24日(木)に千葉ポートアリーナで開幕した「2018ジャパンパラ ウィルチェアーラグビー競技大会」は、予選リーグの3日間12試合の日程を終えた。戦いを繰り広げているのは、日本・イギリス・スウェーデン・フランスの4ヶ国。5勝1敗同士の日本とイギリスが、27日(日)13時から行われる決勝戦に進んだ。
日本-イギリス、リーグ戦で1勝1敗
日本は25日のイギリス戦で、キャプテンの池透暢(3.0、Freedom/21番)が体調不良で欠場、第3ピリオドには5点差まで広げられた。エースの池崎大輔(3.0、北海道BigDippers/7番)と島川慎一(3.0、BLITZ/13番)のコンビネーションで試合終了間際に1点差まで詰め寄るも、50-51でイギリスに敗れた。
26日のイギリス戦では、池がスタメン出場。高さとスピード、持ち味のロングパスを武器に、48-45での勝利に貢献した。イギリスのハイポインター・Jim Roberts(3.0/9番)は、「ユキノブが出るのとそうでないのでは違いがあった」と試合後にコメントした。
日本の狙いは「選手たちのステップアップ」
日本は、今大会を「世界選手権に向けた選手の成長の機会」と位置付けている。ポイントは主に2つ。
1つめは、日本代表では初めての女子となる倉橋香衣(0.5、BLITZ/3番)の起用。ジャパンパラには2回目の出場で、ケビン・オアーヘッドコーチは「まだまだ発展途上だが、チームに欠かせない存在だ」と期待を寄せている。
ウィルチェアーラグビーには選手に持ち点があり、0.5(一番重い障害)から3.5まで(一番軽い障害)まで7段階のクラス分けがされている。試合では、コート上の4人の持ち点の合計が8.0以内になるようにしなければいけないが、女子が加わると1人につき0.5点が追加される仕組みになっている。つまり、倉橋が入ると合計が8.5点以内まで可能となり、より持ち点の高い選手がプレーする機会が生まれるのだ。
相手の道をふさいで味方のスペースを作る倉橋の役割は、今大会でも随所に発揮されている。まだ競技歴2年の倉橋は、170cm・51kgと細身の体のため、パワーをつけるためにウエイトトレーニングと食事量を増やしている最中だ。「体の大きい男子選手にタックルするのは全く怖くない。むしろ楽しいです」と笑顔だった。
2つ目は、「3.0のいないライン」。
日本の主力である、池・池崎・島川の持ち点3.0の3人。今大会はこの3人のいずれもコートに立たない時間帯をあえて作った。狙いは、3人を休ませてパフォーマンスを上げること。ここで活躍したのが、永易雄(2.5、Freedom/33番)だ。競技歴は15年と長いものの、パラリンピック代表としては2008年の北京以来遠ざかってきた”代表復活組”だ。長い手と速さを生かしたプレーは池を彷彿とさせ、「2.5の僕が3.0と同じような動きができると、ラインの選択肢がとても広がるんです」。
ケビンヘッドコーチも「ミッドポインターの育成は重要な課題」と話している。ベンチからも一番大きな声を出しチームを鼓舞させる姿に、主力への成長が期待できそうだ。
海外チームの今大会への位置づけは?
日本と並んで5勝1敗のイギリスは、ジャパンパラに過去2回出場しているものの優勝経験がなく、「必ず勝てるように戦略的に臨んでいる」とPaul Shawヘッドコーチ。
6戦全敗のスウェーデンは、Marko Norrbacka(3.0/12番)とAndreas Lilja(3.0/14番)を新たに起用した。狙いは世代交代に備えて、2~3年後のチームの柱を作ること。ただ、今年6月のカナダカップ以降はベテランも戻ってくるので「次は自分たちのやり方ができる」と話すのはキャプテンのTobias Sandberg(3.5/6番)。日本が再び簡単に勝てるというわけにはいかなさそうだ。
勝ちにこだわるか、若手の育成か。同じ大会でも目的はそれぞれだ。
【リーグ戦試合結果】
1日目(5月24日)
・第1試合 日本57-29スウェーデン
・第2試合 イギリス54-34フランス
・第3試合 フランス45-47日本
・第4試合 ウェーデン23-65イギリス
2日目(5月25日)
・第5試合 フランス62-34スウェーデン
・第6試合 日本50-51イギリス
・第7試合 スウェーデン29-59日本
・第8試合 イギリス53-44フランス
3日目(5月26日)
・第9試合 フランス41-52日本
・第10試合 イギリス54-21スウェーデン
・第11試合 スウェーデン31-55フランス
・第12試合 日本48-45イギリス
(校正・佐々木延江)
この取材はニコンイメージングジャパンによる撮影機材協力により行われています。
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