この夏、日本は3度目のパラリンピックを迎えようとしている。パラリンピックをきっかけに、スポーツの現場をインクルージブに高めていこうとする取り組みが、形を成してきた。
7月10日〜11日、神戸ユニバー記念競技場(神戸市)で行われた兵庫陸上競技選手権大会では、今年からパラ陸上の選手たちが出場することになった。国体の選考を兼ねた健常の選手に混じって、100m、400m、1500m、走り幅跳びに17名(男子12・女子5名)のパラアスリートがエントリーした。
東京2020パラリンピック開幕を44日後に控え、中西麻耶(阪急交通社)と高桑早生(NTT東日本)は、女子走り幅跳びT64に出場した。
「健常者のところで一緒にやらせてもらうと、戦い方の違いがわかります。優勝した選手は、予選後に急にあげてきて、私もそういう展開をつくりたいと思わされました。うらやましい、食らいついていきたいと。気持ちのなかでも戦えたので、来年の世界選手権に向けて、(この競技場に)しっかりとあいさつはさせていただきました」と、中西。
来年(2022年)8月には、この神戸ユニバー競技場でIPC(国際パラリンピック委員会)により創設された世界最高峰のパラ陸上(WPA)が開催されることが決まっている。前回2019年ドバイのパラ陸上で金メダルを獲得し、世界女王となった中西は、44日後に始まる東京で、また来年の世界選手権でも頂点を極める勢いで跳躍に挑んでいた。
ーー数日前「東京2020オリンピック=無観客」というショッキングな決定が報じられたことについて、北京、ロンドン、リオに続きパラリンピック4大会目の出場となる中西はつぎのように話していた。
「うまく行かないことって人生のなかでたくさんあって、うまく行かないからって、できてきたことがゼロになるわけじゃない。観客がいなくなったから、やってきたもの全てが台無しになるわけではないし、現地へいけないなら応援やめたってわけじゃないはずです。
現地にきて、応援してくれる人だけが全てでもないので、いままでもずっとそういう中でやってきてここまできましたし、たとえ観客ありが無理であったとしても、私がやるべきことに変わりがないし、応援する場所がかわっただけで、応援の気持ちは変わらず持ってくれているように、最後のさいごまで、あきらめずに、あの場で頑張ってきたいと思います。日本でやる以上、やはり日本の選手が活躍するべきだと思うので最後までつくしたい」
パラリンピックトップ選手と全国上位レベルの競い合いが実現
開催された種目のうち、車いす種目については、WPA(世界パラ競技連盟)の規則が適用され、知的障害の選手は健常の選手と同じルールで走ることができた。東京パラリンピックを目前に控えたパラアスリートと、兵庫から全国大会を目指す高校、大学の陸上部、地域クラブなどから精鋭の選手たちが神戸のトラックでともに競い合った。
東京2020パラリンピックまで44日となった。陸上からは合計43名が日本選手団として選出されている。
<参考;7月10日・大会1日目の記事>
https://www.paraphoto.org/?p=28179
(取材・記事 佐々木延江 校正・丸山裕理)