来年(2022年)8月にパラ陸上世界選手権が開催される神戸ユニバー記念競技場で開催中の第89回兵庫陸上競技選手権大会に、パラ陸上の選手たちが出場。男子100m車いすT52で、地元神戸市出身で、東京パラリンピック日本代表の大矢勇気(ニッセイ・ニュークリエーション)が16秒75のアジア記録をマークした。
「5月の新国立競技場でのテストイベントでも17秒台で、今日ここでやっと16秒台を出せた。世界選手権(2019年ドバイ)ではアメリカ勢に完敗した。今回のアジア記録で、レンモンド・マーティン(世界記録=16秒41)と0.3秒差になった。新国立競技場のトラックとは相性がいいので、東京パラリンピックでも、世界選手権でも頑張りたい」
アメリカと日本は、パラ陸上T52クラスでは宿命のライバルどうしである。それは、100mから5000mまでのすべての距離の世界記録を29歳のレイモンド・マーティンと佐藤友祈(モリサワ)が占めているからだ。現在、佐藤は400mから上で、短距離の100mと200mはレイモンドがレコードを保持している。このトップ争いの3人目として大矢が切り込んでいきそうだ。
「16秒の道のりが長かった期間の取り組みは?」との記者の質問に大矢は、
「スタートは得意だが、スタートからのスピードをあげる、ギアチェンジする、70mから100mの後半も落とさなかったというのが、今回できた。これまでは後半に苦手な箇所があり、そこにとりくんできて成果を出せた。コーチの技術指導もあるが、会社には午前勤務で午後に練習の時間をいただいていて集中して練習することができている。所属企業には時間をもらっている。丁寧に必要な練習を積むよう心がけている」
生馬知季が初パラリンピックへ
日本代表として新たに推薦がきまった生馬知季(GROP SINCERITE WORLD-AC)は、14秒18で自己ベストを更新。リオパラリンピック出場を最後に競技を引退した永尾 嘉章の日本記録に一歩近づいた。和歌山県出身で2009年東京で開催されたアジアユースパラゲームズで初日本代表となり、当初はパラ陸連(現)理事長・三井利仁氏の指導をうけて競技に出会い姿勢を学ぶ。29歳になる現在は岡山で車いす陸上のクラブWORLD-AC(ワールドアスリートクラブ)に所属し100mを中心に取り組んでいる。
「一年延期がきまり、もう一年パラに向けて体を仕上げなければならないことを考えた時に不安もあり、内定をいただけるのか不安が大きかった。競技歴は11年となりましたが初めての東京。やっとここまで漕ぎつけて、人生初のパラリンピックをむかえるのかと思うと、身の引き締まる思いです、しかも自国開催で嬉しい。周囲の方々、とくにクラブの松永監督、競技を始めたころ三井さんから教わったこと、競技に出会えたことが今につながっています」
東京パラリンピックまであと45日となった。
(取材・文 佐々木延江 校正・丸山裕理 写真提供・日本パラ陸上競技連盟/小山哲矢)