7月6日(土)、7(日)の2日間、町田市陸上競技場(東京都)でパラ陸上関東選手権大会が開催された。天候も悪く、時期的に2週間後のジャパンパラもあり欠場する選手も多かったが、アジア新記録5、日本新記録13が更新された。
また、1年2ヶ月後の東京パラリンピック出場の可能性に賭ける選手たちにとっては貴重な一戦であり、雨に濡れるトラックに全力をぶつけ挑んだ。
井谷俊介
1日目、男子200m T64(下腿義足)で井谷俊介(SMBC日興証券)が23秒80のアジア記録を更新して優勝。ライバルの佐藤圭太(トヨタ自動車)の記録を0.5秒縮めてアジアトップに進んだ。
井谷は2年前に競技を始め、昨年秋、アジアパラ(ジャカルタ)で日本代表となると、100mで金メダルを獲得した。義足のスプリンターとして急速に成長し、100m、200mともに世界ランク8位を確実にした。
村岡桃佳
2日目の競技は雨足がつよまる中で行われ、女子100m T54(車いす)で、冬季パラリンピック金メダリストの村岡桃佳(トヨタ自動車)が17秒38で日本記録を更新した。
幼い頃から車いす陸上競技に親しみ、冬季パラのアルペンスキーに転向、昨年の平昌パラリンピックで金メダルを含む5つのメダルを獲得する快挙を遂げた。6年ぶりの陸上トラックに復帰し、2大会目のレースで日本トップに躍り出た。世界記録・アジア記録はともに15秒台で道のりはあるが、僅かな時間で世界へのスタートラインへ歩幅を縮めた。
スキー、陸上いずれもパラリンピックの頂点を目指す村岡のスピーディーな動きは、幼少の頃からの競技環境が影響しているのではないだろうか。最初の師となる車いす陸上の千葉祗暉氏は、シドニーパラリンピック(2000年)から帰国して車椅子の子供たちのスポーツクラブを創設、村岡も参加していた。現役アスリートとの交流や大会出場に育まれている。
スキーでもパラリンピアンや現役メダリストなどのトップ選手の言葉を聞きながら、あっというまに世界一のアスリートになった。
村岡と周りのアスリートの共通点は、誰もやってない新たな可能性に気づき、真っしぐらに目標に取り組むところではないだろうか。努力や判断は冷静、支えは固く暖かだ。これからも様々なチャレンジの可能性がありそうだ。
気になる主力、ベテラン組は?
1日目、800m(車いす)は、マラソンで東京大会の出場を確実にしている主力・鈴木朋樹(トヨタ自動車)が優勝、ベテラン樋口政幸(プーマジャパン)が2位、渡辺勝(凸版印刷)が3位だった。
マラソンで東京出場を確実にしている鈴木だが、あくまでも自分のメインはトラック中・長距離と、意欲を見せる。
鈴木の先輩で、世界の脅威を目の当たりにしながら若い選手を率いてきた樋口は、新たな挑戦に向けて模索しだした。年齢(40歳)的にも短距離での主力を譲り、樋口なりのベストな姿を再構築しようとしている。
「800mは、体が軽く、スプリント力がある選手、(鈴木)朋樹のような選手が、アメリカのダニエル・ロマンチューク、カナダのブレント・ラカトスなどに通じるだろう。自分は、1500m、5000mをメインにし(長い)距離で勝負する」と話していた。