関連カテゴリ: World Paratriathlon Series, チームジャパン, トライアスロン, 取材者の視点, 地域, 横浜 — 公開: 2021年5月16日 at 2:07 AM — 更新: 2021年5月29日 at 11:40 AM

秦由加子、同志・メリッサとの再会レースに「感慨深い気持ち」

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秦由加子

 「彼女のように強くなりたい」。レースを終えた秦は目を潤ませてそう語った。「2021 ITU世界パラトライアスロンシリーズ横浜大会」が15日、横浜・山下公園で行われ、立位の部・PTS2に出場した秦由加子(キャノンマーケティングジャパン・マーズズフラッグ・ブリヂストン)は“同志”とのレースに声を震わせた。

PTS2に出場した秦由加子(キャノンマーケティングジャパン・マーズズフラッグ・ブリヂストン) 写真・秋冨哲生

 レース後、開口一番、「負けちゃいました」と秦。その相手は、ライバルであり、仲間であるメリッサ・ストックウェル(アメリカ)だ。元陸軍兵で、リオパラリンピック銅メダリスト、3度の世界女王にも輝いたトライアスロン界のエースだ。秦は昨年2月に行われた世界パラトライアスロンシリーズデボンポート大会でメリッサを下したが、今回は序盤から相手にリードを許し、悔しさを滲ませた。

バイク
秦由加子のライバル、アメリカのメリッサ・ストックウェルのバイクパート 写真・秋冨哲生

 「スイムから先行されて、バイク、ランとすでに姿が見えないレースになってしまいました。前回はバイクで勝って差を広げることができましたが、今回はバイクでも差を広げられてしまった。彼女も片足走行なので条件は同じ。強さを感じました」と振り返る。

 秦は2019年、スイムからバイクに移行するパート「トランジション」でのタイムを縮めるため、また汗をかいてレース中に義足が外れてしまうのを防ぐため、バイクで義足を履くことを止め、片足での走行を決めた。仕上がりについては「勝ってない以上、まだ手応えはないです」と秦。パラリンピック開幕まで100日を控え、片足走行に磨きをかけるラストスパートとなりそうだ。

このレースで義足なしのバイクパートのスタイルを完成させた秦由加子 写真・秋冨哲生

 大腿切断のトライアスロン選手が少ない中、たった一人でレースに出る機会も多かった。同じクラスの海外選手との再会を振り返りながら、目を潤ませる場面も。「彼女とSNSでメッセージのやりとりしていて、お互いそれぞれの場所で頑張ってきたのを感じていました。今日一緒にレースができることをすごく楽しみにしていたので、やっと再会できて感慨深い気持ち。前回彼女が私に負けた時も、きっと悔しさを胸の中にしまいながら一年間頑張ってきたと思う。今回はそれ(頑張り)をすごく見せてもらった。私も彼女のように強くなりたいと思いました」と、尊敬するライバルとのレースを噛み締めた。

女子PTS2の表彰式。1位メリッサ・ストックウェル(USA)、2位は秦由加子 ©︎ Satoshi TAKASAKI/JTU

(写真取材・秋冨哲生 校正・佐々木延江)

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