「オランダのイェツェってすごい選手がきますよ。日本にはちょっといない選手ですよ!」
最初に教えてくれたのは、同じクラスの日本代表の木村潤平だった。
木村によると、今回、横浜大会にはクラスベストのメンバーが揃っているということだった。まさに、東京に向かうにふさわしい、幕開けとなる横浜大会。木村もここで7人中5位は目標達成だったという。
すでに結果を伝えた通り、オランダのイェツェ・プラット(PTWC)は横浜大会初出場で高速レースを展開、56分台でフィニッシュした。リオパラリンピック(2016年)で金メダルを獲得、自転車でも銅メダルを獲得したあと、2017シーズンは目標にしていたハワイ・コナでのアイアンマンに出場、26位で完走した。現在27歳のパラリンピアン、アイアンマン、プラットは超大物アスリートと言えるだろう。
トライアスロンの始まりはアイアンマン(スイム3.8キロ、バイク180キロ、ラン42.195キロ)で、どのパートも長く限界に挑戦する「鉄人スポーツ」として始まった。現在のオリンピック、パラリンピックでは、各大会で観戦しやすいよう考案されている。パラトライアスロンは、スイム750メートル、バイク20キロ、ラン5キロで「スプリント」と呼ばれる。
スプリントの特徴は競技中一瞬の休息も許されない、トランジッションも含めてトップスピードで全てをこなすことが求められる。同じルールでも距離が違えば全く戦い方が異なるスプリントの両極にあるのがアイアンマンと言える。
プラットは「昨シーズンはアイアンマンに集中しようとしていたんですが、結果的にトライアスロンでも4大会で優勝できた!」と、IPC(国際パラリンピック委員会)ニュースのインタビューに答え、コナとパラトライアスロン、長距離と短距離のファイナリストとして偉業を成し遂げたことが伝えられていた。
「天候もよく、完璧なレース運びだった。東京大会に向けて重要なレースであり、今日は勝ってできるだけポイントを稼ぐのが目標だった。スイムは9分半ぐらい、かなり早いタイムを出せた。バイクもよかった。自分でも得意だと分かっているけどね」ランでは同じオランダのライバル、ヘールト・スキパー(昨年優勝)が速く、プラットは2位だった。
ITU世界パラトライアスロンシリーズ初戦となった横浜でのレースを終えて明るい、自信たっぷりの表情で感想を話してくれた。日本へは初来日だという。
ーー横浜はどうですか?
「本当にすばらしい。ヨーロッパとは違う文化で、大会はよく計画、整備されている。それに、早朝なのにコースを多くの人が囲んでくれていてよかった」
ーー東京に向けてどんなふうに考えていますか。
「東京の方がリオよりも良さそうだね。また金メダルを取りたいと思っているよ。ハンドサイクリングとトライアスロンの両方で出場したい。ふつうに行けば、メダルは3つ取れるだろう。少なくともそのうち2つは金を取りたいと思っています。単に勝つということと、勝ち続けるということは違う。後者のほうがずっと難しい。そうできるよう努力していく。これから2年の間にまだまだやることがある」
(取材協力・潮田耕一)