開会式で、日本障がい者スポーツ協会の鳥原光憲会長は「今大会は、海外からリオパラリンピックの金メダリストや世界記録保持者など世界のトップアスリートを招待しています。世界レベルの白熱したレースが、日本のパラスポーツ振興や2020年への機運を高めるきっかけとなってほしいです」と挨拶した。
●世界のトップアスリートが記者会見で抱負を語る!
記者会見に出席した海外選手は、男子走り幅跳びの世界記録保持者、下腿義足のマルクス・レーム(ドイツ/T64)ら、世界トップアスリートとして招聘された5人。明日からの大会には香港から4人のアスリートもエントリーしており、2020東京パラリンピックの醍醐味を先どりする大会となるだろう。
今大会最も注目を浴びるレームは、走り幅跳びのリオパラリンピック金メダリストで、8m40の世界記録をもつ。オリンピックの記録と比較しても、リオ五輪金メダリストが8m38、ロンドン五輪金メダリストが8m31と、レームの記録が上回っている。
「パラリンピアンとしての自分を誇りに思うが、オリンピックの舞台で戦いたい気持ちがある」と、夢を話す。群馬の地で見せるレームの大ジャンプから目が離せなさそうだ。
レームと同じドイツの走り幅跳びで、大腿義足を使用する、リオパラリンピック金メダリストのヘンリッチは、今年で35歳。アテネパラリンピックから4大会連続でメダルを獲り続けてきたベテランは、東京パラリンピックには出場しないことを表明している。日本を”第二のふるさと”と話し、日本人アスリートに対しては、サッカー日本代表を例に出し「W杯敗退後にロッカールームをきれいにしたことや、サポーターのごみ拾いを見ると、日本人は勝っても負けてもリスペクトする精神が素晴らしい。やると決めたらまい進する機動力があるので、パラ陸上の日本人アスリートにもいい刺激をもらっている」と称賛していた。
ヨルゲンセン(デンマーク)は、リオパラリンピック銅メダリスト。ポポフ、そして今大会欠場のリオパラリンピック銀メダリスト・山本篤(JUSETSU/T63)と3人同じ大腿切断のクラスで頂点を競い合ってきた。
「パラスポーツを見ることで、どんな状況でも人生を歩んでいく力を見てほしい。障害の有無にかかわらず苦しんでいる人がいるので、私たちがパッションを届けることで、人生は開けるということを感じてほしい」と話した。彼の跳躍が、観る人に勇気を与えそうだ。
バレンシア・カンボ(コロンビア)は、前日5日に群馬県内の小学校を訪問し、子どもたち150人と交流している。
「子どもたちにがパラスポーツに興味を持ってくれて感動したし、自分も結果を出すと約束したので、守るために頑張りたい。雨が降らなければいいな」と、ベストを尽くすことを胸に誓った。
カイローニ(イタリア)は100mの世界記録保持者で、ロンドン、リオと2大会連続の金メダルを獲得。走り幅跳びでもリオパラリンピックで銀メダルに輝いている。今大会では「観ている人に、私たちパラリンピアンが”何ができないか”ではなく、”何ができるか”を見てほしい。人工義足を使いこなすにもトレーニングが必要なので、どのように機能するか注目してほしい」と語った。
●日本人アスリートも絶好調、記録更新なるか。
日本人選手からは、男子の佐藤友祈(WORLD AC/T52)、女子の前川楓(チームKAITEKI/T63)、兎澤朋美(日本体育大学/T63)の3人が出席。
佐藤は、つい先週に行われた関東パラ陸上競技選手権に出場、400m、1500mで世界記録をマークしたばかり。
今大会での記録更新について記者に聞かれると、
「天気がよければ800mで狙いたい。楽しく走ってベストを尽くせたらいいと思っている」と、笑顔で答えた。
去年の世界選手権銀メダリストの前川も、先週の関東パラ陸上競技選手権で記録を更新。走り幅跳び・100mともにアジア記録をマークと絶好調だ。「連戦で疲れているが、ジャパンパラに一番照準を合わせているのでいい記録を出したい」と、さらに高みを目指す。
昨年ドバイで行われたアジアユースパラ競技大会で初めて日本代表を経験した兎澤は、今年で競技2シーズン目を迎えた。同じクラスの世界のトップアスリートであるカイローニと対決することについて、
「憧れの方と初めて一緒に戦えるが、飲み込まれずに自分のベストを尽くし、(10月の)アジアパラ競技大会につなげたい」と意気込んでいた。
競技は7日と8日の2日間、正田醤油スタジアム群馬で行われ、日本パラ陸上競技連盟の会長に就任したばかりの増田明美氏も会場を訪れる予定だ。
(校正・佐々木延江)