11月28日、第4回全日本パラ馬術大会(主催・日本障がい者馬術協会)2日目、インディビジュアルテスト(規定演技課目)が行われた。
コロナ禍で久しぶりの大会となり、硬さが見られた初日に比べ、選手&馬は全般的にリラックスした演技だった。
最初に出場したグレードⅢの稲葉将(静岡乗馬クラブ/シンプレクス)&カサノバは、馬が風に揺れた旗に驚いて演技を中断するというアクシデントに見舞われた。しかし、稲葉が馬を落ち着かせて演技を再開。65.069%を出して、この一年余りの自馬カサノバとの練習の成果や信頼関係をうかがわせた。
一方、後半出場したピエノは、前日のチームテストから約2%アップの65.834%を出した。カサノバは、29日のフリースタイルテスト(自由演技課目)に進出する。
「カサノバが演技中に暴れてしまったのは初めてで、自分もテンパッてしまったが、逆に本番であってはならないことを経験できてよかった。大きな大会ではどうしても緊張してしまい、それが馬にも伝わる。いつもと違うメンタルでも、いかに自分のパフォーマンスをするかが今後の課題。また、東京パラで世界の選手と戦うために、70%台(メダル獲得レベル)を出すことが目標だったが全然届かなくてがっかりしている。まだやらなければならないことがたくさんある」
と稲葉。
最重度障害のパラリンピアン鎮守美奈
最も障害が重いグレードⅠに出場した鎮守美奈(明石乗馬協会/コカ・コーラボトラーズジャパン ベネフィット)は、2004年アテネ・パラリンピック代表の大ベテラン。グレードⅠは常歩(なみあし)のみだが、先天性の脳性まひで全身にまひがある鎮守が馬に指示を出すのは簡単ではない。けれども卓越した技術によって、ともに出場したジアーナに同じリズムで正確な図形を描くように歩かせ、66.488%と前日に引き続き高得点を出した。
高嶋活士が復活!
復活のきざしが見えたのは、グレードⅣの高嶋活士(ドレッサージュ・ステーブル・テルイ/コカ・コーラボトラーズジャパン ベネフィット)&ケネディ。落馬事故で引退した元JRA騎手で、2018年秋の大会では66%以上出すなど飛び抜けていたが、昨年は不調で苦しんだ。しかし今大会ではケネディの動きがなめらかで、今日も演技後半の駆歩(かけあし)が大きく躍動感があり、65.284%を挙げた。
「60%以上、よければ65%以上取らなければ、と思っていたので、そこにいけてよかった。人馬ともにケガなくできた」
と競技後、笑顔を見せた高嶋。
「本番会場での大会は、本当にありがたい経験。ケネディも初めての場所に多少慣らすことができた。東京パラに向けて、集中して練習し、馬と人の動きの質を上げていく」と意気込みを語った。
日本障がい者乗馬協会の三木則夫パラ馬術強化本部長によると、東京パラリンピック代表4人馬は、20年度の強化選手5人(鎮守美奈、グレードⅡの宮路満英〈リファイン・エクインアカデミー〉・吉越奏詞〈四街道グリーンヒル乗馬クラブ〉、稲葉、高嶋)の中から成績順で選ばれる可能性が高いという。
最終的な発表は来年4月頃の予定。
「新型コロナウイルスの状況により、今後の競技会や強化選手のオランダ合宿の見通しも立っていない。しかし、オランダには世界と戦えるレベルの、各選手に合わせた馬が待機している。日本選手はまだ海外選手より少し後ろをいっているが、馬がカバーしてくれる部分もある。本番までに、いかに選手を馬に近づけていくかが課題だ」
大会最終日となる29日のフリースタイルテストには、稲葉、鎮守、高嶋のほかに7人馬が出場。それぞれ経路と振り付けの音楽に工夫をこらしている。どんなパフォーマンスを見せてくれるか楽しみだ。
<競技結果
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パラ馬術特設サイト/競技のページ
https://all-japan-para-equestrian2020.jimdofree.com/%E7%AB%B6%E6%8A%80%E3%81%AE%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8/
<パラ馬術・フリースタイル参考記事>
・トライオン馬術世界選手権・オランダにパラ馬術3冠人馬2組誕生(パラフォト記事・田中綾子)
https://www.paraphoto.org/?p=18687&
・トライオン馬術世界選手権・パラ馬術、中村公子&D Jazz Fが日本史上初メダル!(パラフォト記事・田中綾子)
https://www.paraphoto.org/?p=18647
(編集・佐々木延江 取材協力・田中綾子)