やまびこスケートの森(長野県岡谷市)で開かれていた、パラアイスホッケーの「国内クラブチーム選手権大会」は2日目・12月6日の決勝戦でフィナーレを迎えた。長野サンダーバーズが東京アイスバーンズを5-1で下し、大会3連覇を飾った。
第1ピリオド、平昌パラリンピックの日本代表で43歳の石井英明(東京アイスバーンズ)が先制すると、その1分後に48歳の熊谷昌治(長野サンダーバーズ)が同点ゴール。その後は終始長野のペースとなり、終わってみれば熊谷が5得点中3ゴール。キャプテンの50歳、吉川守(長野サンダーバーズ)は5得点のすべてをアシストし、ベストプレーヤーに選出された。日本代表経験のある、ベテランたちの強さが光る決勝となった。
50歳のベテラン・吉川守が強さを維持する秘密
今大会にスーパーバイザーとして関わった信田憲司・日本代表監督は、長野サンダーバーズの強さについて、「非常にパスワークが素晴らしい。クロスしながらパスを交換したりと動きが良い」と評価。また、「吉川のフェイスオフで主導権を握っていた」とキャプテンの存在をたたえていた。
フェイスオフとは、ピリオドの開始やプレーの再開時に、向かい合った選手の間に審判がパックを落とし、それをスティックで取り合うプレーのこと。吉川は自身のフェイスオフでの強さについて、「一瞬にかける意気込みです。相手のクセをしっかり飲み込んで、次のフェイスオフでの修正につなげています」。技術と判断力は、経験による賜物だ。
吉川の集中力の秘訣は、ゴルフや競馬の試合を見ることだ。例えばゴルフのパターのシーンでは最後の一打にどう集中しているのか、競馬では最後の一伸びをどうするのか。パラアイスホッケーでの1プレーの精度につながると考え、研究しているという。
パラアイスホッケーに若手選手が増えていることについては、「彼らにはスピードや持久力がある。スピードのある展開をしないと、世界に置いていかれる。速さがあれば自然と技術もついてくるので、まずは”前に進む”というところをやってほしい」と期待を寄せた。
ベテランと次世代の融合が日本の進化へ
準優勝となった東京アイスバーンズのキャプテン、石川雄大は21歳。競技歴3年でチームのけん引役を任されている。「吉川さんや熊谷さんの立ち上がりを早い段階で摘み取りたかったが、プレッシャーをかけきれなかった」と悔しさをにじませた。
パラアイスホッケーは「次世代の育成」が長年課題として挙げられてきており、若手選手や日本スポーツ協会によるアスリート発掘事業「ジャパン・ライジング・スター・プロジェクト」(J-STARプロジェクト)による選手たちも今大会に多く参加した。信田監督も「競技人口が増えてきて選手同士が競い合っているというのは大きな進歩。合宿をしていても新しい選手が”いやな”プレーをするなど、ベテランの刺激にもなっている」とコメント。
ベテランの「技術」と次世代の「スピード」。その両方が融合すれば、日本代表は新しい強さを手に入れられそうだ。
<参考>
・試合結果など/日本パラアイスホッケー協会
http://sledgejapan.org/
・ジャパン・ライジング・スター・プロジェクト(J-STARプロジェクト)
https://www.j-star.info/
(校正・佐々木延江 写真・秋冨哲生)