「ワールドトライアスロンパラシリーズ2021/横浜」が15日、横浜・山下公園で行われた。トライアスロンの街・横浜で、2年ぶりに選手たちの熱いレースが帰ってきた。
2016年のリオパラリンピックから正式競技になったトライアスロンは、スイム、バイク、ランを連続して行い、その合計タイムを競う。パラの距離はスプリント(25.75km/スイム750m、バイク20km、ラン5km)でレースを繰り広げる。障害の種類や程度により座位・立位・視覚障害のクラスに分かれ、立位のクラス(PTS2〜5)は上・下肢の切断や機能障害など肢体不自由者のクラスで、障害の重い方から順に2~5に分けられる。
今大会は東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会クオリフィケーションランキングの対象大会とし て承認され、パラリンピック出場を目指す選手たちにとって、ランキングを上げるための重要な位置付け。2日間の大会では、国内外のエリート、パラトライアスロンの選手約170名、一般の部であるエイジグループ約1500名が参加する。
感染拡大防止のため、大会は無観客で開催。選手が外部との接触を断つ「バブル方式」で行われたほか、海外選手は新型コロナウイルスを持ち込まないよう、自国での陰性証明の取得をしてから来日。観客にも「行かないことが1番の応援 エール・アット・ホーム」を呼びかけ、オンラインでの観戦を推奨した。
気温20.5度、水温20.1度の中、朝6時50分にレースはスタート。雲間から朝日が差し込む、絶好のトライアスロン日和となった。
期待のホープ・梶鉄輝が横浜初レース!
立位の部、PTS5では、初出場の梶鉄輝(JPF)が8位でフィニッシュ。小学3年生で始めた自転車競技の強みを活かし、海外勢を相手に挑んだ。事前インタビューでは「横浜は世界トップの選手がたくさん来るので、今の力試し、どこまで走れるか」と話していた梶。「目標は5位でしたが、世界選手権のメンバーが揃うような大会で、この結果は自信になったと思う。ようやくスタートラインに立てた感じ。これからポイントを取って、パラリンピックにつなげたい」と意気込んだ。得意のスイム、バイクで良い位置につき、粘りのランで最後まで体力を温存するスタイルの梶。「今日はバイクで呼吸が早くなった中でも、ランで自分のベストタイムが出せたような感覚で走れた」と、手応えを口にした。
ベテランの佐藤圭一(セールスフォース・ドットコム)は、怪我からの復帰戦。昨年8月に左肩を3回手術する怪我をして以降、本格的な復帰レースとなった。「大変なレースでした。でも、今の自分の中では結構満足のいくレース。怪我から諦めずに続けてきて、ようやく自分のレースをする事ができた。世界の選手はそのさらに上の段階にいる。そこに向けて頑張らなくてはいけないと思ったレースだった」と試合後に話した。
車いすレースは、オランダの怪物が優勝
車いすの部・男子PTWCでは、「オランダの怪物」ことリオパラリンピック金メダリストのイェツェ・プラット(オランダ)が優勝。前回2019年大会の覇者、ヘールト・スキパー(オランダ)は2位でレースを終えた。「序盤のスイムからすでにプラットに届くのが難しかった。レースは完璧ではなかったので、反省しなければいけない」と振り返った。
同クラスの木村潤平(社会福祉法人 ひまわり福祉会)は5位。「今日は良いレースができなかった。自分はスイムが得意なのに差をつけられなかった」と競泳出身のアドバンテージを活かせずに悔しさを滲ませる。スイムでは「良いポジションを取るために選手同士がぶつかる場面もある。今日は良いポジションに行こうとして、違う方向に行ってしまった。自分でも課題が見つかるレースになりました」と振り返った。
東京パラリンピックの出場枠は各クラス男女2人、最大4クラス16人まで。今年春以降に行われる大会による出場資格ランキングで9位以内の選手を第1の基準とし、ランキング9位以内の選手がいないクラスには、開催国枠が与えられ、強化SおよびA1のレベルに相当する選手など第2の基準も踏まえて選考される。
(写真取材・秋冨哲生 校正・佐々木延江)