4年に1度開かれる第3回アジアパラ競技大会。今年はアジアの43の国と地域から2800人を超える選手が参加し、18競技558種目が行われる。
種目はパラリンピックと重なる競技が多いが、バドミントン、パワーリフティング、水泳、陸上、卓球などアジア地域で盛んな競技に注目が集まる。これらはアジア勢が強いことから、2020東京パラリンピックへの試金石になる試合として各国によるハイレベルな戦いが繰り広げられるだろう。
日本からは大前千代子団長(日本障がい者スポーツ協会理事/日本車いすテニス協会元会長)率いる484名(選手304名・スタッフ180名)が参加、チェスをのぞく17競技に参加する。主将は、鈴木孝幸(パラリンピック水泳金メダリスト・四肢欠損/GOLDWIN)、騎手は、前川楓(陸上世界選手権銀メダリスト・右足切断/チームKAITEKI)。
日本はアジアのパラスポーツのリーダー?
2013年9月・ブエノスアイレスのIOC総会で決まった2020東京。日本でのパラリンピックスポーツは、トップ選手の強化だけでなく発掘・普及など取り組みが加速した。2016年招致からの経緯もありパラスポーツはスポーツとして飛躍の大きなチャンスを迎えている。
しかし一方ではそれらすべての道のりを同じスタッフがかけ持ちすることが多い。経験ある人材が限られ、旧体制のオリ・パラ分断構造が根深く、2020以降へパラスポーツを持続させていく力をどう蓄えていくことができるだろうか。日本は大きなチャンスと課題に直面しているのではないだろうか。
日本は1970年代にロンドンのストーク・マンデビル大会(パラリンピックの前身)にインスパイアされた大分の中村病院の故・中村裕院長が提唱し、アジアパラの前身となる「フェスピック/極東・南太平洋身体障害者スポーツ大会」を1975年に別府(大分県)で初めて開催。2006年までアジア諸国にパラスポーツの風を送り込んできた。高度経済成長期・バブル期に障害者スポーツでもアジアをリードしたのは日本である。
しかし、2010年・第1回アジアパラ競技大会となってからは、IPC(国際パラリンピック委員会)がAPC(アジアパラリンピック委員会)とともにパラリンピック・ムーブメントを担うかたちで、その役割を日本に代わって行なっている。2020東京にむけ日本がアジアに示す役割とは何か。アップデートされた状況で考え、あらたな目標や可能性を見つけていく必要があるのではないだろうか。
アジア勢の競技力は?
欧米をいれても、世界最強のパラスポーツ強豪国は中国である。人口が多いだけではない。オリンピック出場の歴史や2008北京大会開催など豊富な経験を生かして国内に30以上のナショナルトレセンがあり、選手が練習に専念できる環境づくりを継続して行っている。
今年、冬季パラリンピックを開催した韓国も、パラリンピックを機会にパラアイスホッケーチームなどが大きく力を伸ばしていた。
そのほか、イラン、タイ、カザフスタン、シンガポールなどパラスポーツにおいても先進国と言える国がある。
そうした国はアジア全体ではわずかで、参加43か国のほとんどがスポーツ以前に貧困などの社会課題を抱えている。障害者への差別など人権問題、経済的に貧しい国が圧倒的に多い。そのためアジアでのメダル争いはいつも決まった国のみで行われている。
あらためて知り、知らせよう
2020東京開催を控え、日本でのスポーツが問われている。アジアパラ競技大会を知ることで、パラリンピックより身近なアジア地域のスポーツ振興に歩調を合わせてみよう。2020東京パラリンピックの2年前に、欧米のパラリンピックとは異なる文化を育んできたアジア地域のパラスポーツを見ることで、スポーツの素晴らしさや社会に及ぼす影響について知り、ともに感じることができればと思う。
(校正 望月芳子)