5大会連続のパラリンピック金メダルが近づきそうだ。現在開催中の「ドバイ2019世界パラ陸上競技選手権大会」は大会2日目の11月8日(金)、男子100mT54の決勝が行われ、レオ=ペッカ・タハティ(TAH TI Leo Pekka/T54・フィンランド)が自身の記録を守り優勝。2004年アテネ大会からこの種目でパラリンピック4大会連続の金メダルを手にする王者は、この日も貫禄の強さを見せた。
27人がエントリーした激戦区の車いすT54クラス。レオは3週間前にレーサー(競技用車いす)を新調し、今大会に臨んだ。「車いすの新しさにまだ少し慣れていない」としたものの、前日に行われた準決勝では、シーズンベストとなる13秒87をマーク。決勝では13秒97と自己ベストには届かなかったものの、「ハッピーです」と納得の表情を見せた。
日本人選手にエール
この種目には、日本から生馬知季、西勇輝が出場したが、決勝進出はならなかった。日本選手の印象はどうだろうか。「二人の選手には多くのポテンシャルがある。彼らはまだ若いですよね?今シーズンもより能力を高めていると感じました。来年に向けてさらに強くなるために、いま意欲に満ちているはず。彼らが次のステップに上って、ますます面白いレースになることを願っています」とライバルにエールを送った。
車いすのウサイン・ボルトになりたい
今年初め、レオはテレビ局のインタビューで「東京パラリンピックが最後の大会になるかもしれない」と引退を示唆していた。今の目標は、もはやメダル獲得よりも「過去の自分を越える」ことのようだ。その点で、長年陸上界を牽引した元陸上選手ウサイン・ボルトには刺激を受けていたという。「トラックに立てば自分を助けてくれるのは自分しかいない。ボルトのレースにはいつも刺激を受けていました。私も車いすのウサイン・ボルトになりたいですね」と笑顔を浮かべた。
夢はロンドンパラリンピックで自身が出した「世界記録13秒63を超えるタイムを出すこと」。東京に向けては「改善すべきところがまだまだあります」と向上心を見せる。自身のキャリアはいよいよ集大成へ。王者が目指すのは、己への勝利だ。
(校正・佐々木延江、写真協力・小川和行)