今季初のパラアルペン大会「2021ワールドパラアルペンスキー アジアカップ~菅平高原シリーズ~」が3月9日から13日まで、長野県・菅平高原パインビークスキー場で開催される。それに先立ち8日、オンラインで出場選手による記者会見が行われ、強化指定選手の森井大輝(トヨタ自動車)、村岡桃佳(トヨタ自動車)、狩野亮(マルハン)が出席した。
本大会は今季国内で初めて開催されるパラアルペンの大会であり、2022年3月開催の北京パラリンピック国別出場権を得るためのポイント獲得の対象でもある。今年2月にノルウェーで開催予定だった世界選手権、3月に北京で予定されていたワールドカップファイナルが中止・延期を余儀なくされたなか、来年の北京パラリンピック出場、さらに2026年ミラノ・コルティナで北京を上回る成長を見据えた実戦の場として貴重なレースとなる。
日本障害者スキー連盟の大日方邦子強化本部長はまず、チームJAPANの活動方針を説明。この冬は体調管理の徹底やPCR検査、オンラインを活用したミーティングやトレーニング、研修のほか、合宿や遠征は少人数で実施し、宿泊は個室、食事はビュッフェを回避するなどの感染防止策を行なってきた。また、海外遠征は自主参加の形とした。家族の状況や暮らす地域、健康リスクによって感染症に対する受け止めはそれぞれ違うとし、選手自身に判断を委ねた。
コロナ禍での海外遠征
会見では海外遠征に参加した者、しなかった者、それぞれの決断が語られた。平昌パラリンピック銀メダリストの森井はコロナ禍で海外大会には参加せず、国内で調整を行ってきた。「今年は国内の雪質が良く、菅平の状態も例年にない良い条件で滑ることができました」と手応え。「今大会では海外に行った選手とのレースで、自分がどのくらいの位置にいるのかを見極めたい。来季の本番に向けて調整する機会になれば」と意気込んだ。
一方、海外大会への参加を決断したのは、2010年バンクーバー、2014年ソチと2大会で金メダルを獲得の狩野だ。狩野は今年1月と2月にスイスとオーストリアで開催されたワールドカップに参加。もっとも力を入れる種目、滑降(ダウンヒル)に出場できる唯一の大会だったためだ。「緊急事態宣言の中で迷いましたが、北京に向けてポイントを獲得して、少しでも先に進めていくことが大切だと思いました」と決断の経緯を説明。
2週間の自主隔離は「これまで経験がなかったので正直難しかった。最低限のトレーニング器具は使っていましたが、身体は動かなくなっていくのを感じた。シーズンを通して戦う中で、雪上に上がれないのはかなり難しいと思う」と振り返った。だが、得たものも多かった。「最低限ポイントを得ることができたし、オランダやノルウェーの選手に勝てたということは収穫。海外選手に通用しない部分もあったので、もう一段上がっていかないといけないと再確認できました」と手応えを語った。
二刀流の村岡、2年ぶり雪上へ
2018年の平昌パラリンピックでは出場全5種目でメダルを獲得した村岡。東京パラリンピックではパラ陸上で出場を目指す、夏季・冬季の二刀流選手だ。陸上のトレーニングに専念するため2019年3月からスキー競技を休止。今大会は2年ぶりのレースとなる。「陸上中心の生活になっていましたが、東京大会の延期があり、本当の意味で二刀流をしなくてはいけなくなりました。主にスケジュールの調整が大変で、悩む部分もありました」と本音を語る。
スキーの練習は昨年の秋から。「個人合宿では自分でも驚くほど感覚が鈍っていたのですが、徐々に調子を戻すことができて、いい感覚を得て合宿を終えることができました」と村岡。昨年12月末の国内合宿では「自分のホーム・菅平で練習をしたときに、スキーが楽しいと思えるようになった。陸上をやっていたことでスキーに対する意識が新鮮なものになり、貪欲さが生まれました」と相乗効果を口にした。今大会の翌週には陸上の大会が続き、4月にはまた雪上レースへ。多忙な村岡だが、「2年ぶりのレースに緊張していますが、自分らしく滑りたいと思っています」と笑顔を浮かべた。
このほか、立位のパラリンピックメダリスト、東海将彦(トレンドマイクロ)が北京へ向けほぼ3大会ぶりのパラリンピック復帰を目指し国内練習、装具の調整を行なっている。「今大会と4月の野沢温泉での大会で選考に向けたアピールになる結果を残したい」とパラフォト記者へ連絡があった。
今季初のパラアルペン大会「2021ワールドパラアルペンスキー アジアカップ~菅平高原シリーズ~」は3月9日から。知的障害カテゴリーのレースも同時開催される。
(編集・校正 佐々木延江)