自国開催でのパラリンピックという特別なシーズンの始まりとなる「日本パラ水泳選手権大会」が11月25日、2日間の日程を終えた。
今年は520名(身体障害410名、知的障害110名)のスイマーがエントリーしてアジア記録1、日本記録11、大会記録67が更新された。
9月にはロンドンでのパラ水泳世界選手権、続いて行われたジャパンパラ水泳から2ヶ月。
すでに東京パラリンピックの出場が内定している選手、そして、来年3月の日本代表選考会(=静岡)にむけて厳しい課題に向き合い練習するトップスイマーらは、東京への秒読み態勢にはいった。
ブラインド女子
初日に安定した練習の成果を見せたのは、女子50mバタフライS13(弱視)の辻内彩野(三菱商事)。30秒93のアジア記録を樹立した。
最終日の24日、女子50m自由形S11(全盲)石浦智美が31秒36の自己ベスト、日本新記録を樹立した。この記録は昨年のMQS(派遣標準記録)を大きく上回っている。
「スタートの強化をし、世界選手権よりも、ジャパンパラの時よりも精度をあげることができた。タイムも30秒に近く、よかった」と石浦。
石浦は、ロンドンパラリンピック(2012年)金メダリストの秋山里奈と同級生。緑内障の治療をしながら競技を続けてきた。リオ後の2017年、伊藤忠丸紅鉄鋼に所属を得て練習環境の支援を得るようになるまでは一人でのやりくりに限界があったという。ようやく十分な取り組みができるようになり、東京パラでの金メダルをめざしている。
来年3月の代表選考会にむけ、石浦は「残り少ない大会の機会に自己ベストを出したい。(50m自由形で)できれば30秒台をねらっていきたい。世界記録は今30秒2なので、彼女らのなかには30秒切りがあるはず」と、話した。
ブラインド男子
また、木村敬一(東京ガス)、富田宇宙(日体大大学院)ら、ロンドンの世界選手権でワ・ンツーフィニッシュをきめた男子100mバタフライS11(全盲)は、僅差で木村が1位、「そろそろ木村くんを抜きたい」と言っていた富田宇宙は2位。会場は二人のレースに注目が注がれていた。
記者たちの質問に木村は、「ちょっと力が入ってしまっていいタイムではないが、レベルの高い試合ができていると思う。国内で見せることができたことはよかった」と話した。
鈴木孝幸
身体障害では鈴木孝幸(ゴールドウィン)が男子50m背泳ぎS4(四肢欠損)で日本記録を更新。
「いままでなかなか取り組めていなかったウエイトトレーニングの効果が影響している。泳ぎのテクニックの変化とうまく噛み合っていいタイムが出せた」と話していた。
山田拓朗
男子50m自由形S9(上肢欠損)で世界でしのぎを削る山田拓朗(NTTドコモ)は思うような結果はだせなかった。
ーー泳ぎの感想は?
「50mトータルのタイムでは合わせていなかった。25mの通過で11秒7くらいのベストラップを出すつもりだった。トレーニングがしっかりできている割には、試合での結果がよくなかった。感覚は徐々に変わってきているので、なんとか3月に合わせたい」
ーーもうやり尽くしている感はないか?
「泳ぎの部分で劇的な変化はないと思いますが、スタートは得意ではない。そこに取り組むことでまだまだタイムを縮めていけると思います」
若手組は・・
ジャパンパラで自己ベスト、東京へのMQSを切りを達成した男子100mバタフライS9の久保大樹(KBSクボタ)は、初日の男子50mバタフライS9で28秒台をだし山田拓朗を僅差で制して1位。2日目の100mでは良いタイムは出なかったが、しっかりと目標を見つめていた。
若手女子は、リオパラリンピックに出場した一ノ瀬メイ、池あいり、小池さくらなどの姿はなかった。
知的障害クラス
知的障害は、すでに東京パラ出場が内定している東海林大(三菱商事)が男子200m個人メドレーで、山口尚秀(瀬戸内温泉スイミング)が男子100m平泳ぎともに首位を守った。
また、東京パラリンピックに向けた競技スタッフの変更があり、これまでの峰村史世氏に代わり、上垣匠氏がヘッドコーチを務めることになった。
峰村氏は、若手選手の2024パリパラリンピックへの強化を担う事業をメインに担当、コーチとして引き続き代表チームの指導にもあたる。