世界との差を感じる試合になった。3月16日に江陵アイスアリーナで行われた日本対スウェーデン戦、日本は5連敗を喫した。
開始52秒、スウェーデンのFW93番GYLLSTEN Maximilianが先制点をあげる。
「向こうが恐れていた先制点をとりたかったが、逆に点を決められてしまった。イージーゴールをさせてしまうようでは厳しい」と中北浩仁監督は振り返る。
日本にもチャンスがなかったわけではない。第2ピリオドには、DF32番上原大祐のアシストでFW55番高橋和廣がゴール。勢いに乗るが、直後にDF3番INGVARSSON Niklasがゴール。その後もチャンスがあったが活かしきれず、試合は1ー5で終了。パラアイスホッケー日本代表の戦いは8位最下位という結果で幕を下ろした。
試合後に、中北監督は
「これからも強いチーム作りに力を入れていく。ただ4年後、監督としてこの場に立つことはもうないと思う」と監督引退を示唆。無念と悔しさを滲ませた。
以下、ミックスゾーンでの選手コメント抜粋。(ポジション・背番号順)
GK福島忍:(平昌パラリンピックを振り返って)ホッケーをやる人の頂点の戦いなので、それを目指してやってきた。これを機会に若い方に競技を知ってもらい、普及に繋がればと思う。(日本では福島選手のファインセーブに注目が集まったが)GKというポジションはやはり得点を抑えられた瞬間が嬉しい。色々なケースを想定しなくてはいけないので、試合で経験を積むことが大事。若い方にもチャレンジしてもらえれば。(今後については)北京までは難しいかなと思う。今後もなんらかの形では協力したい。
DF熊谷昌治:厳しい世界だった。もちろんこの舞台に立てたことは素晴らしいことだが、結果が残せず悔しい思いの方が強い。今日はどうしても勝ちたかったが、自分のミスもあって悔やまれる。
DF須藤悟:(日本チームに必要なことは)リフレッシュ。アメリカとカナダを改めて見るとチームのスキルが高く、個々のパフォーマンスもずば抜けている。あのレベルに追いつくまでには時間が必要。それができる選手となると、若いフレッシュな人間を連れてこないと世界では戦えないと感じた。
(新しい人を入れるためには)今大会は数年前よりメディアに取り上げていただき、沢山の方に見ていただいた。アイスホッケーという競技は人を惹きつける力があると思う。ぜひやってみたいと思う方が出てきてくれることを願っている。そういった選手をどう育成していくかが今後大事になってくる。もう一度日本チームを再建していきたい。
DF三澤英司:(バンクーバー大会以降の)この8年間でアメリカ・カナダはもちろん、それ以外の国も底上げされていると感じた。(世界に追いつくためには)私達の世代というより今の20代ー30代の選手の強化、加えて長年の課題である若手の発掘にも力を入れていかなくてはいけない。私が経験で伝えられるのは、日本代表という誇り。若手選手には普段から日本代表だという自覚を持って過ごしてほしいと伝えたい。
(旭川での応援は)本当に感謝している。毎試合毎試合リンクに立てることを感謝しながら戦ってきた。旭川の皆さんに恩返しがしたかった。
DF上原大祐:世界はどんどんステップアップしているが、日本は足踏みしているという状況。競技環境を見ても、アメリカ・カナダはテニスコート並みにリンクがある状況で、健常者も障害者もみんなが一緒にアイスホッケーができる。そうやって一緒にプレーできることが、チームを手伝いたいと思える一つの要素だと思う。選手、協会、周りの人、日本はすべての人の意識が変わらないと始まらないなと思う。
FW高橋和廣:(上原選手のアシストで得点を決めたが)上原選手とはいつもやっているので上手くいって良かった。チームメイトを信じて走った。
(ここまで戦ってきて)チェコ戦が一番辛かった。もう少し盛り上げていければよかった。パラリンピックは最高の環境なので、いかに楽しんで試合に臨めるかも大事だったと思う。世界の選手を見てそういった点も学んだ。
(一勝もできなかったことについて)素直に実力だと思う。世界と日本にはホッケーの感覚に差がある。スウェーデンはホッケーを知っている。もう走り勝つだけでは通用しないと感じる。せっかく隣国に韓国という強豪国があるので、切磋琢磨しながらレベルを上げていきたい。
FW児玉直:得点を取りたい気持ちが出過ぎてカウンターを受けてしまい、苦い試合になった。チャンスも何本かあったが、仕掛けるべき点でしっかりと点を決めたスウェーデンに軍配が上がったという形。
(世界と戦って)決して勝てない相手ではなかったと思う。積み上げてきたものを使えたかそうでないかという差。一本のミスが勝負を決めてしまうこともある。その点はまだまだ気持ちが足りていなかったと反省している。
FW南雲啓佑:世界の勢いを感じた。パラリンピックには魔物が棲んでいるというが、そのように感じた。自身はわずかな出場機会であったが、アメリカのスピードに驚いた。 パラリンピックで感じたことを日本でのプレーで活かしていきたい。
中北浩仁監督:実力の差、それに尽きます。個人的には監督として今後あの場に立つことはもうないと感じていたので、残念な気持ちはある。ただ、これから強いチームを作ろうと沸々を気持ちが湧いてきている。8位という結果に奮い立たせてもらったという気持ち。
(選手について)は平昌に連れてきてくれたことをとても感謝している。勝たせてやれなかったのは私の責任。
(今後について)次に繋げることが最大のミッション。ジュニア層強化をしていきたい。簡単なことではないが施設の少なさや深夜練習の問題など、国とも協議して進めていきたい。この競技を次に繋げるため、2022年に向けてすぐに強いチーム作りを始める。約束します。
(校正・佐々木延江)