2018年8月の世界選手権で史上初の金メダルを獲得した、ウィルチェアーラグビー日本代表。
その日本にとって今年初めての国際大会「Wheelchair Rugby Quad Nations」 が3月1日から3日間、イギリスで開催される。
開催国であるイギリス(世界ランク5位)に加え、日本(同3位)、カナダ(同4位)、フランス(同7位)の計4ヶ国が優勝を争う。
大会派遣される12人の代表メンバーのうち3人が世界選手権から入れ替わっており、ヘッドコーチのケビン・オアーは「2019年は新たなラインを試してみたい」と可能性を探っている。
そのメンバーに名を連ねたのが、1年ぶりに代表復帰した仲里進(なかざとしん・Okinawa Hurricanes/2.5)。
「僕は1対1の強さや、走れる部分、ディフェンスの強さをアピールしたい。声も出すタイプなのでチームの雰囲気をよくしていけたら」と意気込んでいる。
パラリンピック4大会出場のベテランが、苦しんだ1年
「あの瞬間はテレビで見ていました。複雑だったかと言われれば、そうでしたね」
2004年のアテネパラリンピックから4大会連続で出場し、リオデジャネイロパラリンピック銅メダルにも貢献した仲里。ところが2018年3月に不調などのため日本代表から外れ、金メダルを獲得した世界選手権の舞台に立つことができなかったのだ。
「やっぱり悔しかったですよ、世界一を目指して長くやってきたので。でもパラリンピックの金メダルが欲しいので。世界選手権で優勝したことで日本は研究されていくけれど、本当の世界一はパラリンピックで獲れたらと思っているので、また僕も世界を目指そうと思いました」
その気持ちを見せたのが、去年12月の日本選手権だった。
日本代表キャプテンの池透暢(3.0)などを擁するFreedomとの決勝、同点で迎えた残り11秒で、コートの端から端まで1人で激走する執念の決勝トライを見せたのだ。
「延長戦を考えずに、最後の最後まで戦おうと思って走りました。代表に返り咲きたい中、僕にとってはここがアピールの場だったので、それが出せたと思います」
その活躍がケビンHCの目に留まり、年が明け、日本代表に1年ぶりに返り咲いた。
ベテランならではの強みと、久々の代表だからこその課題
ウィルチェアーラグビーは障害の度合いによって、0.5(一番重い)から3.5(一番軽い)の7段階にクラス分けされ、コート上の4人の合計点数が8点以内になるように試合を戦わなければならない(3.0-3.0-1.0-1.0など)。
現在、3.0の主力はキャプテンの池透暢、島川慎一(BLITZ)、池崎大輔(北海道BigDippers)だが、この3人のいずれも休ませる時間帯をチームは模索している。
そこでカギになるのが、2.5の仲里だ。
頚髄損傷の選手などに比べると比較的体幹機能があり、ロングパスやパワーも武器になる。
一方で、1年間のブランクで少し鈍った、代表としての試合感覚も取り戻しているところだ。
「ラグビーのスキルアップもそうですけど、今までのブランクを取り返したうえで、みんなと同じ土俵にまた立ちたい。勉強も復習もしっかり色んな事をして、また代表に定着していきたいです」
「ウィルチェアーラグビーは楽しい」。41歳仲里、5回目のパラリンピックへ
「代表を外れていたころは、みんなに走れてないとも言われていたので、とにかく昔の自分の走るプレーを思い出して、初心に戻ってがむしゃらにやっていました。そうしたらラグビーも楽しくなってきたんです!」
そう話し、コートをかけまわる仲里の姿は、東京パラリンピックに向けて選手人生を駆け抜ける姿と重なって見えた。
「戦いです、これから。2020年に誰がそこにいるかもわからないですし、切磋琢磨することで”最強の12人”が日本代表に選ばれて金メダルにつながると思うので。僕も諦めないし、他の若い選手のレベルも上がらなければいけないと思います」
約束されたメンバーなどいない。
パラリンピック本番に向けた選手たちの戦いが、熱さを増していく。
(校正 望月芳子)