7月20日から2日間にかけて、IPC公認・ジャパンパラ水泳競技大会が大阪なみはやドームで行なわれ、身体障害(肢体不自由、視覚障害)、知的障害・聴覚障害の合計252人(男子179、女子73)の選手が出場した。
今回のレースは、10月に開催されるアジアパラ(韓国/仁川)の代表選考を兼ねていた。
大会の結果、7月24日、以下27名の日本代推薦選手が発表された。正式決定は日本障がい者スポーツ協会により8月に行なわれる。
木村敬一、鈴木孝幸、小山恭輔、山田拓朗、江島大佑、生長奈緒美、小野智華子、池愛里、一ノ瀬メイ、笠本 明里、河村有香、石浦智美、佐藤健太、鎌田美希、森下友紀、間ノ瀬俊輔、梶原紀子、中村智太郎、北村友里、木村潤平、吉田侑生、水上真衣、藤原光里、西田杏、長野凌生、村竹陽太、冨樫航太郎
<昨年からの流れ>
昨年9月に東京オリンピック・パラリンピック開催がきまった後、10月、クアラルンプール(マレーシア)でアジアユースパラゲームズが行なわれたことは、2020年に向けた日本パラリンピック全体にとって好機だった。水泳では多くの若き日本代表が誕生し、アジアトップの成績を納めることができた。11月の日本選手権、今年3月の静岡記録会を経て、4月にイギリス、ドイツでのオープン大会を転戦したユース組選手もいる。ドイツ大会では、ベテラン鈴木孝幸(S5・右腕両脚欠損/GOLDWIN)と次世代のエース・木村敬一(S11・全盲/東京ガス)がそれぞれ世界新記録を樹立、ロンドンから2020東京へと練習を続ける選手の活躍が報じられた。
2つのアジア新記録樹立!
今大会で、鎌田美希(S8・両足切断/大阪シーホース)と池愛里(S10・左ハイ骨神経麻痺/峰村PSS東京)の2人の女子高校生がアジア新記録を樹立した。世界記録の更新はなかった。
全般的に、昨年クアラルンプールでのアジアユースパラゲームズに出場した若い世代の成長が確認できた。またロンドンパラリンピックから復帰した知的障害クラス(S14)からも大会記録が更新され、多くの選手がリオを目指していた。
女子高校生パワーに期待
身長177センチの池愛里は、昨年から日本代表選手指導経験の長い峰村史世コーチが、東京パラリンピック選手育成を掲げたチームに所属して練習に励んでいる。今大会では、出場レースごとに自己ベストを更新した。峰村コーチは「よく食べ、良く寝ています!」と、天真爛漫な池の性格と水泳ライフをまずは見守り、力強く支えていく構えだ。
400m自由形のアジア記録をもつ鎌田美希は、今年4月のドイツオープンで自己ベストになる5分40秒台を出している。今大会は5分44秒32でアジア新記録樹立だが、自己ベストを更新できず悔しさがのこった。「タイムは更新できなかったけど、環境を変え、マンツーマンのコーチとの練習の成果が出て来た」と話してくれた。
クアラルンプールで日本代表キャプテンだった一ノ瀬メイ(S9・右前腕欠損/京都SC)は、イギリス、ドイツ遠征では奮わなかったというが、今大会で2つの自己ベスト・大会記録、日本記録を更新した。高校3年の一ノ瀬は「地元で練習したい!」と、関西での進学の意志をきめている。
ベテラン組、リオへ照準あわせて順調
北京・ロンドンで2大会パラリンピック日本代表キャプテンを務めた鈴木孝幸はイギリスに練習拠点を移し、強豪国の選手とともに練習に励んでいる。ほか、20代中半を迎えている山田拓朗(S9・左腕欠損/NTTドコモ)、江島大佑(S7・左半身麻痺/シグマクシス)ら主力組も、ロンドン後それぞれの目標で取り組んでいる。
北京から代表入りした木村敬一、小山恭輔(S6・右半身麻痺/コロプラスト)は、江島、山田、生長奈緒美(S12/大阪およごう会)とともに8月にアメリカで行なわれるパンパシフィック・パラ水泳大会に出場する。
木村潤平(S6・両下肢麻痺/NTT東日本)は、2016年リオパラリンピックで正式種目になったトライアスロンへの挑戦へも意欲をみせ、2種目での代表いりを目指している。先日、木村はトライアスロンで強化指定された。
また、ロンドン後、国際舞台からの引退宣言していた中村智太郎(SB7・両腕欠損/パルポート彩の台)が復帰。アジアパラを新たな目標としていた。
2020にむけて
大阪で17回目を迎えたジャパンパラ水泳競技大会も来年より東京辰巳で開催の予定だ。辰巳競泳プールは、2009年アジアユースパラゲームズの水泳会場として使用されたなじみのあるプールでもある。国際大会に適したサブプールをもち、泳ぎやすくタイムも出しやすいという。6年後のオリンピック・パラリンピックでは改装して競技が開催される予定となっている。
若い選手もいる。日本障がい者スポーツ協会は発掘事業をスタートさせ、意識や設備は確実に2020に向いているが「スタッフが足りない」と、長くこの大会や日本代表チームの運営にかかわる前田康弘さんや猪飼聡さんは話していた。世界と闘える競技は「一日にしてならず」である。これから6年でどう取り組めるのか。