関連カテゴリ: World Paratriathlon Series, トライアスロン, 取材者の視点, 地域, 東京パラムーブメント, 横浜, 観戦レポート — 公開: 2018年5月22日 at 2:40 PM — 更新: 2021年5月29日 at 12:16 PM

アリサ・シーリー「自分のスタンダード」をとり戻した。横浜3連覇の輝きの理由

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ITU世界パラトライアスロンシリーズ横浜大会で、2016年、2017年と見事な2連覇を成し遂げた、アメリカのアリサ・シーリー(PTS2)が、5月12日の朝、再び、横浜の舞台に戻ってきた。

フィニッシュするアリサ・シーリー、3連覇を果たす 写真・山下元気
フィニッシュするアリサ・シーリー、3連覇を果たす 写真・山下元気
5月12日(土)朝、オープニングセレモニーを待つアリサ・シーリー(PTS2・アメリカ) 写真・山口容子
5月12日(土)朝、オープニングセレモニーを待つアリサ・シーリー(PTS2・アメリカ) 写真・山口容子

今年のスイムはつねにトップの座を譲らないライバル秦由加子とわずか5秒差の2位で終えた。自らのブログで、「初めて秦にくらいついてスイムを終えることができた!」と、あらためて振り返っている。

アリサ・シーリー(PTS2・アメリカ)のバイク、山下公園前 写真・矢野信夫
アリサ・シーリー(PTS2・アメリカ)のバイク、山下公園前 写真・矢野信夫

バイクではイギリスのフラン・ブラウンに抜かれ、スイム同様2位で終えたものの、最後は、得意のランで逆転し、トータルタイム1時間17分39秒で見事優勝を果たした。これまでの横浜のコースでは最も速いタイムだった。


得意のランで遅れをとり戻すアリサ・シーリー(PTS2・アメリカ) 写真・山口容子
得意のランで遅れをとり戻すアリサ・シーリー(PTS2・アメリカ) 写真・山口容子

いつものように、フィニッシュ後のミックスゾーンでシーリーを迎えた。

 ーーレースコンディションとして特に水温が低かったのでは?

「レース前日は水温が低いかも?と少し心配だったが、結局ちょうどよかった。レースにもってこいのすばらしい天気だった」と言う。

 ーー2020年の東京パラリンピックに向けては?

「目標は、リオパラリンピックで取った金メダルを守ること。実現するために、日々努力を続けていきます」と語る。

シーリーは最高峰の舞台で金メダルを取ろうとも、連覇を果たそうとも、自分の内面にのみ存在する「スタンダード」に挑み続けている。そこに、彼女が圧倒的な力強さを持つ理由があるといえる。

アリサ・シーリー3連覇の表彰式 2位ヘイリー・ダンズ(アメリカ)、3位フラン・ブラウン(イギリス) 写真・矢野信夫
アリサ・シーリー3連覇の表彰式 2位ヘイリー・ダンズ(アメリカ)、3位フラン・ブラウン(イギリス) 写真・矢野信夫

彼女にはもともと脊髄に先天的な障害があり、怪我の傷と合併症を抱えている。2016年のリオパラリンピック以来、体調を取り戻した上で参加できた最初のレースが昨年の横浜大会だった。

また、今年の大会を、怪我からの復帰という難しい形で迎えていた。
昨年6月から11月にかけて10回の手術をしたという。
「怪我でのブランクが長かっただけに、どんな展開になるか読めなかった」と、レースに向かう前の胸の内を語った。しかし、今年もトップでフィニッシュテープを切ることができた。

岩城光英氏より表彰を受ける、アリサ・シーリー 写真・秋冨哲生
岩城光英氏より表彰を受ける、アリサ・シーリー 写真・秋冨哲生

「昨年は厳しいシーズンで、満足できるものではなかった。長く、厳しい状態が続いたが、チームのすばらしい支えのおかげで以前の自分のようにトレーニングとレースができるようになった。いま、再び、自分がどんなアスリートなのかを示し、自分のスタンダードを取り戻すことができた。本当に嬉しい」と、いつもの自信に満ちた笑みを見せてくれた。

彼女は自分の内面と向き合うことを何よりも重視する。金メダリストとして、新たなプレッシャーの中で迎えた昨年の横浜大会レース後のインタビューでも、その重要性を繰り返し強調していた。シーリーはレース中は常に自分の内面と向き合い、対話している。

ミックス・ゾーンでいつもの笑顔を見せてくれた、アリサ・シーリー 写真・秋冨哲生
ミックス・ゾーンでいつもの笑顔を見せてくれた、アリサ・シーリー 写真・秋冨哲生

そんなシーリーにとって「自分のスタンダード」という言葉には、極めて深い意味が込められているように思われる。今年の横浜大会を振り返り、彼女は自身のブログにはこう綴っている。
「私のスタンダードに照らして、今日はいいレースができた。スタンダードとは、タイムとか順位のことではない。私が世の中の誰とも、チームメートやコーチにすらも伝えていない、自分だけが知るスタンダード。私は、この圧倒的に高いスタンダードに向き合い、挑んだ」と。

これからも、内面を見つめる彼女の走りを見ていきたい。

(編集・佐々木延江)

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