パラリンピック初出場の日本選手団最年少・川除大輝(17)の平昌での初レースとなった「クロスカントリースキー男子20kmフリー立位(立って滑る部門)」は、入賞に一歩届かず、9位となった。
クロスカントリースキー男子20kmフリーは、約5kmのコースを4周し、実走タイムに障がいの程度に応じた係数を掛けた計算タイムで勝敗を決定する。
生まれつき両手の指先が欠損している川除選手は、LW5/7(両上肢に障害を持つ選手)のクラス。滑走する際にバランスを保持したり加速したりするために用いられるストック(スキーの杖)を使用せず、腕を大きく振って加速していくのが川除の走りの特徴だ。
ストックを持たない選手が苦手とするのが、雪が溶け出したザクザクした雪。どうしても足が取られてしまいがちになるのだが、体重が軽く、ザクザクの雪でも足が埋もれない川除にとっては好条件。6.6度という比較的暖かいコンディションの中、好きな雪質でのレース展開が期待されたのだが、思った以上には雪は溶けていなかった。
「前半はちょっと慌ててしまって。最初すごく雪がカリカリで、カリカリの雪が苦手だったので、そういう部分で最初ちょっとスピードに乗れなかった。後半は自分のいい感じに(雪が)緩んで来て、足も取られずに落ち着いて滑られたかなと思います。」と、川除はレースを振り返った。
雪質には恵まれなかったものの、最後まで力強い滑りを見せた川除。クロスカントリースキーの荒井秀樹監督は、「今日は非常に果敢に攻めてくれたと思います。このLW5/7のクラスでもなかなか勝てなかった選手にもしっかりとリードしてくれますし、何よりも10位以内に入ってくれた」と讃えた。
この日は、川除選手のパラリンピック初レースを応援しようと、富山からご家族など多くの応援団が駆けつけた。「ドキドキして見ていました」と話す川除選手の祖母も、「感激です。よく頑張ったなって。大変だっただろうなって。」と、孫の大舞台での走りに声を弾ませた。(ご家族が現地入りした際のインタビュー動画はこちら→ https://youtu.be/x-NG7jK23Nc)
レース前、家族に「いつものように頑張る」と話していた川除だったが、「ワールドカップとは全然雰囲気が違ったので、緊張しました」とレース後。国際大会出場経験はあるものの、パラリンピックという舞台でこれまでとは違い空気を感じたようだ。
日本代表選手団・団長の大日方邦子氏は、若手の選手に大舞台での経験を出入る限り積んでいってほしいと話す。「若い選手には、『自分の力ではまだ通用しないんだ、でもパラリンピックは楽しいんだ!』という経験をしてほしい。自分自身もそうだった。1994年(リレハンメル)の経験があって、戻ってきたいと思っての1998年(長野)だった。いつもはガラーンとしていて関係者の声だけが響いているが、こうして大勢の観客見てもらい、インタビューも受ける。『華やかなセレモニーや他の選手のトレーニングの様子も見てきなさい』と伝えている。見ることで、『次は自分が』と思って欲しい」
川除選手は、14日(水)のクロスカントリースキーのスプリントクラシカル立位、17日(土)のクロスカントリースキーのクラシカル男子10km立位にも出場予定だ。本命は男子10km立位。
「何れ(のレース)にしても、おもしろいレースが期待できるかなと思います。大輝選手にはLW5/7の選手の中でトップの地位を築いていってもらいたいと思っています。そういう意味で、今回の戦いは彼にとって重要で、次の北京に向けていい結果を出してくれると思います」と荒井監督は期待を込めた。
(校正・佐々木延江)