックス ・ストレング | ヨハネス・フロアー | アラン・オリベイラ | シャーマン・グイティ | ミハイル・セイティス | ジャリッド・ウォレス |

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