8月17日(土)、ITU(国際トライアスロン連合)主催のパラトライアスロンワールドカップが、お台場海浜公園(東京都港区)で開催され、来年のパラリンピック・トライアスロンを目指す障害のある選手70名が世界から集まり出場した。

この大会は来年のオリンピック・パラリンピックのテストイベントとして重要な実験を兼ねて行われており、15日(木)からオリンピックの女子、16日(金)男子によるテストレースが行われ、3日目のイベントとして開催されたが、当日朝、スイムコースの水質の悪化を理由に、スイムが中止となり、レースはランとバイクによるデュアスロン《第1ラン2.5km(2周回)、バイク20km(4周回)、ラン5km(4周回)》となった。

炎天下のレース、最も早いタイムでフィニッシュしたのは、男子では世界ランキング1位、カナダのステファン・ダニエル(PTS5・上肢障害)、女子は、日本のレジェンド・土田和歌子(PTWC)がコースを間違えた世界ランク1位のエミリー・タップ(オーストラリア)を大きく引き離して優勝した。
「東京はすごくいいコース。(今朝の)突然のコース変更もうまく切り替えられました。スイムもランも準備してきたので、次は全部やりたい。(日本の)佐藤圭一は努力家で、レースのたびに準備をすごくしている。すごく刺激を受けている」と、ダニエル。

「アイスベストを直前まで着用したり、ローディングをしたりと、いつもよりも慎重でした。東京出身なので、ここで、最高のパフォーマンスを発揮できる選手になれるよう、結果を残していきたい」と土田。
女王アリサ・シーリーがリタイア
立位のクラスで最も障害の重い大腿切断などを含むPTS2は、絶対女王、アリサ・シーリー(USA)がバイクを終えたところでリタイヤ。コース変更の影響が大きかったようだ。
「暑さのための準備はしてきたのですが、バイクを終えたあとリタイアを決めました」
日本特有の湿度の高さや高温だけではなく、コース変更、スタート順序の変更など相次いでしまったことが、やる気満々で自分のレースをイメージしこの日を迎えただけに、厳しかったようだ。

また、東京オリンピック・パラリンピック招致の功労者・谷真海(PTS4)は、東京という愛着の大きいコースでの模範となる走りを見せてくれ、2位で表彰を受けた。
「2020年への思いは大きく、東京大会じゃなかったら(パラリンピックを)目指してないと思う。東京で練習できていることは、日本人として大きなアドバンテージなので、それを生かしていきたいです」と話していた。
「水質悪化でコースを変更」どう捉えるか

レース後の記者会見にのぞんだ、ITUスポーツディレクター・ゲルゲイ・マーカス氏と、JTU(日本トライアスロン連合)大塚真一郎専務理事は「予想外の水質汚染によりスイムが用意できなかったことは選手に申し訳ない。テストとしては、本番にも起こりうることであり、フォーマットにしたがってデュアスロンができたことはよかった」と見解を述べた。

台風の影響を受けた汚水が湾内に流れ込み、潮の状況も重なって大腸菌の量が増えたため、大会実行委員会は「競技マニュアルに従い対応した」という。
しかし、会場の汚染した海水よる選手の健康が懸念され、メディアから質疑が相次ぎ、テストイベントに関する記者会見の質疑の全てが、スイムコースの水質汚染問題一色に染まった。
大塚氏は「トライアスロンは自然を相手にしている。様々な自然条件に応じた変更のマニュアルがある。何らかの事象が起きた場合は、世界選手権でもオリンピックでもマニュアルに従い行うことが競技団体の使命であると思っています。また、大会は炎天下の中で行われたが、大きな疲れや救護を要するものが出たが、病院に搬送されるなどのことはなく、全員が無事にレースを終えることができた」と話し、来年の東京オリンピック・パラリンピックを前に会場変更を行うことは考えていないと述べた。
(取材協力:丸山裕理・久下真以子 写真:秋冨哲生・佐々木理佐)