5月21日、東京パラリンピック日本代表の最終選考レースとなるWPS(世界パラ水泳)公認「ジャパンパラ水泳競技大会」が横浜国際プールで開幕した。選手、競技スタッフ、メディアの人数制限などを含む感染対策のもと無観客での3日間の真剣勝負となる。
東京パラリンピックへは2019年ロンドンでの世界選手権で金メダルを獲得した全盲の木村敬一(東京ガス)、知的障害の山口尚秀(四国ガス)、東海林大(三菱商事)の3名が内定している。IPC(国際パラリンピック委員会)から日本に与えられた出場27枠をめぐって、いよいよ最後の勝負の時をむかえた。
富田宇宙、鈴木孝幸が代表内定!
初日の第1レース、男子400m自由形S11(全盲)で、富田宇宙(日体大大学院)が予選4分33秒26、決勝4分37秒27で派遣基準を突破。初のパラリンピック日本代表内定を獲得した。富田は2017年に障害のクラスがS11(全盲)となり、日本のエース木村敬一のライバルとして浮上した。S13(弱視)でアジア記録をマークしつつも、パラリンピック代表とはなれない期間も400m自由形をメイン種目としてきた。障害の進行とともにクラスが変わったことで大きなチャンスを得た。2019年ロンドンで開催された世界選手権の大舞台で堂々銀メダルを獲得。パラ競泳のトップの世界を肌で感じ、長く取り組んできた400mで東京へむけさらに高みを目指してきた。
「せっかく午前中良かったので午後も更新してかっこよく終わりたかったけど、リキみすぎたかな。スピードが出ている時期なので明日の自由形も予選から積極的に展開していきたいと思います」と決勝後のミックスゾーンで富田は話していた。
男子200m自由形で派遣標準記録を切り5度目のパラリンピック代表に内定した鈴木孝幸は、
「僕にとっては3月以来はじめての大会。ここで泳げなければパラリンピックまでひとつも泳げないで迎えることになったかもしれない。レース感をとり戻すということ、しっかりと派遣基準をクリアしたいという2つの目標があった。今回の大会でとりあえずこのくらい出したいなというのはクリアした。ベストから4秒遅いタイムだったが、黄斑の課題もわかり調整していく。今ヨーロッパ選手権も行われていて同じクラスの選手がいいタイムを出している。金メダルを掲げているが、道のりは険しい。諦めずに目指したい」と、限られた練習や試合のなかで、やれることを自分のペースでやっていく方向性を示した。
選手層が厚い知的障害、男子100m平泳ぎS14・山口尚秀が世界記録更新!
男子100m平泳ぎS14予選で山口尚秀(四国ガス)が1分04秒00で世界記録を更新した(記録はIPCへ申請し正式にIPCのホームページに掲載され更新される)。山口は、2019年の世界選手権で世界記録を樹立。昨年11月に仙台で行われた記録会でも自己ベスト=世界記録を更新し続けている。
同じく、知的省害では、宮崎哲(あいおいニッセイ)が男子200mS14予選で1分59秒95、決勝で1分59秒70で泳ぎ派遣標準までおよそ2秒と迫った。
ミックスゾーンで宮崎は、「予選は軽く泳ぎましたが、決勝は戦いなので、精一杯泳ぎました。予選と決勝のタイムの違いはありますが、もう攻めていくしかないという気持ちで全力をつくして泳ぎました」と記者の質問に応じていた。
ベテラン組、日本記録更新するも派遣標準に届かず
男子100m平泳ぎに出場した山田拓朗(NTTドコモ)と中村智太郎(HISAKA)は日本記録を更新した。そして、女子50m背泳ぎS5に出場した成田真由美は好記録ながらも派遣標準を切ることができなかった。
成田真由美は、「予選で左に曲がったので曲がらないよう真っ直ぐ泳ぎました。コロナ禍で2ヶ月間プールでの練習ができず、3月のタイムがあまりにも悪かったが、練習は積んでいた。予選は納得いくタイムではなかったが試合がなかったなかで久々に自分らしい泳ぎができた。派遣基準タイムとして46秒は大ベストを出さないときれない。50m自由形ではしっかりとタイムを残さなければと思っています。コロナ禍でも練習を許してもらえるなかでできていることに感謝しています」と話していた。
(写真取材・秋冨哲生、山下元気 記事・佐々木延江)