関連カテゴリ: 馬術 — 公開: 2018年9月21日 at 4:12 PM — 更新: 2018年9月26日 at 12:33 AM

トライオン馬術世界選手権・パラ馬術個人競技メダリストが出揃う

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Sho Inaba&Femme Fatale (Photo Credit: Betty Cooper)
Sho Inaba&Femme Fatale (Photo Credit: Betty Cooper)

2018年9月19日(現地時間)、トライオン国際馬術センター(アメリカ・ノースカロライナ州)で、2018年馬術世界選手権*のパラ馬術競技個人演技2日目が行われた。

この日はライダーの障害の度合いによる5つの種目分類(グレード)のうち残り2種目(グレードI,III個人演技)が実施された。

グレードIII:Rixt van der Horst&Findsleyが優勝、Rebecca Hart&El Corona Texelがアメリカ待望の世界選手権初メダル

日本からはグレードIII、8番目に稲葉将&Femme Fatale(8歳/ 牝 / KWPN)が出場。 この人馬は23歳のライダーと8歳の馬と、人馬共に若いコンビ。稲葉は乗馬は小学生のころより取り組んできた経験を持ち、ジュニアのころから海外の競技会に挑戦してきた。今回、個人演技は63.471 %で、17人馬中14位に終わった。

競技全体では、1番手にイギリスのNatasha Baker&Mount St John Diva Dannebrog(9歳/ 牝 / HANN)が72.471 %の高得点を記録。メダル争いに高い水準を設定。10番手のアメリカ・Rebecca Hartがコンビを組んで1年のEl Corona Texel (9歳 / セン / KWPN)に騎乗し、72.235 %を獲得する素晴らしい演技を披露したもののわずかに届かず。しかし、11番手にリオのメダリスト、オランダ・Rixt van der Horstが8歳の若馬Findsley(8歳/ 牝 / KWPN)に乗って登場、終始安定した演技を見せ、1%以上上回る73.735 %の成績でトップに。その後、それを上回る演技を見せる人馬は現れず、Rixt 、Natasha、Rebeccaの順にメダルが確定した。

アメリカチームにとって、Rebecca Hart&El Corona Texel の銅メダルは、自国開催の本大会で嬉しい初のメダル。
「この馬とは初めてのチャンピオンシップ大会です。準備馬場から本馬場の演技まで落ち着いていけたことが、とてもよかったです。今回は母国開催で、なかなか海外の試合は観戦にこれない家族がスタンドにいたのも心強かったです」(Rebecca Hartの競技後インタビューコメント)
1998年に雑誌記事をきっかけにパラ馬術に取り組み、2003年より世界選手権レベルで競技を続けるベテラン選手にとって輝かしい実績を刻むメダル獲得となった。

なお、来日経験もあるベテラン、ドイツのDr. Angelika Trabertは今回若い8歳のDiamond’s Shine(セン / WESTF)とコンビを組み善戦、71.588 %で5位に終わっている。

(競技後選手コメント)

RIXT VAN DER HORST (NED)
「今日の演技にはとても満足しています。最高の感覚でした。今回がコンビを組んで初めての国際競技で、こんなに大きな大会で素晴らしい演技をしてくれたので誇りに思います。今年の初めからFindsleyと組んでいますがとても愛らしい馬です。覚えが早くて順調に成長しているので東京に一緒に行けたらいいなと思っています。
金メダルには感激しています。再び世界チャンピオンになれた気分は最高です。演技中にはそこまで届く演技という意識はしていなかったので、本当に嬉しいです。いつもの通りに騎乗していたら良い結果になりました。最初は緊張していましたが、後半どんどん良くなっていきました。演技をしながら楽しんでいた、ただそれだけです。このままトップでいられるような演技をし続けて行けたらいいなと思いますが、強豪がそろっているのでまだ先はわかりません」

NATASHA BAKER (GBR)
「正直、演技が終了してほっとしています。この数週間がとても長く感じられ、緊張していました。馬の調子は最高、すごく良くて、自信たっぷりの様子でした。これだけ短期間に共に成し遂げてきたことすべてを誇りに思います。オーナーの方たちにこのような機会を与えていただき、感謝しています。世界選手権にこれて嬉しく思います。1月にコンビを組んだばかりで、わずかな期間にも関わらず代表メンバーに選ばれたことを誇りに思います。選考をした方たちに信頼していただき、結果を出せたことに満足しています。昨日金メダルを獲得した同じチームのソフィー選手の馬、Fatal Attractionが演技馬場の横でコンパニオンホースを務めてくれました。1頭で広い馬場に出ると緊張してしまうことがあるので、近くに仲間がいるとより安心して演技に取り組めます」

Grade 3 Natasha Baker(Silver), Rixt van der Horst(Gold), Rebecca Hart (Bronze) (Photo:FEI)
Grade 3 Natasha Baker(Silver), Rixt van der Horst(Gold), Rebecca Hart (Bronze)
(Photo:FEI)

グレードI:大接戦を制したのはイタリア・Sara Morganti&Royal Delight

2日目の第2競技で、個人戦の最終種目は最重度の障害を持つ選手が参加するグレードI競技(日本選手は今回参戦していない)。障害の度合いに合わせて経路に含まれる歩様(ほよう)が定められているパラ馬術競技、このクラスは常歩(なみあし)のみで演技が行われる。
本競技は17人馬が参加、メダル争いのみならずフリースタイル(自由演技)に進める権利を得られる8位以内にどの人馬が入るかも注目された。

年々水準の上がるパラ馬術の世界。1番手で出場したフィンランドの
Katja Karjalainen&Dr Doolittle(15歳 / セン / HANN)が早くも70%越えの72.000%を獲得。
続く2番手アメリカ・Roxanne Trunnell&Dolton(6歳 / セン / HANN)(72.143%)、3番手ドイツ・Elke Philipp&Fuerst Sinclair(8歳 / 牡 / OLDBG)(73.143%)、4番手ラトビア・Rihards Snikus&King Of The Dance(10歳 / セン / LATV)(72.179%)そして5番手ブラジル・Sergio Froés Ribeiro de Oliva&Coco Chanel M(11歳/ 牝 / KWPN)(70.036%)まで、すべての人馬が70%超えをたたき出す戦いぶりを見せた。

その後、後半休憩をはさみ8人馬が演技。13番手デンマーク・Line Munk Madsen&Hoennerups Beebob(16歳 / セン / DWB )(71.571%)、14番手ベルギー・Eveline Van Looveren&Feleva(8歳/ 牝 / KWPN)(70.786%)が引き続き70%超え。続くポルトガル・Ana Isabel Mota Veiga&Convicto (11歳 / セン / LUS )は他の大会では8位入選もあったかもしれない67.857 %で惜しくも今回はフリーを逃す。
そして、残る2選手は金メダル候補。前回世界選手権金メダリスト、イタリア・Sara Morgantiと、世界ランキング3位(2018年8月現在)シンガポール・Laurentia Yen-Yi Tan。

始めに演技したSara Morganti&Royal Delight(13歳 / 牝 / RHEIN)は、ベテランコンビらしく安定した演技を披露。この時点でトップに立つ74.750%を記録した。
続く最終演技者はLaurentia Yen-Yi Tan&Fuerst Sherlock(9歳 / セン / HANN )。順当な演技を見せるも、わずか1%Sara選手の成績に届かず。73.750%でElke Philipp&Fuerst Sinclairを0.207%の僅差で上回り銀メダルに収まった。
Sara Morgantiは、2014年世界選手権のフリースタイル金メダリスト。2016年リオ・パラリンピックに同じ馬で出場予定でいたが、前日に行われた馬が競技するに適した健康状態であるかを確認する歩様(ほよう)検査を通らず、大会会場にいながらも出場が認められない経験をした。この失望から復帰しての金メダルは嬉しい。

「最高でした。この馬とは8年コンビを組んでいて、前回フランスで世界選手権を優勝しています。トライオンにこれたことは本当に素晴らしい経験です。この一年は健康問題もありましたし、一時期もう続けられないかと思うときもありました。馬は最高のパフォーマンスをしてくれました。ここまでこれたのはコーチやトレーナーのおかげです。このメダルは個人としてだけでなく、彼らのためにも意味ある嬉しいメダルです」
(金メダル Sara Morgantiコメント)

「 国のためにメダルが取れることは大事なことです。競技中はリラックスして、とにかく前進あるのみでした。シャーロックとともに、お互いが呼吸を合わせて歩いていました。完璧なパートナシップでした。」
(銀メダル Laurentia Tanコメント)

20日はいよいよ団体戦。
王者イギリス連覇なるか? それとも今大会絶好調で参加競技すべてでメダルを獲得しているオランダの逆転なるか? 日本チームはどこまでスコアを伸ばせるか?それぞれの国の作戦そして戦いに注目が集まる。

競技予定/参加選手
20日:グレードV(中村公子&Djazz F)、II(吉越奏詞&Brown Sugar)、IV(高嶋 活士&Emora C. VD Wijdewormer)
21日グレードIII(稲葉将&Femme Fatale)、I

*馬術の世界選手権は4年に一度開催される馬術の祭典。パラ馬術のほか、馬場馬術、障害飛越、総合馬術の五輪種目3競技と軽乗、エンデュランスの合計6種目が2週間に渡って行われる5(パラ馬術の世界選手権が他種目と同時開催となったのは2大会前の2010ケンタッキー世界選手権より)。開幕後第一週目は大型台風による影響で日程変更や競技のキャンセルなどがあるという困難な状況もあった。
本大会では世界選手権では初めて、チーム競技以前に個人メダルの掛かった個人演技が実施された。パラ馬術は、規定の演技項目を含めた「経路」を回り、審判がそれぞれの項目を採点、5人の審判員の合計総合得点を競い合う仕組み。個人競技の演技の組み立てはチームテストよりも難しい構成のことが多いため、参加人馬は初日から全力をつくした戦いを求められる形となった。

結果速報はこちらのサイト、リボンのマークをクリック。
https://tryon2018.com/officialresults

グレードIII(個人演技)結果
https://tryon2018.com/eventResults/2018/1587/resultlist_PI-III
グレードI(個人演技)結果
https://tryon2018.com/eventResults/2018/1587/resultlist_PI-I

取材協力:
Betty Cooper, Photographer https://www.betty-cooper.com/
Hope Hand, United States Para-Equestrian Association http://uspea.org/
Tryon 2018 World Equestrian Games Media Center Team

参考:
https://www.paralympic.org/news/sara-morganti-s-recovery-rio-2016
https://www.fei.org/events/rio-2016-paralympics
https://inside.fei.org/sites/default/files/PED%202018_rules%20Final_clean_.pdf
https://history.fei.org/node/153

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(校正 望月芳子)

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