4月6日〜7日、御殿場市馬術・スポーツセンター(静岡県)で、CPEDI*GOTEMBA2018/パラ馬術競技会2018が開催された*。
初日はチームテストが開催され、合計14人馬(グレード1:3人馬、グレード2:3人馬、グレード3:1人馬、グレード4:3人馬、グレード5:4人馬)が参加。長年の経験を持つ選手、そして新規に参戦する期待の選手が入り交じって行われた。
パラ馬術は、参加選手の障害の度合いによって「グレード」と呼ばれる分類によってメダルが競われる。5つのグレードがあり、1が最重度、5が最軽度の障害。
現在、国際馬術連盟のルールのもと行われる競技は、身体障害のある選手のみの参加が可能となっている。
参加資格として、選手は事前にクラシファイアーによるクラス分け(クラシフィケーション)を受け、国際馬術連盟に登録されなければならない。
「テスト」とは経路のこと。パラ馬場馬術では人馬がフィギュアスケートのように、定められた動きや経路を暗記して行う。
経路は常歩(なみあし)、速歩(はやあし)、駈歩(かけあし)の3種の歩様(ほよう)の組み合わせで、各グレードによってどの歩様が含まれるかが決まっている。
この日、CPEDIに先駆け、3人馬が参加する国内競技も開催。この中には国内の乗用馬産地として知られる遠野産の馬で出場した選手も見られた。2020年東京パラリンピックで国産馬が活躍することも夢ではない。
2日目は、パラリンピックでいえば個人メダル競技となる「インディビジュアルテスト(個人規定演技)」と、「フリースタイル(自由演技)」が行われた。 インディビジュアルテストはチームテスト同様、14人馬が参加。音楽にあわせて、定められた項目を含めて選手自らが考案した経路を踏むフリースタイルは1人馬のみの演技となった。
海外より来日した競技スタッフは以下のようにコメント
「選手の皆様の演技を楽しませていただきました。とくに、チームテスト後、ジャッジペーパーをもって審判団のところに、どのようにすればもっといい演技ができるかとアドバイスを求めにくる選手が多かったことに感心しました。
その結果、今日の演技に違いがみられました。2020年(東京パラリンピック)はきっと素晴らしい競技会になるだろうと期待しています」(審判長・Hanneke Gerritsen・オランダ)
「全般的に馬がとても落ち着いていて、選手の指示を待つ姿勢がよくみられました。大会運営も準備が良くできていてよかったと思います」(審判員・Suzanne Cunningham・オーストラリア)
「今回たくさんの選手のクラシフィケーションをしました。すべての選手の演技を見ましたが、皆さんとてもいい演技をしていました」(クラシファイアー・Sharyn Gregory・オーストラリア)
「今回第2回目のパラ馬場馬術スチュワード講習会を開催しましたが、これで13名のスチュワードが誕生しました。知識経験が豊富な方から勉強中の方まで様々ですが、皆様と勉強できたことを嬉しく思いました。昨年初めて日本に来ましたが、そのときの競技に比べて今回はライダーの技術が向上していたので喜ばしく思います」(スチュワード**・Nigel King・香港)
2000年シドニーパラリンピックに日本選手が初出場してから20年を記念する東京パラリンピック。今後も国内外でさらに一歩上を目指して日本代表人馬が活躍し、地元開催にふさわしい選手層が育っていくことを期待したい。
競技結果
日本障がい者乗馬協会(JRAD)サイト内競技結果ページ
*CPEDIとは
CPEDIは国際馬術連盟の国際大会運営基準に則って開催される競技会。種類には1☆から3☆があり、3☆とパラリンピックでは団体競技が行われる。団体競技が開催された場合、チームテストとインディビジュアルテストの2競技のトップ3人馬の合計点数で団体成績が決まる。(2☆以下は開催必須でない)フリースタイルの参加はインディビジュアルテストのスコア次第で決定。
CPEDIに出場するためには人馬ともにFEI国際馬術連盟に事前登録が必要。また、ライダーは公式にクラシフィケーションを受け、認定されたグレードの記載されたカードを所持していなければならない。クラシフィケーションは、国際馬術連盟認定の資格をもった担当者(クラシファイアー)が規定に従い行うもの。これによって障害の度合いが判断され、競技参加するグレード(Iが最重度で、I-5までの5段階ある)が決定する。なお、グレードによりライダーの身体的能力が考慮され、一般の馬術で見られる3種の歩様(常歩、速歩、駆歩)のなかかから適切なものを取り入れた運動課目が定められている。グレードは2017年1月以降の表記方法。内容は変わらないが、それ以前は1a,1b,2,3,4の標記名称が使用されていた。
**スチュワード
馬術競技は唯一、動物とともに行うパラリンピック競技。スチュワードはそのパートナーである馬の福祉と安全を含め、競技規定が守られているかを随時確認しているルールの番人的存在。
”It is the supervision at international events by trained individuals to ensure that the welfare of the horse is respected and that a level playing field is provided for all athletes participating at the event. The purpose of Stewarding is: – To protect the welfare of the horse and ensure fair play; – To support the Organising Committee (OC) in the successful running of the event in line with the FEI rules and regulations.”(FEIスチュワードマニュアルより)
(文:田中綾子 撮影・現場取材:内田和稔/稲継泰朗 編集:佐々木延江)