7月6日、宮城県の漁港・七ヶ浜で、20回目を迎える「みやぎ国際トライアスロン仙台ベイ七ヶ浜大会」が行なわれ、エイジグループ500名の選手のうち、第5ウェーブでスタートしたパラトライアスロン(障害の部)の佐藤圭一(TRI4・35歳/左腕欠損、エイベックス所属)が1時間7分45秒でスプリント(スイム750m、バイク20km、ラン5km)をフィニッシュ。2位でフィニッシュしたベテラン古畑俊男(TRI5・52歳/膝下切断)を1分強上回り、総合優勝した。
七ヶ浜は、海から民家のある丘へ上がるいくつもの急な坂を含むランコースに特徴がある。バイクコースも、地震で一度ボコボコになった路面は補修工事が施されているといっても滑らかとは言えない。多くのトライアスリートには「ユニークなコース」だが、特に足に障害のある選手には弱みを直撃するハードコースとなっていた。
左腕から先のない佐藤は、「コースをみて、ここで勝つしかないと思った。得意を生かして全力を出し切りました。アップダウンのあるコースのランは、足に障害のある選手には不利ですので、自分の得意を生かして勝つことを目標に走りました。スイムとバイクはタイム差を意識して追い、ランへのトランジットで古畑選手に追いつき、追い抜くことができました。ランでは古畑選手が後ろに見えていたので、追いつかれないよう走りました。狙い通りのレースができた」と、感想を話してくれた。
佐藤圭一は、愛知県出身のパラリンピック・クロスカントリースキー/バイアスロンの日本代表選手で、バンクーバー、ソチの2回の冬季パラリンピックに出場。5月に行なわれた世界トライアスロンシリーズ横浜大会に初めてパラトライアスロンの選手として出場。6月に蒲郡オレンジパラトライアスロン、今大会とでトライアスロン出場は3回目になる。各大会でタイムを縮めてきた。
一方、古畑は8月の世界シリーズ・グランドファイナル出場を控えケガを恐れていた。特に下り坂ではセーブをせざるをえなかったが、結果は横浜大会の1時間8分56秒とさほど変わらない1時間9分8秒だった。コースの特徴を克服した走りだったと言える。「佐藤選手も、私も熱意をもって取り組んでいます。日本で1番、2番は意味がなく、チーム・ジャパンで世界に勝たないといけない」古畑はレース後に話してくれた。
「今回はコースに自分を合わせることができ、ちゃんと勝つことができたが、平地でのテクニックは足りない。海外のパラトライアスリートは約65分で平坦なコースを走っているので、だいたいそれくらいを目標にしていきます」と、佐藤は課題を見据えた。
エイベックス所属のプロ選手・佐藤は、昨シーズン、クロスカントリースキーの強豪ウクライナのチームに頼みこんで一緒に練習に混ぜてもらい、今年3月のソチパラリンピックに向け技術と意識を高めてきた。しかし、日本のクロカンチームは、ロシア、ウクライナの隙のない強化体制を目の当たりにし、大敗を喫した。
「日本はもっと選手とマンツーマンで向き合うようなスタッフが必要。現状の日本では中枢国に勝てないが、聞いたことを真似るのではなく、日本独自のやり方を確立して勝つ必要がある」世界を相手に立ち向かう中で感じてきたことで、どの競技にも通じるものがあると感じた。
結果をださなければ認められないプロ選手の危機感の中で佐藤はトライアスロンに可能性を見つけた。ソチが終わり、当面は、スキーとトライアスロンを両立していくつもりなのだろう。