関連カテゴリ: 取材者の視点, 夏季競技, 神奈川, 車いすラグビー — 公開: 2019年8月11日 at 11:05 PM — 更新: 2019年8月30日 at 9:38 AM

激動と進化の車いすラグビー界。沖縄と福岡、日本選手権への出場権を獲得!

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ラグビーW杯の開幕を来月に控えるなか、車いすラグビーも熱を帯びている。日本選手権への出場をかけた「第21回 日本選手権大会 予選リーグC」が8月10〜12日の2日間、横浜で開催され、Okinawa HurricanesとFukuoka DANDELIONが本戦への出場権を獲得。別名「マーダーボール(殺人球技)」とも呼ばれる激しいタックルや、海外選手のプレー、兄弟対決など、見どころ満載だった。

日本選手権の予選リーグは3回に分けて行われ、12月の日本選手権への本選出場権をめぐり、全国から9チームが参加。これまで千葉県君津市、北海道中川郡で行われ、最終戦は神奈川県横浜市での開催。横浜大会には、沖縄のOkinawa Hurricanes(以下、沖縄)、埼玉のAXE(以下、アックス)、福岡のFukuoka DANDELION(以下、福岡)の3チームが出場し、2日間の熱戦を繰り広げた。

カナダの助っ人が躍動

注目は、日本選手権3連覇中の絶対王者・沖縄。今年はカナダから、リオパラリンピックでカナダ代表も務めたザック・マデル(クラス 3.5)が加わり、世界レベルのスピードと突破力を見せつけた。1日目の試合では、序盤こそマークに阻まれ接戦を繰り広げるも、後半の3、4ピリオドで持ち前の強いフィジカルを発揮。2日間の4試合を全勝で終えた。

国内試合初出場となったザックは「仲間と一緒にプレーできてよかった。ローポインターが動いてくれて、僕をサポートしてくれた」と試合を振り返る。日本チームでの練習については「日本語が上手くないから、ボディランゲージで意思疎通を図ることもある。こういう環境はカナダとは全く違うし、新鮮。新しい経験になる」と語った。

バリエーション抱負なアックス

アックスは、今年RIZE CHIBAから宮野竜一(クラス 2.0)を加え、チームバランスを整えた。様々な持ち点の選手が揃い、得点源の峰島靖(クラス 3.5)や羽賀理之(クラス 2.0)を中心に、様々なラインが作れるのが特徴。強豪・沖縄にも最後まで接戦を繰り広げた。

新加入の宮野は「移籍して初めての公式戦。もう少しやれるのかなと思ったけど、これが結果ですね。海外の選手と戦えるのは新鮮です。貴重な経験」と悔しさを滲ませた。峰島は「沖縄のザック選手は、スピードもありますし、テクニックもある。でも僕らのチームはローポインターのスピードなど強みがあるので、自分たちがやっていることは間違っていない。時間の使い方や距離の取り方を修正していきたい」と試合を振り返った。得失点差で本戦出場を逃したアックスは、9月に行われるプレーオフで、ふたたび本選出場をかけて戦う。

アックスの峰島靖。イメージチェンジの金髪は新たなトレードマーク

激変する車いすラグビー界

今年は新たなチームの設立や、選手の移籍など、変化を遂げている車いすラグビー界。現役選手のかたわら連盟の理事や競技の解説も務め、普及面でも活動する峰島は「これだけの変化は始めて」と率直な思いを語る。「車いすラグビーはチーム数も多くないので、誰がナンバーワンか、どういうチームかが、試合前から分かっていることが多い。今年は新しいチームや海外選手がいるチームへの対応など、色々と考えることが増えた。選手として、それは純粋に楽しいし、車いすラグビー全体としても、技術力が上がるための良いステップになるのでないか。歓迎すべきことかな、と思いますね」と業界の未来を思った。

ライバルであり、仲間。兄弟対決も注目

横浜大会には兄弟選手も出場。アックスの乗松隆由(クラス 1.5)と福岡の乗松聖矢(クラス 1.5)だ。互いに異なるチームに所属する二人だがこのほど日本代表選手にも選出された。兄弟であり、仲間であり、ライバル同士。対戦相手として戦った聖矢は、「去年の大会では『身内がいるな』という感じで余計なことを考えてしまっていた。でも今日は、兄弟ということは意識せずに、いち選手として向き合っていた。集中できていたのかな」と振り返る。

日本代表ではチームメートの二人。隆由は「頼もしいですね。兄弟で一緒に試合に出る場面も増えてきたので、皆さんに見ていただきたい。東京パラリンピックでは、兄弟そろって金(メダル)を獲るのが夢。親にその姿を見せたいです」と夢を語った。10月には日本代表戦である「車いすラグビーワールドチャレンジ」もひかえている。乗松兄弟のディフェンスにも注目だ。

韓国から兄弟プレーヤーが新加入で、新たな化学反応

昨年、初の本戦出場を果たした成長著しい福岡。今年4月には韓国から兄弟選手を受け入れた。韓国・仁川のチームでプレーしていたパク・ウーチョル(クラス 2.0)が「競技レベルの高い日本のチームとプレーしたい」と日本車いすラグビー連盟に相談があったことで実現。

初の公式戦でもスピードを生かして多くの得点を決めたウーチョルは「厳しい戦いでしたが、プレーできて嬉しいです。一番勉強になるのは、チーム全員が攻撃になれること。とてもいい経験になります」と自身の収穫を語った。チームメートの乗松も「チームに勢いをもたらしてくれていますね。今日の試合もパク兄弟に助けられました」と太鼓判を押した。

「車いすラグビー日本選手権大会」は、12月20〜22日に千葉で開催される。海外選手の加入や、新チームの設立、選手の移籍など、変化を遂げた今年の車いすラグビー界。この地殻変動は吉と出るか。東京パラリンピックが意識されるなか、国内の動きにも目が離せない。

(校正・佐々木延江)

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