昨年3月に東京オリンピック・パラリンピックの延期が決まって1年。新型コロナウイルス感染症拡大に伴いすべての活動が自粛を余儀なくされるなかでスポーツの世界最高峰の祭典も開催の危機に晒されている。3月6〜7日、1年2ヶ月ぶりのWPS(世界パラ水泳)公認大会・日本パラ水泳選手権が観客のいない静岡県富士水泳場で開催された。
感染症対策により関係者だけでなく参加選手も制限された。通常より高い参加標準記録を適用した予選(=通信記録会)を突破した315人のパラスイマー(身体・知的・聴覚)が日本一を競い合った。1本勝負のタイムレース形式で行われ、17人により2つのアジア新記録含む23の日本新記録がもたらされた。
知的障害クラスが強さ発揮。アジア新1、日本新3樹立。
コロナ禍でも強さを見せたのは知的障害で、東海林大(三菱商事)が男子100mバタフライ(S14)でアジア新記録を樹立。他、3つの日本記録が3人により更新された。
ーーアジア記録を振り返って、東海林は、
「昨日の200m個人メドレーがすごくダメだったが、今日のバタフライはスタートから行けた。体の浮き沈みやタイムに悩んでいたが、(朝の)練習の時『これならいける』と感じた。タイミングを心がけて泳いで3年ぶりに新記録が出せてスッキリした。(専門の)200メートル個人メドレーのスキルアップのつもりで泳いだ」と話した。
ーーまた11月に宮城で開催された秋季記録会・男子100m平泳ぎ(S14)で世界記録(=自己ベスト)を更新した山口尚秀(四国ガス)は、今回、専門外の200m個人メドレーに挑戦、この種目で世界記録を持つ東海林に迫る2位と健闘を披露した。
「今大会での収穫は、専門外の種目においても、自身が(記録を)持っている平泳ぎの情熱を持って取り組むようにした。専門外の種目でもしっかり伸ばしていった方が、ほかの競技にも専念していける自分になれるのではないかと思う」
東海林と山口はすでに東京パラリンピック日本代表に内定している。
日本代表を率いる、谷口裕美子コーチ(日本知的障害者水泳連盟専務理事)は、「東海林は気持ちの切り替えができている。山口は競技歴が浅いので、泳げばベストタイムが出るところもあるが、水泳に前向きに真摯に取り組んでいる。彼らはやはり強いなと思う」とコメントした。
女子は、知的障害では“世界で戦える女子“が長年課題だったが、ここにきて大きな希望が生じてきた。井上舞美(イトマン大津)が100mバタフライと200m個人メドレー(SM14)両種目で日本記録を更新。
19年の世界選手権で日本代表となり期待される芹澤美希香(宮前ドルフィン)が100m平泳ぎで日本記録を更新した。東京パラリンピックでは知的障害のリレーもあるため井上、芹澤を含めたリレーチームの結成を目指し女子の強化に取り組んでいる。
「井上は一時体重も増えキレがなくなっていたが、自粛期間にじっくり取り組むことができ、今は上向きになっている。芹澤は選手として脂がのってきていて、泳ぐたびに日本記録を出す」と谷口氏は感想を口にし、女子リレーチームの可能性と地元クラブと連盟の連携で選手を育てていく方向性を示していた。
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