パラリンピックの開催が「共生社会の実現」の契機となることが期待される今年。旭川医科大学(北海道旭川市)で全国8ブロックの障がい者スポーツ指導員が集まり、2月15〜16日・週末の2日間、「第15回障がい者スポーツ指導者全国研修会(JPSA;日本障がい者スポーツ協会主催)」が開催された。
障がい者スポーツ指導員とは、スポーツ指導者(コーチ、トレーナー)や、スポーツ医師、スポーツ学生のほか、障害者のスポーツ(以下パラスポーツ)に関心ある人々が習得するJPSAの資格認定制度で、上級・中級・初級の習得ランクがある。地域でのパラスポーツ大会やパラスポーツの街づくりなど、現場を担う人々でもあり、共生社会の実現には欠かせない存在。今年の全国研修会では、そんな障がい者スポーツ指導員の資格をもつ人約140名(21〜76歳の平均年齢50歳)を中心に、国や道の自治体のオリパラ担当職員なども含め約200名がパラスポーツの指導の向上にむけたプログラムに参加した。
開講式で、西川将人市長は、「旭川市は、冬はスキー、スケート、障害者のスポーツも盛んで、パラリンピックに出場した選手、メダリストもいます。数年前はIPC(国際パラリンピック委員会)のクロスカントリースキー・ワールドカップも開催しました。車いすラグビーの日本代表合宿もさせていただいています。地域の皆さんがパラスポーツに親しむこの旭川で、障がい者スポーツ指導者全国研修会ができることが嬉しい」と挨拶した。
障がい者スポーツからみんなのスポーツへ
シンポジウムでは、「2020年・そして、その先を見据えて〜障がい者スポーツからみんなのスポーツへ〜」をテーマに、「インクルージョンとは何か?」などを、共生社会の実現にむけあらためて確認したほか、開催地・旭川地域での取り組みや連携について、パラスポーツ指導の現場の立場から語られた。質疑応答はリラックスしたディスカッションとなった。
分科会は、障害者とスポーツ全般に携わる人にとって関心の高いテーマで行われた。第6分科会を担当した講師の泉谷昌洋さん(日本障害者スキー連盟)は、「シットスキー」「ローラーシット」で地元の人々を募って体験会を行い、全国からの指導者を交えた旭川の障害のある人ない人との交流の現場を再現。旭川らしさも体験してもらうため、雪の屋外での体験にもこだわって進めた。各地からのパラスポーツ指導者と地元市民との障害のあるなしを超えた交流が図られた。
「さまざまな障害があるので、医師や理学療法士、保護者などと連携していくことが大切だと思います。今回は自分も皆さんがシットスキーやローラーをやる時、どこが難しいのかわかりました。子どもと大人では苦手が違うとも。例えば、子供だとやりやすいタイプが、大人だとコツが掴みづらく、子供だと難しいタイプの方がやりやすかったり・・。
また、参加された方に聞いてなるほどと思ったことに、ローラーシットは、片麻痺の子どもが身体全体を使って楽しめる用具だそうです。そんなことを聞いて、ちょっとワクワクしました!」と、体験会を主催した感想を語っていた。
市民発のパラスポーツ・ムーブメント。次は神戸で!
日程の合間には懇親会が開催され、集まった研修会参加者、運営スタッフ、地元の体験参加者、メディアなど、パラスポーツに関心ある人々全員が情報交換した。また、旭川のお酒や食べものに加え、ユニークなコミュニティづくりに寄与するパラスポーツ応援団長「ニッポンマン」の登場や応援グッズの缶バッジが配られた。この2日間で、旭川地域のユーモア溢れるパラスポーツ・ムーブメントに触れることができた。
障がい者スポーツ指導者全国研修会は、毎年1回、ブロックの地域で持ち回りで開催されており、次回は12月、神戸市(しあわせの村)で開催される予定。
第6分科会で紹介された「シットスキー」「ローラーシット」プロモーション映像
提供:999AC(旭川を中心に北海道で活動する「スリーナイン」アスリートクラブ。高等養護学校の卒業生や在学生、特別支援学校と連携しながら、陸上競技とクロスカントリースキーを中心に活動している) BGM「僕の白い世界」歌う応援隊ヒトミリリィ:作詞・あすか!