９月２１日から行われた「ジャパンパラ水泳競技大会」が２３日、閉幕。約４８０名のスイマーが熱戦を繰り広げた横浜国際プールには、３日間で５６２９人の観客が訪れた。
女子100mバタフライS9クラスは大接戦だった。リオパラリンピック女子100mバタフライ銀メダリストのサライ・ガスコン モレーノ（スペイン）が大会新記録の1分10秒90で優勝。同レースの一ノ瀬メイは日本新記録の1分11秒20を出したものの、２位で優勝には届かなかった。
レース後、一ノ瀬は「この種目は自己ベストを出したいと思っていたので良かったです。ただ、どうせなら勝ちたかった。今日は前半からスピードを出していって、後半どこまで粘れるかと思いながらやっていました。やっぱり強かったですね」と自身の泳ぎを振り返った。
国際大会でレースを共にする機会が多いライバル、サライにはいつも勇気をもらうという一ノ瀬。「サライ選手は私より身長が特段高いわけではない。決して有利ではないと思いますが、それでも活躍している姿を見ることで、自分もまだまだ出来ると思わせてくれる。感謝しています」と語った。
実はインスタ仲間でもある選手たち。サライは「一ノ瀬選手とはインスタグラムで連絡を取っている。お互いに励ましあって、いい関係です。日本の選手は、周りに敬意を持って接してくれる。リスペクトがありますね」と日本選手の印象を語った。リオ女子100m背泳ぎ銀メダリストで同レースでは３着だったヌリア・マルケス ソト（スペイン）は「一ノ瀬選手とは、国際大会で一緒になるので、会えるとうれしい。素晴らしい選手」と語った。
世界選手権の代表漏れを経験し、一時はモチベーションが下がったという一ノ瀬。「ロンドンなんで呼ばれなかったのかなって。でも今大会でいろんな人に会って、たくさん声をかけてもらって、皆さんの期待に応えたいと思った３日間でした。これからは自分がコントロールできるものに集中するということ。勉強になるシーズンでした」と、胸の内を明かした。悔しさで心を強くした先に、2020年への道筋が見えるはずだ。
主なレースの結果
女子50m自由形 決勝
＜S9クラス＞
1 Gascon Moreno, Sarai （スペイン） 29秒41
2 Marques Soto, Nuria （スペイン）30秒83
3森下 友紀 （パナソニック）31秒49
4宇津木 美都 （京都文教高校） 32秒29
5福田 果音 （アクアダッシュ）32秒86
6石原 万鈴 （中京大中京高校） 34秒71
7中道 穂香 （早稲田大学）36秒00
8前田 恵麻 （ブレイヴ福井）36秒20
＜S14クラス＞
1 Alonso Morales, Michelle （スペイン） 28秒73
2 福井 香澄 （滋賀友泳会）29秒30
3 芹澤 美希香 （宮前ドルフィン）29秒61
4 北野 安美紗 （ル・登美ヶ丘 ）30秒46
5 白石 美祈 （個人 山口県) 30秒95
6 荒井 由真 （香川育成会） 31秒15
7 沼田 千奈津 （エクセレント） 32秒01
8 小川 春菜 （トヨタループス） 33秒05
男子50m自由形 決勝
＜S9クラス＞
1 Mari Alcaraz, Jose Antonio （スペイン）26秒36
2 山田 拓朗 （NTTドコモ） 26秒40
3 岡島 貫太 （日本福祉大付）28秒78
4 保田 星願 （個人 東京都)29秒33
5 中村 俊介 （個人 東京都)29秒81
6 小野 奏人 （個人 鹿児島県)30秒93
7 Tandavong, Lamphone （ラオス） 32秒38
8 牧野 叶侑 （アクアダッシュ）35秒97
女子100mバタフライ 決勝
＜S9クラス＞
1 Gascon Moreno, Sarai（スペイン） 1分10秒90
2 一ノ瀬 メイ （近畿大学） 1分11秒20
3 Marques Soto, Nuria （スペイン） 1分12秒09
4 森下 友紀 （パナソニック）1分18秒93
5 宇津木 美都 （京都文教高校）1分22秒97
6 前田 恵麻 （ブレイヴ福井）1分28秒26
7 浦田 愛美 （三輪田学園高校）1分29秒19
8 石原 万鈴 （中京大中京高校）1分35秒22
男子100mバタフライ 決勝
＜S9クラス＞
1 Mari Alcaraz, Jose Antonio （スペイン） 1分02秒40
2 久保 大樹 （KBSクボタ） 1分02秒86
3 岡島 貫太 （日本福祉大付）1分09秒91
4 保田 星願 （個人 東京都) 1分15秒39
（校正・佐々木延江）
Author: 丸山 裕理
東京都出身。フォトジャーナリスト、フリーアナウンサー。初級障がい者スポーツ指導員。２０１５年ブラインドサッカーの観戦をきっかけにパラスポーツの魅力に触れる。車いすバスケットボール、ウィルチェアラグビー、パラ陸上、ボッチャ、ゴールボールなどを取材。慶應義塾大学大学院で「オリンピック・レガシー」をテーマに研究、長野オリンピック当時の小中学校で行われたオリンピック教育のその後を調査し、継続的な取り組みが重要と知る。夢は２０２０東京パラリンピックで選手の活躍を伝え、その後に繋がる教育の機会をつくること。
