東京2020パラリンピック競技大会が8月24日、オリンピックスタジアムで開幕した。コンセプトに掲げた「WE HAVE WINGS」の通り、スタジアムの夜空に多様性の「翼」を広げた。
今大会では、2回目のパラリンピック参加となる難民選手団や、新たにブータン、グレナダ、モルディブ共和国、パラグアイ、セントビンセント及びグレナディーン諸島の初参加5カ国を含む、162カ国が出場。前回リオ大会の159カ国から3カ国増え、世界各国から史上最多となる約4400名のアスリートが集う。
舞台はエアポート。旅のはじまり
開会式のコンセプトは「WE HAVE WINGS」。誰しもが人生で経験する逆境の中、どんな風が吹いても勇気を出して「翼」を広げることで、思わぬ場所に到達できる、というメッセージが込められている。世界中のパラリンピアンが集い、着陸することをイメージした「パラ・エアポート」を舞台に、勇気や希望の「風」を起こすための様々なパフォーマンスが繰り広げられた。選手入場では、フィールド上のアシスタントキャストが頭にプロペラを着けた姿で登場して、選手たちに風を送ったり、軽快なステップで歓迎したりするなど、旅の始まりを盛り上げた。
車いすに乗った少女が演じた「片翼の小さな飛行機」では、空を飛ぶことが怖かった少女が、片足で飛ぶ飛行機、小さい身体で飛ぶ飛行機、翼の代わりにプロペラを持つ飛行機、目の見えない飛行機など、様々な飛行機に扮した登場人物たちに出会うことで、自ら滑走路を目指すという、勇気や挑戦を体現する航空ショーも繰り広げた。
セレモニーでは、アクセシビリティーにも配慮された。約5500人のオーディションの中から選ばれた 75 名の公募キャストのほか、障害を持つパフォーマーが表現をしやすいように共にステージに立つ「アカンパニスト(伴奏者)」12名や、ステージまで導く「アクセスコーディネーター」が10名参加した。また、会場では、式典の様子を分かりやすく伝える「コメンタリーガイド」を設けた。日本語、英語による音声ガイドのほか、字幕では日本語、英語、スペイン語、中国語、韓国語、フランス語の多言語にも対応しており、視覚障害者や聴覚障害者のためのガイドとしてだけでなく、式典の細かな演出や解説も聞くことができた。
2度目の難民選手団、アフガン選手団は代役が旗手
難民選手団からは女子1名、男子5名の計6名が出場。女性初の難民パラアスリートでありパラリンピック選手団の最年少代表、アリア・イッサ(ギリシャ/シリア難民)は、パラ陸上(こん棒投げ)に出場する。アバス・カリミ(アメリカ/アフガン難民)、イブラヒム・アル・フセイン(ギリシャ/シリア難民)は水泳に出場。シリア出身のアナス・アル・カリファ(ドイツ)はパラカヌー、リオ大会にも出場したシャハラッド・ナサジプール(アメリカ)は、パラ陸上(円盤投げ)で再び東京のパラリンピックに出場する。最後の代表、パルフェ・ハキジマナは、ブルンジの紛争を逃れてから暮らしているルワンダのマハマ難民キャンプから来日。新競技のテコンドーで頂点を目指す。
参加が叶わなかった選手団もいる。8月15日、事実上の政権崩壊で来日を断念したアフガニスタン選手団からは、テコンドーのザキア・クダダディと陸上競技100mのホセイン・ラスーリの2名が出場予定だった。オーストラリアの複数のメディアは24日までに、アフガン選手団の2人がオーストラリアへ向かったと報道。支援者らはまだ大会への参加を諦めていないといい、今後の動向が注目される。開会式では、急遽、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のスタッフがアフガニスタンの旗手を務め、会場からは惜しみない拍手が送られた。
東京パラリンピックは9月5日まで、22競技で熱戦を繰り広げる。
(校正・佐々木延江 中村 Manto 真人、山下元気)