もともとトライアスリートとして競技していたエバ。5年前の2013年にサイクリングレース中の事故で脊髄を損傷、下半身不随となった。
「もう二度と歩けない」という現実を当初は辛くて受け入れられなかったが、スペインのスポーツ関係者に「今までとは違う形でトライアスロンをやれば良いじゃないか!」と励まされ、ポジティブに捉えることにした。今では怪我をしたことを素晴らしい経験と思っている。横浜にはもう何度も出場している。
昨年は4位だったタイムを4分ほど更新したものの、今大会の順位は5位だったエバ・マリア・モラル・ペデレロ。日本の土田和歌子(八千代工業)も加わり、選手たちのレベルが年々上がっている。
今大会で表彰台をのがしてしまったエバだったが、違う形で表彰台に立つことになった。
全てのカテゴリーの選手の表彰が終わり、通常ならメディアはその流れで解散なのだが「特別な発表があるからその場を動かないように」と場内アナウンスがながれた。
直後、「エバ、アンヘル、表彰台に上がってください」と大会MC。会場が一斉に歓声を上げ、スペイン代表選手団からは口笛が飛び交った。
顔を真っ赤にしたエバに続いて、アンヘルも表彰台に上がった。
表彰台に上がってすぐに上着を脱ぎ、アンヘル・サラマンカ・コルメナレホは彼女の前にひざまづき、
「今日は僕にとって特別な日です。出来ることならお互い表彰台に立ちたかった。去年の横浜大会で出会い、それから一年間離れることなく共に過ごし、僕の人生で一番幸せな日々をおくっている。そして今後もずっと共に幸せな日々が過ごしたい。イエスと言ってくれますか?」プロポーズの言葉を述べた。
エバは、こらえきれない涙に顔を両手で隠しながらアンヘルの言葉を聞き終えると、はっきり「はい」と答え二人は熱いハグをし、口付けを交わした。
会場に居た全員から様々な言語で祝福の言葉が飛びかった。涙目になり拍手をしている人達も多数いた。聞くところによるとプロポーズ大作戦の首謀者は、アンヘルの母親を含む4〜5人だけにしか知らせていなかったという。
今の気持ちは?と聞くとエバは、手がふるえ、汗ばみながら「言葉では表せない。興奮で眠れないよ。優勝したときよりも緊張しています」と。
日本という国は二人にとって縁起の良い国。「来年の東京に向けて色々計画しなければならないね。」と、アンヘルの顔を見ながらエバはそう語った。
表彰台を降りると、日本の土田和歌子をはじめ、他国の選手たちが駆けつけ「おめでとう」「お幸せに」など声を掛け、握手やハグの祝福が止まなかった。
また、ハローキティが大好きなエバのためにと、アンヘルは手作りのリングケースを内緒で作成していたこともあり、それに気がついたエバはさらに喜びがあふれた。
アンヘルは、PTVIで優勝したホセ・ルイス・ガルシア・セラーノのガイド、アンヘル・サラマンカ・コルメナレホ(34歳)で、昨年の横浜大会がキッカケで交際が始まり、晴れてエバ・マリア・モラル・ペデレロ(37歳)と婚約者となった。末永くお幸せに。
(編集・佐々木延江)