東京2020大会があと一年へと迫るなか、パラトライアスロンの谷真海(サントリーホールディングス)はレース後、涙を流していた。
世界パラトライアスロンシリーズ第2弾の横浜大会が18日、神奈川・山下公園特設会場で行われ、PTS4クラスの谷は3連覇を逃し1時間18分43秒で2位に終わった。
リオパラリンピック(2016年)から正式競技になったトライアスロンは、スイム、バイク、ランを連続して行い、その合計タイムを競う。パラの距離はスプリント(25.75km/スイム750m、バイク20km、ラン5km)で、レースを繰り広げる。障害の種類や程度により座位・立位・視覚障害のクラスに分かれ、谷は立位のクラス(PTS2〜5)。上・下肢の切断や機能障害など肢体不自由者のクラスで、障害の重い方から順に2~5に分けられる。
失いかけた、東京大会への道
谷のクラスはPTS4。実はこのクラスは、昨年11月までパラリンピックの出場資格を失っていた。競技人口の少なさから、実施種目から除外されていたのだ。谷はアテネ、北京、ロンドンと陸上競技(走り幅跳び)でパラリンピックに3度出場。2017年からトライアスロンに取り組み始めた。東京大会の招致にも参加し、4大会目の出場を目指していた谷にとって、苦しい時間が続いた。
その後、一時はオフに入っていたものの、昨年11月のITU国際トライアスロン連合の理事会で、すべての障害クラスの選手に出場の可能性が与えられるようルールが改正。PTS4は、障害程度が軽いPTS5と混合で実施されることが認められ、東京大会への道が拓けた。
世界との実力差を感じたレース
谷にとって今シーズン初の国際大会となった横浜では、PTS3〜5クラスが同時にスタートし、ルール改定後、PTS5の選手と肩を並べて走る初の機会となった。
「PTS5と同じスタートなので、最初から力抜かずに思い切っていこうと思った」と谷はレース前の心境を振り返る。
得意のスイムまでは第2集団に位置し、良い流れをキープ。しかし、トランジション(種目から種目への移動)で7人に抜かれ、課題としているバイクで、さらに3人に抜かれる展開に。最終的な順位は、PTS4クラスでは2位だが、同時スタートした他のクラスの選手と合わせると、6位。レースを終えた谷の顔に、笑顔はなかった。
「完全に力負けたな、という感じ。全然敵わなかった。力の差を感じた」と涙ながらにコメント。東京パラリンピックに向けてより本気度が増した海外選手を前に、世界の壁に屈した結果となった。
義足を一本化し、タイムを短縮
一方で、新たな変化が実を結んだ場面もあった。「第4のパート」とも呼ばれるトランジションは、次の種目へと移る重要なポイント。トライアスロンでは、選手がウエットスーツを脱いだり、シューズを履き替えたりする時間もレースタイムに含まれるため、合計タイムに大きく影響するトランジションは、いかに時間を短縮するかが戦略の鍵だ。
今シーズンから谷は、バイクとランの義足を一本化。これまで3回あった履き替えを2回に減らし、タイム短縮を試みた。
「バイクからランへのトランジションはスムーズにいった。タイムが縮まるので良かったと思う」と一本化への手応えを感じていた。
課題は、義足への慣れ。一本化にしてから、わずか2ヶ月ということもあり、バイクで漕ぐときにパワーの入りにくさを感じたという。「グラグラしていて、パワーが伝わりにくい感じがあった。これまでローラーバイクで固定して強化してきたが、まだ実走に弱い可能性があるのかも。そこは見直していきたい」と振り返った。
気になる東京大会へのゆくえ
来月から、パラトライアスロンは東京2020大会出場に向けた選考期間が始まる。海外での選手権に加え、8月には、本番の会場であるお台場海浜公園でワールドカップが開催される。これまで3度パラリンピックを経験する谷だが、やはり自国開催への思いは強い。「今回、自分の国で試合をする力強さ、声援に後押しされるのを感じた。もし東京大会に出られるのなら、そのパワーを感じたい」。思いを馳せたその大舞台に、彼女は立てるのか。世界の壁を越えて、新たな景色を私たちに見せてほしい。
(校正・佐々木延江)