コロナ禍に咲いた花。ニュー・エース誕生。山田美幸
女子50m背泳ぎ(S2)と50m自由形(S2)で日本新記録を樹立、100m自由形(S2)も好記録で泳いだ14歳の山田美幸。毎年各地で開催される全国障害者国体で同じクラスのシドニーパラリンピック金メダリスト加藤作子に出会い同じ重度障害の先輩の姿勢に学びながら育った。昨年のクラス分けでS3からより障害が重いS2クラスへ変更。背泳ぎで大きなチャンスを得た。
「久しぶりに自由形をとても楽しく泳げた。記録が早かったことも嬉しいが、気持ちよく泳げたことが一番嬉しい。水泳が好きで、特に潜るのが好き」と自由形の競技のあと話していた。
変わらない目標を見据える、鈴木孝幸
男子100mと50m自由形(S4)、50m平泳ぎ(SB3)に出場した鈴木孝幸は出場3レースで派遣標準記録を突破した。
「タイムがすごくよいわけではないが派遣標準が出てよかった。久しぶりにレースの感じを思い出そうと臨んだ。順調な練習ができ好タイムを想定していた。持久系のトレーニングを徹底的にしていたので、スプリント系のトレーニングをもう少しやっておけば、この大会に向けて良かったかなと思う。特別調整していたわけではないので仕方がない。 レース前の気持ちやウォームアップのチェックができた。アナウンスされてレースするというのを体験できた。2ヶ月後の選考会(5月・横浜)は今回より良いタイムで泳げたらと思う。
「5月に向けてはあまり調整せずいくのも考えられるし、一度合わせるというのも考えられるのでイギリスのコーチと相談して進めたい」
鈴木はアテネから4大会パラリンピック連続出場で金を含む5個のメダルを獲得した。13年よりイギリス(ニューカッスル)に住み練習している。18年に自由形に有利なクラスへの変更があった。19年の世界選手権で出場全5種目ずべてでメダル、うち銀メダル4。「東京ではこれらを金に変える」と、世界選手権からの目標へ向かう。コロナ禍の影響をうける5度目のパラリンピックをどう戦うのか。
2つの日本新を樹立した辻内彩野
女子100m自由形(S13)と50m自由形(S13)の両方で日本新を樹立、50mでは東京への派遣標準にも届いた辻内彩野(三菱商事)。
女子50m自由形では2年ぶりの日本新(=27秒83)と喜んだが、昨年11月に東京都マスターズ(健常者の大会で非公認)で自己ベスト27秒75を出していたという。「そこは出さなくてはならないタイムだと思う。(パラリンピックの)世界記録は26秒台、もっといろんなところを詰めて、狙えるようにしていきたい」と、決意を新たにした。
「水に入れない時期は、水から思いっきり離れた。水泳って独特な感覚とかを重要視する選手も多いが、ゼロに戻した感じで 、練習を再開した時に新しい泳ぎを、という考え方にシフトチェンジすることができた。水から離れ日頃できないトレーニングに力を入れた。その効果が出たのだろう」と辻内は話していた。
50m自由形(S9)常に高いところで挑み続ける、山田拓朗
ハイレベルの選手がひしめく激戦区・男子50m自由形(S9)で常に高いところで闘いつづける山田拓朗(NTTドコモ)は、今回、首の怪我により思ったレースができなかった。
「首の痛みがあり、ゴールタッチもかなり流れてしまったので、あまりいいレースではなかったが(コロナ禍で)試合の機会が少ないなかでの1本、全力で、レース形式で泳げたことはよかった」
「昨日はレース後にかなり首の痛みがあったが、今朝は思ったよりは悪化していなかった。メインの種目なので泳ぎたいという思いがあり、(タイムレースで)1本なので我慢して泳いだ。記録はよくなく、タッチも流れている時点で選考会では致命的なミスになる。レースの内容としてはよくなかったが、経験をしっかりとつなげたい」
初心に返って1からやり直した、中村智太郎
男子100m平泳ぎ(SB6)1分24秒45で日本新記録だが、クラス分けで有利となった後も自己ベストにこだわって泳ぐ。
「クラスの新記録より自己ベスト(1分21秒79)をめざして試合・練習を重ねている。コロナ期間中は健常者の大会に出場し1分22秒57で派遣標準タイムも切れた。レース感覚を絶やさないでいられた。1からやり直した。5月の選考会では派遣標準(=1分22秒91)を切っていきたい。東京では1分20秒台を切り表彰台に上がることが一番の目標」と話す。
「がんばれ成田!」が声援になる。無観客でも開催に感謝して
今大会で、女子50m背泳ぎ(S5)と50m自由形(S5)に出場した成田真由美(横浜サクラ)は泳ぎの感覚と予想タイムのズレを感じていた。
「昨日も今日も種目も泳ぎとタイムが会っていない。久しぶりのレースで何かくるっているかもしれない。ただ明らかに前半は飛ばしたほうがいいという課題が見えた。5月の選考会が最後なので今日があってよかった。今日が5月でなくてよかった。だからこそ、開催に感謝している」
日本代表監督・上垣匠氏は、
「コロナ禍での自国開催は、誰しも未経験の状況。アスリートとしてこういった経験は誰もしたことがなく、自国開催で日本選手はより大きなプレッシャーと不安を背負いながら向かい合っている。結果より現時点でのベストをつくすことに注力することを、選手たちに伝えている」と話していた。
| 1.知的 | 2.全盲 | 4.若手 | 5.パラの魅力伝える選手たち |