世界と戦える集団にしたい
今回の派遣標準記録(国際大会への派遣をする際の目安となる記録)は、MQS(WPS/ワールドパラスイミング参加標準記録)を切る世界ランク上位となるタイムを念頭に設定された。
この夏に控える世界選手権は2020東京パラリンピックの前哨戦として戦う最後のチャンスとなる。
これまでは自己ベストに近い泳ぎをすれば「次につながる泳ぎ」と考えたが、このレースを機に、派遣標準タイムを基準とした世界のレベルと日本選手の実力に向き合い、選手をふるいにかけた。
「厳しい結果になりました。世界選手権(開催地が決まらないが)の準備を始める時期になり、本来入ってくるべき若手選手がベストを出せない。むしろ落ちている。この冬の過ごし方に問題があったと思います。今回の派遣標準記録は人によってはベストタイムよりも高いかもしれませんが、切らないといけないタイムです。このタイムを厳しいと言っていては世界では戦えない」
すべてのレースが終わり、峰村史世日本代表監督は記者たちに話した。
「あまい設定をして国際経験を積むという方法もあるが、それはすでに十分やってきました。東京に向けて戦う集団にしたいので、この形にしていきます」と、世界と向き合う姿勢を重ねて伝えてくれた。
新世代の成長振るわず。「リレー」チームでの標準タイムに届かず落選
今回初めて「リレー要員」を選出する目的で、東京パラの種目にない100メートル自由形でのチームの合計記録が「リレー派遣標準記録」として設けられた。これが、最後の砦となっていたように思われる。
知的障害の北野安美紗が個人では突破できなかった派遣標準をリレー標準タイムで突破して「リレー要員」として日本代表に選ばれた。身体障害はアジアパラでメダルをとり期待されていたが男女ともに突破することができなかった。
峰村監督が「本来入ってくるべき若手選手」を救う策として、リレー標準タイムを設けたのではないだろうか。
女子では、一ノ瀬メイ(右前腕欠損/近畿大学 )、宇津木美都(右前腕欠損 /京都文教高等学校)、そして監督が自ら育ててきた池あいり(左足機能障害 /日体大)、小池さくら(両下肢機能全廃/日体大桜華高校)たちだろう。4人全員が選考を逃した。
小池さくら
1日目のメイン種目400メートル自由形S6でふるわなかった小池は、この1年急成長を続けた100メートル平泳ぎでアジア記録(小池の自己ベスト)を上回る1分46秒13に設定された派遣標準タイムに挑んだ。同日エントリーしていた100メートル自由形を棄権して大勝負に立ち向かったが、ベストを更新することさえできなかった。
男子は、昨年のアジアパラで強豪中国、コリア合同チームから優勝を勝ち取った男子フリーリレーは、山田拓朗(左前腕欠損/NTTドコモ)をリーダーに、久保大樹(両手指・両足首機能障害 /KBSクボタ)、窪田幸太(左上肢機能全廃 /日体大)、萩原虎太郎(右肩関節機能全廃/千葉ミラクルズ)は、惜しくもリレー派遣標準(4分4秒)にわずかに届かず3人が代表選考を逃した。
久保、窪田は自己ベスト、日本記録も更新し良い泳ぎを見せたが、S9、S8クラスなど世界でも選手の人数が多くMQSが高く設定されている。クラスにより参加人数が多い場合、競技の難易度は高くなる。
「(若手に対して)今後然るべき対策が必要」と、峰村監督は話していた。どのような対策が取れるだろうか。
東京開催が決定(2013年9月)以来6年、前回リオパラリンピック(2016年)から3年、選手たちはついに本番前の夏を迎えようとしている。
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