環境ととのえ、リスタートした若手たち
19年世界選手権の選考会から東京パラリンピックでのメダルを意識した「派遣標準記録」が設定されている。18年アジアパラ日本代表となり東京を目指した46名の中で(19年)世界選手権へ派遣されたのは14人。ほとんどの若手選手が世界選手権へは行けなかった。厳しいパラリンピックの目標だけでなく、クラス分けやルール変更など世界の成長や変化も著しい中で、一ノ瀬メイなど海外へ練習拠点を移した選手がいる一方で、競技からの引退を決める選手もいた。
しかし、さらに、世界を揺るがしたのは新型コロナウイルスによるパンデミックで、東京開催自体が延期となった。誰にとっても経験のない状況をむかえるこの間、若い選手のなかには自分を見つめるタイミングを得て環境を整え再スタートしようとする選手がいる。
西田 杏
女子50mバタフライ(S7)と50m自由形(S7)で日本記録を樹立した西田杏(三菱商事)。
2013年アジアユースパラゲームズ(クアラルンプール)で初日本代表、2014年アジアパラ(仁川)など国際舞台を経験しつつこの10年で東京パラリンピックを目指してきた一人。
日向 楓
男子50mバタフライ(S5)で日本新記録を樹立、派遣標準まであと1秒となった日向楓(宮前ドルフィン)。同じ小学校出身のパラリンピアン多川知希(陸上)が凱旋で小学校を訪れ知り合ったことが競技活動のモチベーションとなっている。
「電光掲示板をみて清々しい、いい気持ちになりました。予想をはるかにこえたタイムで嬉しかった。つぎは派遣標準(=35秒14)を切れるようコーチたちと相談したい」
荻原虎太郎
荻原虎太郎(セントラルスポーツ)は日本記録を複数の種目で持ち、11月の記録会(宮城)と今大会でも更新している。メイン種目を男子100mバタフライ(S8)ときめ、派遣標準記録を突破することを目標に地元・千葉でコーチとともに練習に励んでいる。4月から順天堂大学に進学しスポーツを専門に学びながら競技に専念する。「東京で決勝に残ることが目標」と話していた。
小池さくら
女子400mと100mの自由形(S7)に出場した小池さくら(大東文化大)は、11月の記録会を経て21年の強化指定選手となってから今大会までは、東京を目指す選手たちとともにNTCでのトレーニングを中心に行ってきた。
「(メインの400mは)5分35秒が目標だったが44秒で遠くなった。練習ではタイム、プールの水の感じもよかったので『今回はいけるぞ』と思ったが、飛び込んだ瞬間不安がよぎったのと、緊張で力んでしまった。メンタルが強いほうではない。レースは強気でいく方がいいと思うが自分はそれが苦手で、練習で不安がなくても、レースになると緊張し不安な気持ちが出てしまう」
「今後の課題は、泳ぎやスピード感にはあまり不安はないが、気持ち的な問題でもう少し自分に自信を持って、全体的に強い気持ちでレースに臨みたい。次の大会ではそうしたい。今回のタイムを受けて、5月に向けて体作りや泳ぎ込みをしていきたい」
南井瑛翔
男子100mバタフライ(S10)1分1秒09 でアジア記録のタイムを出した南井は4月から近畿大学に進学する。アジア記録と報じられたが、国際クラス分けを受けていないため公認されない。
「自己ベストでアジア記録は嬉しいが、あと0.1秒でMQSを切れなかったのは悔しい。スタート、ターンの細かい練習をしていたのが今回の結果につながった。100m自由形とバタフライをメインにしていく。自由形はスタートからの浮き上がりを完璧にしたい。バタフライはドルフィンからの描き始めとターン後のドルフィンを強化したい。5月にMQSを狙い、国際ライセンスをとってパリをめざす」
パラスイマーに約束されたつぎの舞台は、5月21日から横浜でのジャパンパラ水泳競技大会である。国内最高峰の競技大会で、東京パラリンピック日本代表となる選手27名が選考されることになる。
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